表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/58

VOL.17:体育祭Part1 -100m走&借り物競争-



いよいよ体育祭編開幕!

ここから5回に渡って体育祭編は続いていきます。

 変な転校生、猿義との屋上での戦い、そして矢文による宣戦布告から数日が過ぎ、体育祭の日を迎えていた。

「宣誓! 我々選手一同は、スポーツマンシップに乗っ取り、正々堂々と戦い抜くことを誓う!」

 おなじみの選手宣誓を生徒会長の一条が済ませ、準備運動ののち、開会式は終わった。各クラスが陣地に戻る中、峻佑たちのところにみちるがやってきて、

「お姉ちゃん、ちょっと話があるんだけど、いい?」

 まじめな顔をしてちひろに話しかけた。

「どうしたの? 今日は敵同士だからね、相手が実の妹でも容赦はしないわよ」

 ちひろは早々とみちるに宣戦布告をしていた。

「まあ、そうなんだけど、あのね、今日はお互い魔法は使わないで正々堂々と戦おうねってことを言いにきたの。それだけだから、またね。私だってお姉ちゃんには負けないんだから!」

 みちるはちひろに耳打ちすると、自分のクラスの陣地に走っていった。

「ふふっ、あたしだって最初からこんな場面で魔法を使ってまで勝とうなんて思ってないわよ。……本当に必要にならない限りはね」

 ちひろは誰にも聞こえない程度の声でつぶやいた。


『午前中の競技を始めるぜぇ! 男女100メートル走に出場する連中は、グランド隅の入場門へ集まれやオラァーっ!』

 体育祭の放送と言えば放送委員の数少ない見せ場。なぜか気合いの入った放送で選手の呼び出しをしていた。

「なんだ、今のムダな雄叫びは……? まあ、とりあえず100メートル走は耕太郎とちひろだな。頼んだぜ」

 峻佑は放送に静かにツッコミを入れ、代表の2人を送り出した。

「おう、任せとけ!」

「ま、なんとかなるでしょ!」

 2人はそれぞれのリアクションとともに入場門へと向かった。


 全てのレースは3年生から順に行われていくことになっていた。

『レースの模様はめんどいからカットし、結果を伝えるぜぇ! 用意はいいか貴様らぁ! 3年生第1レース、紅組の勝利。第2レース、紅組。第3レース、紅組。第4レース、白組。紅組の3勝1敗だぜ! ああ、言い忘れてたが第1と第2レースは男子、第3と第4レースは女子のレースだぜぇ!

 続いて2年生の結果を伝えるぞ! 第1レース、白組。第2レース、紅組。第3レース、白組。第4レース、白組。白組の3勝1敗だぜ!

 続いて、1年生のレースを楽しんどけオラァ! はっ、何をする! 離せコラァ!』

 やはりムダにテンションの高い放送委員がレースの結果を叫ぶように伝えていた。が、ついに他の委員によって取り押さえられたらしい。

『えー、お聞き苦しい放送をしてしまい、大変申し訳ありませんでした。それでは、気を取り直して1年生の100メートル走に参りましょう』

 別の放送委員に交代したらしく落ち着いた声で謝罪放送が入ると、レースが再開された。

「さってと、ようやく出番か。紅組の勝利に貢献してくるかな」

 耕太郎は手足を軽く動かしながらつぶやく。

「ふっふっふ……沢田、どうやらお前の相手はこのおれのようだな」

 耕太郎のレースの相手に白組からは5組の川原が出てきていた。

「MMMのリーダーと副リーダーとの激突か、面白い、勝負だ川原!」

 耕太郎は川原に指を突きつけて宣戦布告をした。

「1年生第1レース、位置について、ヨーイ……スタート!」

 景気のいい空砲の音とともに耕太郎たちは走り出した。

『ゴール! 紅組、白組1人ずつがほぼ同時にゴールテープを切りましたが……あっ、いまビデオ判定により、勝者は紅! 紅組が第1レースを制しました!』

 いきなりの好レースに興奮気味の放送委員が結果を伝え、紅組の陣地では大盛り上がりだった。

『第2レース……は都合によりカットされました。白組の勝利です。続いて第3レースも都合によりカット、紅組の勝利です。続く第4レースは、なんと双子の姉妹の対決が実現しました! 紅組からは4組所属、姉のちひろ。対する白組は5組所属、妹のみちる。いまここに1年生のアイドル的な2人の直接対決が始まります!』

 放送委員も興奮を隠さずにハイテンションで実況を入れている。

「まさか、みちるも100メートル走に出てて、しかも同じレースでの対決なんてね。ま、正々堂々とやりましょう」

 ちひろは隣に並ぶみちるに笑顔で話しかけた。

「それは私だって同じだよ。こんなところでお姉ちゃんと対決だなんて……でも、負けないよっ!」

 みちるも顔は笑っているが、目が本気マジだった。

「1年生第4レース、位置について、ヨーイ……スタート!」

 例によってスタートの合図となる空砲が鳴り響き、姉妹対決が始まった。

『おっと、真野姉妹が速い! ぐんぐん他の選手を引き離し、いまゴール! しかし、これはまたも同着なのか? 判定は……紅! 微妙な判定ながら、またも紅の勝利です。これで1年生の100メートル走の全てのレースが終わり、紅組の3勝1敗となります』

