第四話 任務開始!
しばらくの間、レイはエリナと話をした。といっても、ほとんどエリナが一方的に話していただけだったが。レイにとって人と話すこと自体が久しぶりのことであり、どう返せばいいのかがわからないのだ。
聞いた話をまとめるとこうだ。エリナは子爵家の娘で、れっきとした貴族らしい。もっとも、この学校では貴族の子息・令嬢は珍しくもない。そしてエリナは魔術師を目指してこの学校にやってきたとのこと。その後も話は続いたが、レイには理解できない話題に移っていった。女性特有の話というやつだ。
「…ねぇ、ちゃんと聞いてる?」
エリナが少し不満げに言った。
「ち、ちゃんと聞いてるよ」
「ほんとかなぁ」
エリナは疑わしそうに目を細めた。
「もしかして、レイくんって女の子と話すの苦手?」
「そ、そういうわけじゃないけど…」
レイは少し言葉を選ぶように答えた。
「ただ、あまり人と話してこなかったから、慣れていないだけで」
「ふーん、そうなんだ」
エリナは何か面白いものを見つけたような顔をした。気のせいだろうか。たぶん気のせいだ。
「じゃあ私、用事あるから先に失礼するね」
そう言ってエリナは教室を出て行った。レイもまた、用事があるため教室をあとにした。
レイの用事とは、もちろん任務のことである。まずは学院内の地理を把握しておく必要があった。潜入先について知っておくのは基本中の基本だ。
さっそくレイは学院内を歩き回った。
でかい。でかすぎる。さすがはルーネントップクラスの学院だけあって、端から端まで歩くだけでも一苦労だ。広すぎて迷子になりそうだと思っていたら、案の定迷子になっていた。
「どうしよう、今どこにいるんだ…」
レイはかなりの方向音痴である。これだけ広い学院ともなれば、迷子になるのも無理はない。そうは思うものの、情けない気持ちは拭えなかった。
それでもしばらく歩き回っていると、ふと学院の裏手に人影が見えた気がした。
「見た感じ、普段から誰も来なさそうな場所だよな。もしかして…!」
レイの任務は、学院が帝国と繋がっているかの調査だ。怪しい動きがあれば見逃すわけにはいかない。レイはすぐに外へ出て、人影があった場所へと向かった。しかしそこにはすでに誰もいなかった。
「…にしても、歩きにくいな。それになんか、変な感じがする」
辺りを見回すと、草木が伸び放題で明らかに手入れがされていない。おそらく最後に手入れをしたのは数ヶ月前だろう。レイは少し周囲を調べた後、その場をあとにした。
寮へ戻るのに、また少し時間がかかった。
「つかれたああああ!」
部屋に入った瞬間、レイは思いっきり大の字に倒れ込んだ。天井を見つめながら、大きく息をつく。
「なんかどっと疲れたな…しかも体調もなんか優れない気がする。慣れない生活のせいかな」
その夜、レイは昼間の出来事と謎の人影についてざっと記録をまとめ、そのままぐっすりと眠りについた。




