システィマ
運命というモノがある。
それは全てを絡めとリ、逃れることを赦さない秩序・仕組み。
たとえ運命から逃れたとしても、それは別の運命によって決められていたこと。また別の運命から逃れたとしても、また更に運命はその者を囚える。どこまでその枠を広げようと簡単に絡めとられる。――いや、一時として逃れることなど出来ないのだ。幾重にもなる糸から逃げることなど出来やしない。
たとえ、歪めようとも。
女は自らの運命を変えようと男になった。そうして唯一愛した女性を永遠のモノとするため、終焉と言う運命を塗り替えた。
自らは沈まぬ陽となって。
女を永遠に廻りつづける月として。
嗚呼、だが男は気づけない。陽と月が逢ったとしてもそれは刹那の出来事。永遠であることなど叶わない。出会いと別れは等しく訪れ。男は一人、其処で女がやってくるのを待つしかない。嗚呼、この出会いと別れのみが永遠と言えるかもしれない。
男と女は常に惹かれあう。だが、女は永の廻りの中で男のことを忘れていく。男もまた、正しく覚えているわけがない。
そして、それも残酷な運命によって定められていた運命。舞台上でのシナリオの変更は認められない。
底は滑稽な遊技盤。盤の上をコマが進む。代わる代わるコマは進む。
さぁ、男の手番。男は変わる変わる時の中をただ、立ち尽くす。
さぁ、女の手番。女は男に引き寄せられる。
さぁ、男の手番。男は女と共に歩もうとする。されど、殺し殺され。
さぁ、女の手番。女は男と共に歩む。されど、殺し殺され。
変わらぬ遊戯。続く続く。
飽くことなく紡がれつづける運命。
糸がほつれた――。
沈まぬ男と廻る女に変化。
戯曲的な逃走劇の果てに女は男との間に子を身篭った。
それは今までになかったこと。
変わるはずのない運命。
――――ついに運命は変わったのか。
子を産むと女は死んだ。
やはり変わるぬ運命。男は結果的に女を殺した。そして女は沈む。
立ち尽くすのみの男。――しかし、其処には娘。男に変化が――
しかし運命は変わらない。
男は娘の元を離れ、男と女は惹かれあう。
残された娘。
新しい運命。
愛した人を失い壊れた少女。
少女の崩壊は止まず、崩壊した少女の愛は病んでいく。
夕日に逆らった男。
巡りつづける女。
――其処には少女の影。
滑稽な遊技場。哀れなコマ。
運命と言う秩序・仕組み。
遊技場の上では今日もコマが進む。
運命に従って――――
さぁ、アナタの手番。
この愉快な遊戯は終わらない。
さぁ、皆さんが観測可能なこのファンタジーは終わりです。どうです?気付けましたか?気付けませんでしたか?
物語とは本来、“終わることなど無いもの”なのです。思い浮かべてください。例えば、不思議の国のアリス。ほんとうに、あれで終わりだと思いますか?いいえ。アリスという少女の物語はあれで終わるはずが無いのです。これも同じです。物語は終わりません。――万物は、流転するが定め。それは閉じた輪。もしかしたら、いつかこの物語を再び観測することができる日がくるかもしれません。来ないかもしれません。ただ、言えるのは、何度もいいますが、物語は終わらないのです。それだけです。




