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VOL.14:生徒会、再び

 翌朝、昨日の休みをまる一日大掃除につぎ込んだ3人は疲れきった表情で登校していた。

「まったく、峻佑くんがあんなものを隠し持っていたなんて……」

 歩きながらちひろがボヤく。

「あんなものって言うけどさ、あれくらいならそんな大げさに騒ぐことでもないと思うぜ。むしろああいう本をまったく持っていない方がおかしいって。2人はちょっと神経質すぎるんだよ」

 峻佑は本を捨てられたショックからなんとか立ち直ったものの、ぶつくさ文句を言っていた。

「そうかもしれないけど、現物は見たくなかったわよ……」

 みちるはため息とともにそうつぶやきつつ、3人は学校まで歩いていった。



「そうか。そいつは災難だったな……同情するぜ」

 休み時間、峻佑は昨日のことをうまく魔法のことは隠して耕太郎に話したところ、同情されてしまった。

「はあ……同情するくらいならお前のヤツを1冊か2冊くらい譲ってくれよ」

 峻佑は耕太郎に頼んでみたが、

「他でもないお前の頼みだからな、俺としては構わないが、後ろのお方は認めてくれなさそうだぜ?」

 耕太郎は苦笑して峻佑の後ろを指差した。

「ん、後ろ?」

 峻佑が振り向くと、

「峻佑くん……まったく懲りてないでしょ?」

 いつから峻佑たちの話を聞いていたのか、ちひろが峻佑の後ろに仁王立ちしていた。

「うげ、ちひろ……男同士の話を盗み聞きするとはあまりいい趣味とは言えないな」

 峻佑がちひろに抗議したところで、休み時間の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。

「その話の続きは放課後にでもしようか。まあ、あたしの主張は変わらないけどね」

 ちひろは峻佑に小声でそう言うと、自分の席に戻っていった。

「同年代の女の子と同居するって、うらやましいことだと思ってたが、今じゃ同情するぜ。ご愁傷様」

 様子をうかがっていたクラスメートの1人が席に戻る途中で峻佑の肩を叩いて去っていった。


「だから、あのくらいならいいだろ? お願いだから返してくれよ」

「何度頼まれても、えっちな本はダメ!」

 放課後、峻佑たちが3人で激論を交わしていると、放送が入った。

[1年4組の市原峻佑くん、真野ちひろさん、1年5組の真野みちるさん、特別教室棟3階の小会議室へ来てください。繰り返します――]

「なんだ、また生徒会か? でもなんで小会議室なんだ……?」

 今度は峻佑だけでなくちひろやみちるまで呼び出されていること、そして呼び出し先がなぜか小会議室ということに峻佑は首を傾げつつも、2人とともに小会議室へ向かった。


「よく来てくれた。早速本題だが、市原君、考え直してくれる気はないか?」

 会議室で待っていたのはやはり一条たちだった。今日は前回のときは見なかった女性もいて、3人になっていた。

「何度言われても考え直す気はありませんので、他を当たってください。話がそれだけなら失礼します」

 峻佑は一条の要求を突っぱね、会議室を出ようとした。と、

「まあ、待ちたまえ。それだけならあとの2人は呼ばなくともいいだろう? なつき、続きはキミから頼む」

 一条は第3の人物をなつきと呼び、彼女にバトンタッチした。

「一応初めまして。私は生徒会書記長兼、隠密調査部長、3年7組の西園寺なつき。とある筋からの依頼であなたたちのことを調べさせてもらったわ。そしたらこんな映像が出てきたんだけど、説明してもらえるかしら?」

 なつきはそう言うと、会議室のカーテンを閉め、ビデオを再生した。

「これは……? つい昨日の我が家じゃないですか。隠し撮りとは生徒会メンバーは趣味が悪いですね」

 峻佑が皮肉を言ってやると、

「そんなことより、そこで本棚がガタガタ動いたり、奇妙な黒いものが発生しているんだけど、あれは何なのかしら?」

 なつきは峻佑の皮肉を華麗に無視スルーすると、そうたずねた。

(マズいわね……完璧に撮られてる。どうする、みちる?)

 ちひろは映像を見ながら隣にいるみちるにテレパシーで話しかけた。

(うーん……あまりやりたくはないけど、暗示をかけて記憶を消し去るしかないんじゃないかな?)

 みちるはそう返すと、

「西園寺先輩でしたっけ? いったいどういうおつもりですか? 盗撮は犯罪ですよ?」

 なつきにそう抗議をした。

「そうね、その点については謝らなくてはならないわね。でも、この映像を説明してもらわないと、私って好奇心の塊で生徒会にいるような人だから、今後も生徒会権限をフル活用してあなたたちに付きまとうかもしれないわよ?」

 なつきは一度謝ると、苦笑しながらちひろたちに迫った。

「ちょっと、先輩がた!? まさかとは思いますけど、オレを脅迫して生徒会入りさせるために西園寺先輩にウチを盗撮させたわけじゃないですよね!?」

 峻佑はなつきに詰め寄られるちひろたちを横目に、一条と仙堂に詰め寄っていた。

「………………」

 2人は無言のまま何も答えなかったが、その無言は肯定を示していた。

「そうですか……お2人があんまりにも熱心にスカウトしてくれるんで、ちょっとだけ前向きに考え始めていたのに、先輩たちには失望しました。今後一切勧誘には応じませんので。2人とも、行こうぜ。もう用はない」

 峻佑が一条たちに啖呵タンカを切ると、2人を呼んで出ていこうとした。と、

「うん、ちょっと待ってて峻佑くん。先輩、ちょっと失礼。この映像(ビデオ)を消去してこの件をまるごと忘れちゃってください」

 ちひろがなつきの目をジッと見据え、記憶を消す暗示をかけた。

 さらに一条たちにもみちるが同じ暗示をかけ、峻佑たちは小会議室を後にした。

「まったく、あそこまでしてオレを生徒会入りさせたかったのかね?」

 帰る途中、峻佑が怒りながら吐き捨てた。

「やり方は最低だけど、あの会長さんたちは本気だったよ。一応、忘れさせたのはあのビデオに関することだけで、峻佑くんを生徒会にスカウトしようとしてることは変わらないから、今後の対応次第では考えてもいいんじゃない? なんだったら先輩に頼んで私たちも一緒にやろうか?」

 みちるは峻佑を落ち着かせながら話した。

「そうだなぁ……ま、どうなるかはわからないけど、とりあえず帰ったらカメラを探し出して回収しなくちゃな」

「そうだね。せっかく忘れさせたのに、カメラをほっといたら意味ないものね」

 峻佑の怒りも収まり、彼らは苦笑いしながら帰路についたのだった。

なつきの陰謀をどうにか切り抜けた峻佑たち。

そんな彼らに高校生活最初のイベントが迫る。

次回、VOL.15:まもなく体育祭(仮)お楽しみに!


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