VOL.20:体育祭Part4 -お昼休み&騎馬戦&綱引き?-
『体育祭実行委員より今年のマル秘種目についてお知らせします。今年は、紅白両軍各5名ずつの代表選手によるガチバトル、種目名“決戦”を開催することにします。なお、代表選手は実行委員側の引いたくじにより決定されました。辞退等はできませんのであしからず』
体育祭実行委員は今年のマル秘種目を告げたのち、それを闘う代表選手を読み上げていった。まず紅組代表として1年4組市原峻佑、同じく1年4組沢田耕太郎、同じく1年4組真野ちひろ、2年1組仙堂雲雀、3年3組一条流星の5名が選出され、一方の白組代表はというと、1年5組真野みちる、同じく1年5組川原陽一、1年6組種村健介、同じく1年6組猿義半助、3年7組西園寺なつきの5名が選出されていた。
『以上が体育祭実行委員からのマル秘種目に関するお知らせでした。各選手の午後の競技の健闘を祈ります』
実行委員はそれだけ言うと、放送を終わらせた。
「なんかずいぶん1年生に偏った代表編成だな……しかも偶然にしては全員知り合いってできすぎだろ」
峻佑は昼飯を食べながら、一緒に机を囲むちひろや耕太郎、そして晴香に話しかけた。
「そうだね……しかも白組の代表選手には西園寺先輩やこないだあたしを襲ってきた猿義ってのもいるみたいだし、かなり派手な戦いになるかもしれないわね」
ちひろは白組の代表として読み上げられたメンバーをメモし、渋い顔をしていた。
「そうだな、まず種村は借り物競争でオレに負けたリベンジをしに来るだろうからオレとガチで当たるだろうし、川原はMMM対決で耕太郎と当たるだろう。みちると猿義はそれぞれ理由こそ異なるがちひろを攻めて来る可能性が高いな。西園寺先輩は誰に行くかわからないが、こっちにも先輩が2名選出されてるからそちらに任せることにしよう。その上で1対2で闘うことになる可能性が高いちひろを誰が助けに行くか……」
峻佑が両軍のメンバーを対比させながら予想をつけていると、
「あたしなら大丈夫よ。みちるの対策はすぐ練れるし、猿義に関してもあたしが負ける要素はないわ」
ちひろは自信たっぷりに言い放った後、
(おそらく最後の特別種目だし、あの子、朝から結構自信満々な節があったから、きっと何らかの魔法を使って立ち向かってくると思うわ。でも、あたしだって負けやしない。対みちる用の最終兵器って言うとちょっと大げさだけど、対象の魔法を封じる魔法――前に魔法書を捕まえに行ったときに使った魔法をみちるにかければ、みちるは無力化できると思うの)
ちひろは峻佑に早口で耳打ちした。
「なんだよ、また2人だけの内緒話か? 一応俺だってともに闘う仲間なんだからよ、教えてくれよ」
耕太郎が呆れたような声をあげる。
「ゴメン、沢田くん。これは種目とは関係なくて、あたしと峻佑くん、そしてみちるに関する重大なことだから……」
ちひろは耕太郎にそう話して謝った。
「そっか、わかった。さて、とにかく対策を立てないとな」
耕太郎は意外とあっさり引き下がり、再び話しあいに入って昼休みは過ぎていった。
『さあ、午後の競技の開幕です。まずは男子騎馬戦から。男たちの熱き戦い、始まります!』
再びグラウンドに出た峻佑たちは、すぐに騎馬戦なので集合場所へ向かった。
「峻佑、俺はMMMのリーダーとしてちひろさんと仲のいいお前が許せん。だが、今日だけは休戦だ。白組をぶっ潰すため、俺はお前とともに闘うぜ」
集合し、騎馬を作るグループに分かれたところで、耕太郎が峻佑に話しかけた。
「ああ、どうせならこのままMMMを解散しちまうってのはどうだ? 一応オレの親友だし、クラスも同じだからちひろと話す機会も他の連中より多いはず。それなのにわざわざ嫌われるようなことをする必要もないだろう?」
峻佑は頷きつつ、やっかいなMMMを壊滅させるべく耕太郎に揺さぶりをかけてみた。
「ああ、実際に俺自身そう思い始めていた。だけど、まだ俺はリーダーだ。あいつらを裏切るようなことはできない。まあ、近いうちにリーダーの座を川原にでも明け渡して俺は脱退するつもりだ」
耕太郎は静かに峻佑に告げ、他の騎馬役の仲間とともに峻佑を担ぎ上げた。
「行くぞ、峻佑!」
「おう、耕太郎!」
乾いたピストルの音とともに両軍の騎馬が激突した。
結果として、峻佑たちは川原が騎手を務める騎馬や猿義の騎馬と激突し、これらを撃破していった。しかし、猿義を倒したあと敵勢力の中央で孤立してしまい、やられてしまったのだった。
『騎馬戦終了、白組の勝利でした』
撃墜された峻佑たちは見ていることしかできなかったが、最終的にはどうやら白組が勝利したらしい。
『続いて、綱引きを行います。全女子生徒はグラウンド中央へ集合してください』
「お姉ちゃん」
グラウンドに出ようとしたちひろをみちるが呼び止めた。
「なに、みちる? また宣戦布告?」
ちひろがあえて振り向かずにたずねる。
「お姉ちゃん、午前中の障害物のときに魔法使ったでしょ? わかってるんだから。それで、私が言いたいのは、そっちがそのつもりならこっちにも考えがあるわ」
みちるは小声でちひろをとがめた。
「あくまであれは必要最小限よ。だからバレない程度にやりなさい。あたしは止めないわよ」
ちひろも小声で返すと、手をひらひら振りながらグラウンドに出ていき、みちるもその後を追いかけて行くのだった。
『綱引きは3戦中2本先取で勝利となります。レディ、ゴー!』
実況の声とともにピストルが鳴り響き、綱引きが始まったかと思ったが、一瞬にして終わった。
『な、なんということでしょう……綱が切れてしまいました。そのアクシデントのため、綱引きは中止となります』
実況も驚きを隠せない声色で状況を告げる。
(みちる、やっぱりあんた魔法で腕を強化してたわね。予測してあたしにもかけといてよかったわ)
ちひろがテレパシーでみちるに話しかけると、
(やっぱお姉ちゃんには読まれてたか。でも、二人でやったら綱が切れちゃったね。どうしようか?)
みちるは半笑いのような声で返してきた。
(あたしたちがやったっていう証拠はないんだから、きっと綱の老朽化とかで片付けるでしょうよ。放っておけばいいわ)
ちひろは平然と言ってのけた。
(そっか。そうだよね。まあ、とりあえず決着は最後の“決戦”でつけようか)
みちるは姉妹の決着にこだわり続け、最後にそう告げてテレパシーでの通信を切った。
『では、最終種目となる両軍代表5名による“決戦”に参りましょう。代表選手はグラウンド中央へ出てきてください』
次回、体育祭編ファイナル!
VOL.21:体育祭Part5 -最後の闘い-(仮)お楽しみに!
感想や評価、ご指摘やご要望など、何かありましたら気軽に書き込んでください。要望の類はできる限り取り入れるようにいたします。