 放送委員はまだ興奮覚めやらぬ口調で実況を入れると、

『続いての競技は、借り物競争です。出場する生徒は入場門へ集合してください』

 続く競技の呼び出しをかけた。

「借り物競争はオレの出番だな。まあ、この種目だけは運任せだからなぁ……ともかく、頑張ってくるな」

 峻佑はボヤくと、入場門へと駆けていった。


「2・3年生のレースはやはり省略とし、結果は紅白両軍1勝ずつでした。続いて1年生のレースに参ります」

 実況担当の放送委員が話し、峻佑たちの番になった。

「市原峻佑、お前だけには勝たせんぞ!」

 峻佑は第2レースを走る。第1レースの開始直前、峻佑は隣にいた白組の男に話しかけられた。

「何をそんなに熱くなってるのか知らんが、落ち着けって。つーかお前誰だよ?」

 峻佑は冷静に返した。

「“お前は誰だ?”だと!? 俺は1年6組、MMM所属、種村たねむら 健介けんすけだ! 我らのマドンナ、真野姉妹を貴様なんぞに取られるわけにはいかんからな、せいぜいこの体育祭で無様な姿を見せて真野姉妹をがっかりさせるがいい!」

 種村と名乗った男は、峻佑に指を突きつけ宣戦布告した。

「なんだ、またMMMバカどもか。勝手に対抗心燃やしてろよ。オレはお前らに関わる気は毛頭ない。っと、どうやらそろそろ第2レースのスタンバイらしいな」

 峻佑は種村のほうを見ることなくそう話した。

「てめえは絶対ぶっ潰す……! 覚悟しとけ」

 種村は静かにそうつぶやき、自身も第2レースのスタンバイのため列に並び直した。

「第2レース、位置について、ヨーイ、スタート!」

 パァンといういつもの空砲を合図に、峻佑たちは一斉に走り出した。

(くらえっ! そして転べ!)

 種村は峻佑をつまづかせようと、走るコースに足を出した。

「……お前、やっぱバカだろ? そんなんに引っかかるほどオレはアホじゃないんでな」

 峻佑は種村に冷ややかな視線を向けると、種村の足をヒラリとかわし、走っていった。峻佑にかわされた種村は「うおっ!」と奇声をあげ、バランスを崩してハデにこけたのだった。

『おっと、スタート直後に白組の選手が1人転びました。これはここから見た限りですと、紅組の選手を転ばそうとして自滅したといったところでしょうか。白組、この自滅は痛い。大幅に出遅れましたね』

 実況がそう言っている間に、峻佑たち他の選手は借り物が書かれた札のところまでたどり着いていた。

(上級生のレースで出てきた札はどれもろくなもんじゃなかった。何が出るんだ……?)

 峻佑は札に手を伸ばしながら一瞬考えてしまった。

 これまでに上級生のレースで出てきた札には、放送で行われた解説によると、‘校長’や‘教頭’などの先生シリーズとか、‘放送委員の予備マイク’だとか、とにかく変な借り物ばかり入っていたのだ。中でも引いた選手が最もとまどったのは、‘江頭’と書かれた札だった。もちろんあの芸人・・・・がこんなところにいるわけがない。さんざん悩んだ末、その選手はアナログの腕時計を借り、‘2:50’に合わせてゴールに持っていった。すると、なんと彼は1位の旗を渡されていた。実はこのレースの借り物は全レース中唯一の“とんちを利かせて借り物を見つける”というとんでもないものだったらしく、まだ誰もゴールしていなかったのだ。

 そんなことを考えながら峻佑が引いた札を開けると……

「‘女子生徒’!? よっしゃ!」

 くじ運がよかったのか、峻佑は小さくガッツポーズをすると、自分のクラスのほうへ走った。

『このレースの借り物は、‘机’‘女子生徒’‘イス’‘体育着’となっています。さあ、各選手はどの札を引いたのか?』

 実況が楽しそうに言っているのを背に、峻佑は4組の陣地へたどり着くと、

「ちひろ、一緒に来てくれ!」

 大声でちひろを呼んだ。

「あ、あたし!? うん、わかった!」

 ちひろは突然のことにとまどいながらもグラウンドと選手席を区切るロープをくぐって出てきた。

「よし、これで勝ちはもらったな」

 峻佑はちひろの腕をつかむと、ゴール目指して走り出した。

 ゴールまであと少しと迫った、そのとき。

「市原あああ! てめえには勝たせねえええ!」

 後ろから猛然と迫ってきたのは、スタートで出遅れていたはずの種村で、彼の手には体育着が握られていた。

「ちっ! 自滅野郎が追いついてきたか! だけど、オレの勝ちだ!」

 峻佑は一瞬焦ったものの、すでにゴールは目前だったこともあり、無事にトップでゴールした。

「ちっ、あと一歩及ばなかったか」

 種村は運良く‘体育着’を引いたらしく、スタートで出遅れた分をあっという間に取り戻して、2位に入ることができた。

「1年生のレースの残りは省略とし、結果は両軍同点。続いては障害物競争ですので出場選手は集まってください」

次回は作者が書いていて最も楽しかった「障害物競走」!

VOL.18:体育祭Part2お楽しみに!


感想や評価、ご指摘、ご要望など随時受け付けております。何か気づいた点などありましたら気軽に書き込んでください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