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VOL.25:来訪者-Part3-

「じゃあ、あとは峻佑くんの部屋だけだね」

 と言いながらみちるは峻佑の部屋のドアを開きかけ――

「って、部屋の主が後ろにいるのに私たちが先に入るのもおかしいか」

 ドアノブに手をかけた状態で手を止めて峻佑に道を譲った。

「今さらそんなこと気にしなくてもいいんだけどな……まあいいや」

 峻佑はボソッとつぶやくと、ドアを開けて部屋になだれ込んだ。

「いない、ね……」

 部屋をぐるっと見渡してちひろがつぶやく。

「隠れてるんだろ。でもって、この部屋に隠れるなら、ここしかないな。あ、2人は部屋の入り口を固めといて。飛び出してくるかもしれないから」

 峻佑はちひろたちに部屋の入り口に移動してもらうと、クローゼットの扉を開き、さらにその奥に自作した隠し扉を勢いよくスライドさせて開いた。

「くそっ、見つかったか! でも、捕まってたまるかぁ!」

 その瞬間、琢磨が勢い良く飛び出し、峻佑を突き飛ばすと、部屋から逃げだそうとした。

「あっ、しまった! ちひろ、みちる!」

 しかし、峻佑はこういう事態を予測し、そのためにちひろとみちるを部屋の出入り口に移動させておいたのだ。琢磨は必死の抵抗もむなしくちひろたちに捕らえられ、英里のもとへ連行されたのだった。


「英里叔母さん、琢磨くんを捕まえましたよ」

 再び脱走することを防ぐため、以前使った魔力封じの虫取り網を頭に被せ、ロープで腕を縛りあげた状態でちひろは琢磨を英里に引き渡した。

「3人とも、ありがとね。さて、琢磨。ちひろちゃんたちに会いたいなんて理由つけても、受験勉強がイヤで逃げ出したっていう本当の理由はごまかせないわ。さ、帰るわよ」

 英里がそこまで言ったところで、‘ピリリリ’と英里の携帯が鳴った。

「はい、榊。え、あ、はい。わかった。すぐに現場に向かうわ」

 英里は電話の相手に向かって二言、三言話すと、電話を切った。

「ごめんなさい、急に現場からの応援要請がかかっちゃって行かなくちゃならなくなったの。ちひろちゃん、峻佑くん、悪いんだけど、今夜一晩琢磨の面倒を見てくれないかしら? 明日は土曜だし、明日の夕方までには迎えに来るから」

 英里はちひろや峻佑にそう頼むと、答えも聞かずに市原家を飛び出していった。

「なあ、ちひろ? あの人って何の仕事してるんだ?」

 あまりの慌ただしさに唖然あぜんとしつつも峻佑がちひろにたずねた。

「警察官よ。たしか階級は警部だったかしら。警察内部の極秘扱いだけど、もう周囲に魔法のことを話して、犯人逮捕に役立てているそうよ」

 ちひろはあっさりと答えた。

「ふーん、警察か……」

 峻佑はつぶやきながらあれこれ考えていた。と、

「なー、オイラはいつまでこうしてりゃあいいんだー?」

 虫取り網を被せられ、ロープで縛られたままの琢磨がふてくされている。

「ごめんごめん、忘れてたよ」

 みちるが虫取り網を外し、ロープを解く。

「母さん行っちまったし、ちー姉、みー姉、それとあんちゃん、一晩よろしく。……ホントはこのまま帰りたくないけど」

 琢磨はニコッと笑って峻佑たちに言った。

「とりあえず一晩は預かることになったわけだし、夕飯にしよっか。さっきの追いかけっこですっかりお腹減っちゃったし」

 笑いながらちひろは言って、みちるとともに台所へ入った。

「なあ、琢磨くん。いくつか聞いてもいいかな?」

 峻佑は琢磨と2人きりになったところでそう切りだした。

「なに? オイラに答えられることだったら何でもいいよ」

 琢磨は頷いて話の続きを待った。

「まず1つ目は、琢磨くんの志望校。どこの高校を受けるつもりなの?」

 峻佑がまず1つたずねると、

「それはもちろんちー姉たちのいる竹崎高校だよ」

 琢磨は事も無げに答えた。

「なるほどね。じゃあ2つ目、今の質問と関連するけど、竹崎ウチの高校は公立にしてはかなりの進学校で、レベルも高い。そこに受かるだけの学力の自信はある? もちろん、魔法によるズルはなしで」

 峻佑が次の質問に移り、現在自らが通う高校の現実を伝えると、

「うっ……オイラ、数学が苦手なんだ。他の科目はズルなしで十分な成績を取れてるけど、数学だけは少しズルしてる。ズルなしだときついかも」

 琢磨は急に意気消沈したかのようにうなだれた。

「そっか。じゃあ、次で最後だ。琢磨くんはもしかしてちひろかみちる、どっちかが好きなんじゃないか? もちろん、親戚いとこの姉さんとしてではなく、1人の女性として、な。どうなんだ?」

 峻佑が最後の質問をした瞬間、

「え!? そそそそんなことはないよ?」

 琢磨はものすごい動揺を見せた。

「やっぱりか。安心しろ、オレはそういうことを安易にバラしたりはしない。いまそれを聞いたのは、2人のことが好きなら、今後、週末とかだけでもうちに来て、ちひろやみちるに勉強を見てもらうとかすればいいと思ったんだけどな」

 峻佑が質問の真意を話したところで、

「お待たせー。今日の夕飯はハンバーグにしたよ」

 ちひろとみちるが4人ぶんのハンバーグを持ってきた。


「なんかさっきから2人でずっと話してたけど、何だったの?」

 4人で夕飯を食べながら、みちるが峻佑たちにたずねた。

「ん? あ、ちひろ、みちる、2人は数学得意だったよね? 琢磨くんは竹崎ウチの高校を受けるつもりみたいだから、主に週末とかに勉強を見てあげようと思うんだけど、いいかな?」

 峻佑が琢磨と話していた内容の一部をちひろたちに話した。

「うん、それはいいよ。でも、そのかわりに、平日はきちんと英里叔母さんが言ってた塾に行くこと。それが条件だよ」

 ちひろは快諾した上で、琢磨に条件をつけた。

「わかった。オイラ、頑張るよ」

 琢磨は嬉しそうに頷き、早速少しではあるがちひろたちに勉強を教えてもらうのだった。



 翌日、迎えに来た英里に対し、

「琢磨くんはもう逃げたりはしないって約束してくれましたので、お仕置きは軽めにしてあげてくださいね」

 3人は軽く頭を下げて頼んだ。

「ええ、ちひろちゃんやみちるちゃんがそこまで言うのであれば大丈夫ね。それに、私も昨日の事件で疲れてお仕置きとかできる状況じゃないし」

 英里はわずかに笑顔を見せてそう言うと、琢磨を引き取って帰っていった。

今週はもう1話ぶん更新します。

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