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VOL.10:週末探検隊-Part4-

「2人とも、落ち着いた?」

 あれからさらに2人が狂ったように暴れまわり、残っていたロボットの下半身さえも粉砕し終えるころ、静かに峻佑は2人にたずねた。

「う、うん。ゴメンね、変なとこ見せちゃって」

 ちひろが頬をポリポリと掻きながら謝った。

「いや、大丈夫。あの状況でパニックにならないほうがおかしいから。まあ、魔法の暴走は驚いたけどね」

 峻佑は状況の凄惨さにただただ苦笑いしていた。

 ロボットの残骸が下半身部分だけになったあと、ちひろとみちるが揃って悲鳴をあげ、その残骸に向けてメチャクチャに電撃やら吹雪やらをぶっ放していった。しばらく続けて跡形もないほど粉々にすると、トドメとばかりにちひろが何かつぶやいて空間に穴を開け、粉々になった残骸はそこに吸いこまれるように消えた。

「ところで、最後にあの残骸が吸い込まれるように穴に消えていったけど、あれはどこに行ったの?」

 峻佑はふと気づいたことを2人にたずねた。

「ああ、家の外よ。たぶん庭にでも転がっているんじゃないかしら? あの魔法はモノやヒトを離れた場所へも移動させられる、瞬間移動の原理を応用したものだから」

 ちひろは簡単に説明すると、「先へ進みましょう」と言って歩き出した。



 その後はよく探検系のゲームにありそうなトラップが待っていた。

「ま、マジかよーっ!?」

 まず、先ほどの謎の声が再び聞こえたかと思うと、目の前から巨大な岩が3人を押しつぶそうと転がってきた。来た道を引き返して逃げる途中、峻佑が足をもつれさせてバランスを崩した。

「峻佑くん、あぶないっ!」

 だが、その瞬間ちひろが峻佑の腕を引っ張り、

「もう、逃げてばかりじゃ埒があかないわね。……凍らせちゃえばいっか」

 みちるが立ち止まり、振り向くと目の前に冷気の壁を作り出した。転がってきていた岩は冷気の壁に触れた瞬間に凍りつき、通路の壁ごと凍結させることでようやく止まった。

「助かった……また魔法に救われちまったな。まあ、魔法使いの試練の場に来ているから当然か……」

 峻佑はゆっくり立ち上がると、つぶやいた。

「ゴメンね、やっぱり入らない方がよかった?」

 ちひろがおそるおそる峻佑に訊ねてきた。

「まあ、ちょっと怖いけど、それ以上にワクワクしてるよ。半ば強制的にここに来たけど、最終的に進むことを決めたのはオレ自身だから、気にしなくていいよ。さ、そこの岩をぶっ壊して先に進もうぜ」

 峻佑はそう言いながら凍りついた岩に近づいていく。

「あ、峻佑くん。ちょっと待っ……」

 みちるが峻佑を止めようとしたときにはもう峻佑は岩をぶん殴っていた。と、まださっきみちるが使った冷気の壁の効果が続いていたらしく、岩に触れた瞬間に峻佑は凍り付いてしまった。

