第四話:印税が無いバンドってみんなどう?
慎のバンドがデビューしたのはいいが、印税が無いのにキレた涼子は…
慎のバンドがデビューして一週間が経った。が、一向に世に言う印税が来ない。
CD会社Xは語る。
印税が払える程売れてない。
当たり前だ。
なんでかと言うとそのCD会社Xが提供している番組がエンジョイ?年金とか言う番組しか提供してないからだと私は思う。
しかもUP-JUMPのデビューシングル、『子供の未来』と『消えない命』。
老人と全然関係ない歌のタイトルだからかと思う。
はぁ、こんなのデビューしているバンドじゃないよ。印税がないなんて…。
私はいそいそと徒歩一時間のCD会社Xへと向かった。
会社は外見からして単なるビル。
決して売れている方ではない。実はケータイも作っているのだが、使用率2%だ。
中に入ると慎のバンドUP-JUMPのCDの宣伝用ポスターが貼ってある。
『新星デビュー!数々のレコード会社をくぐり抜けたどり着いた宝物!』キャッチコピー長すぎです。
なぜあんな会社を慎達は選んだかって?
それはデビューが決まった夜、納得いかない私は慎と井戸端会議(?)を行った。
「なんであんな無名のレコード会社を選んだの?aとかPとかいるじゃないの。なんでXを選んだの?」
私は力を振り絞ってテーブルを叩き、慎に怒鳴りながら聞いた。
「ドラム、会社の社長の息子なんだ」
私は固まってしまった。小さな声でええっとしか言えなかった。
その後、私は急ぎ足でドラムの中村君に話を聞いた。
「いやー、参ったよ。まさか親父に土下座されるとは思わなかったよ。なんかさ契約したアーティストがさどんどん解散しちゃって…頼むとか言われちゃそれに乗るしかないなってね…」
中村君が言う限りではその社長は会社の愚痴など言わず、誰にも相談しなかった。
いつも仕事だと言っていた。
そんな社長が息子に頭を下げた。それで嬉しかったらしい。
でもねー、もうちょっと提供する番組を増やさなきゃ。
私は自動ドアの前に立って、開いたと同時に入った。UP-JUMPの歌が流れている。
私は受付嬢の前に立って三秒ぐらい経った。
「どうしましたか?」
「あのー」
「はい」
「UP-JUMPのベースの妻なんですが、社長に会わせてください」
その後、私は社長室に連れて行かれ、社長室のソファーに座った。
「いやー、久しぶりに会いましたね。助かりますよ。おかげで売り上げも上がったし、そろそろマネージャーも付けたいと思うし…」
社長が部下から煎れてもらったお茶を私の前に置きながら言った。
「あの、印税についてなんですが…」
「ふぇ……」
「社長?」
「…売り上げ枚数分かりますか?」
「…いえ」
「教えましょう…」
私は息を飲んで社長の話を聞いた。
「210030枚です」
「はぁああ!?じゃなんで印税が無いんですか!?」
「社会人だからいらないよって言われたんです。経理に」
「はぁ?!」
私は経理科に向かって走っていった。
私の目に映る経理という文字。私はそのドアをあけた。
「誰だね。お主」
急につまんないギャグ(は?)を言ってきたおっちゃんに一発蹴り入れて(犯罪っていう日本語知ってる?)経理科の中を歩く。
「責任者どこだ!!」
「社長なら社長室に…」
「ちげーよ、ばぁか!!」
「経理の中の!?」
「当たり前田のクラッカー(だまれ)」
と、愉快なショートコントを経理の社員と共にやっていたら、急に若いのか老けてるのかわからない人が現れた。
「私が責任者よ」
「ほんとかい?」
「当たり前田のクラッカー」
なんとギャグの分かる責任者なんだい(首まで埋まれ)。
そんな気持ちで私は経理課の責任者と話した。
「あなたと話があるの」
「なんですか。原田さん」
何!急展開!名乗ってないのに私の名前が何故に分かるのだ?
「それはね、極秘書類にあるの」
責任者は表紙に大きく秘密と書いてある書類をチラチラ見せる。
ああこの書類を奪って無差別に(?)コピーして東京にばらまきたい。
「なんで、なんで慎たちに印税を払わないのですか?」
私は少々キレながら言った。
「私は彼等の目を見て感づいたの。みんな、金のためにバンドをやってるんじゃないってね。だから印税をあげても返すと思うわよ」
私は責任者のほんとの思いを知ってちょっとひるんだ。
だけれども、私は知っている。
『印税をもらっておまえにはいい思いをして欲しい』と慎が言っていた事を。
「うそこけ!!金が欲しいくせに」
「ぬぁっ(大ダメージ)、何を言っている」
「んにゃー!!」
んにゃー?
ここにいる人間はそう思っただろう。
すると、ドラ猫が経理課のガラスの前にいてそのまま突っ込んだ。
「危ない!!」
私は叫ぶが、ドラ猫はケガ無し。
経理課のガラスはとてつもなく小さいカケラになっていた。
それにしてもどうやって猫は来たんだ?
「なんなんだよ。この猫」
経理課の社員の一人がそういった。
すると、猫は社員の机にあった魚のフライのハンバーガーの中の魚のフライを食わえるとそのままどこかへ言った。
「ああっ、俺のハンバーガーが…」
社員が落ち込んでいたらいきなり『印税、払え、印税、払え』とか言ってデモ行進が来た。
とんでもない展開に経理課の社員と私はあっけに取られていた。
「涼子!!」
デモ行進をかき分けて、慎たちUP-JUMPのメンバーが来た。
「慎!!」
私は慎の所へと行った。
「おまえ…、俺たちのためにこんなとこまで…」
「えへへ」
「ありがとう」
「どいたまぁ(超だまれ)」
そのころ、デモ行進は経理課の責任者を囲んで『税金、払え、税金、払え』と行進していた。
「ねぇ慎、どうしたの?あのデモ」
「ギターが市長の息子なんだ」
なんだかすごいぞこのバンド。ボーカルは何なんだろうなぁ(期待するな)。
「わかったわよ。払えばいいんでしょ!!」
ついに迫力で負けてしまった責任者は体勢を崩しながら言った。
「よっしゃああああああ!!」
慎たちは喜びながらはしゃいだ。
ちなみに印税は、エンジョイ!!年金の番組テーマソングの利用料と20万枚売れたから、200万ぐらいらしい。すごいな。
おいおいベースもそんなに簡単じゃないぜ。と、小学生にベースを渡した慎は…(これ次回の話と関係ありません)