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VOL.03:入学式終了後、HRにて

 校長の退屈な話だけの入学式も終わり、それぞれの教室に戻る途中。

「おーい、峻佑!」

 誰かが峻佑を呼んだが、その声に聞き覚えのある峻佑はうんざりした感じで振り返った。

「なんだ、コータロー?」

 峻佑が面倒くさそうな表情を隠そうともせずに問い返すと、

「なんだ、はないだろ? 俺達、親友じゃないか」

 コータローと呼ばれた男は峻佑の首に腕を回しながら言った。

 彼の名は沢田(さわだ) 耕太郎(こうたろう)。峻佑と同じ中学から進学した、(一応)峻佑の親友である。

「まあ、親友ってところは否定しないでおこう。で、コータロー、何の用だ? つーかお前何組だっけ?」

 峻佑が首に回された腕を振りほどきながらたずねる。

「おいおい、今朝同じ4組にいたのに気づかなかったのか? まあ、そんなことを言いに来たんじゃなくて、お前今朝4組の教室入ってくるなり女の子を指差して大声あげた上に、その子と知り合いみたいに話してたけど、あれ誰だよ?」

 耕太郎はひとしきりヘコんだ後、わずかに殺気立って峻佑に問いかけた。

「ああ、ちひろちゃんのことか。彼女はオレの幼なじみだ。10年以上前に引っ越しちゃって以来会ってなかったが、今日ここで再会したわけだ」

 峻佑はありのままを耕太郎に話した。すると、いつの間にか他の男子連中も峻佑と耕太郎の話に耳を傾けていた。

「あ、峻佑くんだ。峻佑くん、朝の約束忘れないでねっ!」

 ちょうどそのとき、耕太郎と話し込んで立ち止まっていた峻佑に後ろのほうを歩いていたちひろが追いつき、追い越しざまに峻佑に用件を伝えると教室のほうへ歩いていった。

「あ、ああ……もちろんわかってるぜ」

 峻佑は軽く手を挙げて応えた。と、肩を後ろから掴まれた。

「峻佑ぇ、“朝の約束”ってなんだ? 詳しく説明しないと俺はともかく他のヤツらが納得しなさそうだぜ?」

 耕太郎が後ろを指し示すと、耕太郎以上に殺気立った男どもが峻佑をにらんでいた。

「別に大したことじゃねーよ。10年ぶりに再会した幼なじみとのんびり話がしたいだけだ」

 峻佑は別に隠す必要もないが、照れくさいのでぶっきらぼうにそう話した。

「ほらほら、ホームルーム始めるぞ。さっさと教室入れー」

 ちょうどそこに4組の担任がやってきて、廊下で話し込んでいた峻佑たちを追い立てた。



「今日のホームルームでやるべきことは特にない。解散してもいいが、せっかくだし自己紹介でもしてもらうか」

 峻佑たちの担任、脇野(わきの)がそう言って、それぞれの自己紹介が始まった。

「市原峻佑、竹崎西中出身です。よろしく」

 峻佑がまず出席番号で最初なので自己紹介を済ませた。

「沢田耕太郎、竹崎西中出身。現在恋人募集中、よろしくっ!」

 少し進んで耕太郎の順番になり、こんな自己紹介をしてクラスの失笑を買っていた。

「真野ちひろと言います。松海(まつみ)市の松海学園(まつみがくえん)出身で、高校入学と同時に小さい頃住んでいたこの竹崎市に帰ってきました。あと、隣の5組に双子の妹、みちるがいます。よろしくねっ!」

 さらに自己紹介は進み、ちひろの番が来ると、ちひろはそんな自己紹介をした。


「よーし、これでひととおり終わったな。じゃあ一応私もしておこうか。私の名は脇野 亮一郎(りょういちろう)。この学校に来て、というか教員になってまだ2年目でな、担任としてクラスを受け持つのは初めてなんだ。だから何かとみんなには苦労をかけるかもしれんが、1年間よろしく頼むな」

 脇野は最後に自分の自己紹介を済ませ、「それじゃ今日はここまでだ。解散っ」と言い、教室から出ていった。

「それじゃ、峻佑くん。朝の約束、例の場所でね。みちるを呼んでから行くから先に行って待ってて」

 ちひろは峻佑に耳打ちすると、先に教室を出ていった。

「峻佑ー、どこへ行くんだ?」

 そそくさと教室を出ていこうとした峻佑を耕太郎が目ざとく見つけ、行き先をたずねた。

「別にどこだっていいだろ。10年ぶりの幼なじみとの再会を邪魔しないでくれ」

 峻佑は耕太郎を冷たくあしらうと、カバンを持って教室を出ていった。

「あんなかわいい女の子を幼なじみってだけで峻佑に持ってかれるのは納得いかん。追いかけるぞ」

 耕太郎は教室に残っていた数人の男子に声をかけ、

「ああ、真野さん姉妹はこのクラスの、いやこの学年のマドンナだ。幼なじみとはいえアイツに独占する権利などない!」

 耕太郎を先頭にしたクラスの男子たちはそんな叫びとともに峻佑を追って教室を飛び出したのだった。

いつの間にか“学年のマドンナ”と呼ばれているちひろとみちる。

そんな彼女たちと仲のいい峻佑に危機が迫る!?


今週も、読んでいただきありがとうございました。

また来週、お会いしましょう。

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