「遅かったか……」

 みちるがボヤきながらも急いで魔法を消し、凍結は解除されたが、峻佑は心臓が仮死状態に陥ってしまったらしく、目を覚まさないでいた。

「峻佑くん、しっかりして!」

 ちひろがそう叫びながら、峻佑に電気ショックを与えた。バチッと言う音とともに峻佑の身体が跳ね上がり、それを数回繰り返してようやく峻佑は意識を取り戻した。


「峻佑くん、ホンットーにゴメン!」

 峻佑が起きあがるや否や、2人とももの凄い勢いで謝り、

「こうして無事だったんだし、もういいよ。それに、オレ自身の不注意もある。何が起こるかわからない場所でうかつな行動は取るものじゃないな」

 峻佑は土下座しそうな2人を制してそう話すと、立ち上がった。

「それじゃ、岩はまた外に放り出しましょうか」

 ちひろは先ほどの空間の穴を再び作り出し、岩を消し去ると、3人は歩き出した。


「だいぶ進んで来たけど……どこまで続いてるんだ? あれ、さっきもその通路見た気が……っていうかその道ってオレたちが通ってきた道じゃないか?」

 峻佑が途中見つけた分かれ道を指差してボヤいた。

「たしかに妙ね……それじゃ、目印にこれをおいて行きましょう」

 ちひろは足元に落ちていた棒きれを並べると、先へ進んでいった。


「ちっ……やっぱ無限回廊ループってヤツか」

 しばらくして一行が見たのは分かれ道に先ほど置いていった棒きれだった。

「じゃあ、先へ進む道はどこにあるのかしら?」

 みちるが首を傾げる。

「こういう場合、大抵はどこかにスイッチか何かがあると思うんだ。もう一周、辺りを調べながら回ってみよう」

 峻佑の提案のもと、3人で壁を調べていくことにした。


「げ……スイッチがたくさん!? どれが本物だ?」

 回廊の反対側に回ったところで一行が見たのは、壁一面に並ぶスイッチだった。

「あ、ここの壁になんか書いてあるよ」

 みちるが壁に何か書いてあるのに気づいて2人に伝えた。

「ホントだ。でもオレには読めないな。なんて書いてあるのかわかる?」

 峻佑は文字らしきものがあるのはわかったが、解読まではできないようだった。

「これは魔法書に使われてる文字と同じね。え〜っと、ここに並ぶスイッチは全部で10個。本物は当然ひとつで、あとの9個のうち3つは押した瞬間に外へ放り出される落とし穴、6つは壁から何かが出てくる、って書いてあるわ」

 ちひろが文字を読んで峻佑に伝えた。

「正解はただひとつ、か。どれが正解だ? 何かヒントとかないの?」

 峻佑は闇雲に押してみようかと思ったが、外へ放り出されたりするのはともかく、何かが出てくるというのに引っかかってはたまらないのでちひろに聞いてみることにした。

「うーんと、最後の部分にこう書いてあるわ。『先へ進みたければ、観察せよ。さすれば道は(おの)ずと見えてくるだろう』だって。どういう意味だろう?」

 ちひろは文字を読んでヒントを見つけたものの、意味がわからず首を傾げた。

「観察せよ……ってことはとにかくスイッチを調べてみればいいんじゃないか?」

 一行は10個のスイッチを丹念に調べてみた。



「うーん、どれも同じに見えるな……って、あれ? スイッチが消えた!?」

 峻佑たちがスイッチを調べていると、突然10個のスイッチのほとんどが消えた。よく周りを見てみると、真ん中のひとつだけが残っていた。

「これが本物かな?」

 みちるが峻佑とちひろに聞いてみた。

「どうだろう? でも、ヒントを実行した結果出てきたものだから試してみる価値はあるな」

 峻佑はそう言うと、躊躇(ためら)うことなくスイッチを押した。と、後ろに扉が出現した。

「大正解だったな。さあ、行こう」

 一行はたった今現れた扉に入っていった。

「最深部到着みたいだな」

 扉の先の通路を抜けると、小さな部屋がそこにはあり、その真ん中に小さな石像が1つ置いてあった。

《幾多の罠をかいくぐり、ここまでたどり着いた我が子孫よ……》

 どうやら途中にも聞こえてきた声はこの石像から発せられていたらしい。

《私はお前たちの先祖でマノール家の始祖、ジェン=マノール。

 私が生きていたころは困った人々を助けるためだけに魔法を使っていた。だが、それでも私の能力を恐れた人によって魔女として告発され、処刑されそうになった、というか一度実際に火刑にされた。もっとも、この身を護っていた魔力のおかげでなんともなかったがな。

 さて、昔話はこのくらいにして、我が子孫よ。昔のように魔法を困った人々のために活用してほしいのだが、やってくれるか?》

 先祖のジェンと名乗った声は、少し昔話をしたあと、ちひろたちにたずねた。

「今の時代、魔法使いは空想の中のみの存在になっていて、その能力が必要になることはあまりないし、あたしたち自身も正体をほとんどの人に隠して生活してる。だけど、もし必要になるときが来たら必ずや困った人々の役に立ってあげたいと思うわ」

 ちひろは力強く宣言した。

《いい答えだ。では、これを持って行くがいい》

 ジェンがそう言った次の瞬間、石像の中から魔法書が出てきた。

「これはオリジナルの魔法書?」

 ちひろが魔法書を手に取りながらつぶやいた。

《そうだ。私の子孫たちがどんどん書き写していったようだが、能力の弱体化によって使えない術が出てきたのかオリジナルに比べると最近のものは数が減っているようだ。だが、お前たちなら使いこなせるだろう》

 ジェンの声はそれを最後に、聞こえなくなった。

「これでここに来た目的は達成したな。帰ろうぜ」

 最深部に到着してからは何もしゃべってなかった峻佑がつぶやき、オリジナルの魔法書を手に入れた2人とともに洋館の地下迷宮から脱出し、帰路に着いたのだった。

次回はいつも通り水曜の更新を予定しております。

もしも変更がある場合は自分のブログ(http://blogri.jp/captainw6294a/)にてお知らせいたします。

今週はこちらの勝手で更新を前倒ししてしまってすみませんでした。今後ともよろしくお願いいたします。

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