VOL.30:対決-小競り合い-
「治安対策チーム? それは本気で言ってるのか?」
峻佑たちの希望を聞いた一条は、驚いた顔をしてたずねた。
「ええ、本気です。先日、試験問題を盗み出して生徒会や学校側を混乱に陥れて楽しんでいた、神楽っていう先輩を見て決意しました。オレは平和な高校生活を邪魔されたくないですから」
峻佑はグッと拳を握りしめて理由を話した。
「そこまで言うならもう止めないよ。じゃあ、治安対策チームのトップは副会長の仙堂だから、今後は彼女に従ってくれ」
一条は笑みを見せて峻佑たちに言った。
「わかりました」
3人は頷き、雲雀のほうを向いた。
「じゃあ、今後の対策を話しましょうか」
雲雀は3人を呼んで作戦を立て始めた。
その頃、校内某所――
「おい、神楽。生徒会側が仲間を増やしたようだぞ。しかも1年生で最も有名なあの3人だ」
その声に神楽は眉をピクリと反応させると、
「それは本当か、観月?」
情報をもたらした男――観月 涼にたずねた。
「ああ、本当だ。おれが今まで一度でも間違った情報を持ってきたことがあったか?」
観月は不敵な笑みを浮かべて神楽に言った。
「そうだな。我々‘アンチ生徒会’にとっての情報屋だからな、お前は。頼りにしてるぜ」
神楽もまたニヤリと笑って観月に言った。
「で、どうすんだ? 仲間を得たことによって、最近おれたちに連戦連敗していた生徒会の治安対策チームが活性化しちまうんじゃないか? そうなったらこのアジトもヤバいかもしれないな。なんせ噂じゃ真野姉妹は……いや、なんでもない。まだ裏が取れてない情報を話しても意味がないな」
観月が心配そうにボヤき、何かを言いかけてやめた、そのとき。
「そんな心配したり、ましてや未確認の情報を話そうとするなんてお前らしくないぜ、涼」
そこに第3の男が現れた。
「岩本か。まあ、ひとまず様子見だ。新しく加わった1年生3人の実力も未知数だしな。さすがに中間試験が終わったばかりだから、当面はこちらも動く理由がない。アジトはガサ入れとかでヤバそうなら放棄する。だが、少し連中の動きを追う必要がありそうだな」
神楽はそう言うと、観月と岩本を連れてアジトを出た。
「とりあえず、神楽たちは当分は何もしないだろうけど、かといって放置するわけにもいかない。校内のどこかにあいつらのアジトがあるはずだから、それを捜索して、潰す。明日から捜査開始よ」
雲雀は峻佑たちにそう告げた。と、生徒会室の扉を誰かがノックした。
「――誰!?」
雲雀たち以外の生徒会役員もそれぞれの会議をしているので、まだ生徒会室内には役員全員が揃っている。仮に教師であればノックのあとすぐに入ってくるはずなので、ノックだけして入ってこないということは一般生徒ということになる。雲雀がとりあえずドアを開くと、
「よう、仙堂。新しい役員が入ったらしいな。しかも我々と直接敵対する治安対策チームに――」
そこにいたのは、雲雀たちが捕まえるべき相手、‘アンチ生徒会’の主力メンバー3人だった。
「神楽、観月、岩本……さすがに情報が早いわね。で、なに? まさかと思うけど、改心して自首でもしに来たの?」
雲雀が一応たずねてみた。
「ふはははは、俺らがそんなことするような人間に見えるか? 今日はその新役員とやらにご挨拶に来たまでよ」
神楽は高らかに笑いながら雲雀の言葉を否定した。
「そうよね、そんなことあるわけないわよね。まあ、正直全く期待してなかったから落胆はないわ。でも、私らは今ここであんたらを捕まえることもできるのよ? 敵の本拠地に乗り込んでくるなんて、ちょっと不用心すぎないかしら?」
雲雀はそう言いながら、制服のポケットから手錠3つを取り出し、神楽たちにかけようとした。だが――
「ふん、遅いな」
神楽のほうが早かった。もともと警戒していたのだろう、神楽は着崩した制服から短めのロープを数本取り出すと、神業的な速さで雲雀の手足を縛り上げてしまった。
「きゃあっ! う、動けない〜」
雲雀はそのまま床に転がされ、身動きが取れなくなってしまった。
「副会長!」
「仙堂先輩!」
すぐに峻佑たちが駆け寄り、ちひろとみちるで雲雀のロープを解いた。
「あなたが神楽先輩ですね? 覚悟してください、オレたちは近いうちに必ず‘アンチ生徒会’を潰しに行きますから」
そして峻佑は神楽たちに指を突きつけて宣戦布告した。
「ふん、なかなか面白いことを言ってくれる1年生じゃないか。仙堂、そしてそこの1年生たちよ、今日はこれで引き上げるが、我々を捕まえられるものなら捕まえてみるがいい。また会おう、さらばだ!」
神楽はそう言いながら、制服の懐に手を入れ、煙幕弾を取り出した。
「あっ、待ちなさい!」
自由になった雲雀と手が空いた姉妹の3人で彼らを取り押さえようとしたが、一瞬早く煙幕弾が破裂し、姿をくらましてしまった。
「ちっ、逃げられたか……まあいいわ、必ずアジトを見つけてとっ捕まえてやるんだから」
雲雀が舌打ちしながら言い、それを見て峻佑たちも、‘アンチ生徒会’との対決に静かに闘志を燃やすのだった。
神楽率いる‘アンチ生徒会’と雲雀率いる生徒会治安対策チームの戦いの火蓋は切って落とされた。
果たして峻佑たちは神楽たちの企みを阻止し、学校の治安を守れるのか?
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