十二、負けられない戦い
「そうそう、雪華は手先が器用ね」
今日は逸美が雪華の部屋に来ていた。毎日歴史書を読む姿を見ていた逸美が、たまには気分転換にと裁縫を教えてくれていた。
冰夏も加わり三人で手布を作っていた。
雪華は町にいた頃、養母の徐媛から教わり、ほつれた服は自分で縫っていた。そのおかげか、上手にできている。
「雪華、月亮にあげたらどうかしら?きっと喜ぶ思うわよ」
(私は月亮様と婚姻をするのだ。私を大切に思ってくれているのは伝わるけど、まだよくわからないのよね。町にいた時も勇敢以外まともに接したことなかったから、正直どうしたらいいのかわからない)
雪華は自分の作った手布を見つめながら、月亮について考えていた。
逸美はそんな雪華を温かく見守っていた。
「そういえば、護衛の勇敢?だったかしら。雪華の友人だと聞いたけど」
「はい、町にいた時によく一緒にいました。勇敢にはこの髪のことも知られていましたし」
「今は何でここで護衛しているの?」
雪華は逸美の顔を見たまま言いづらそうにしていた。
「勇敢は農家の跡継ぎの長男です。なのに・・・私を守るために家を出てここまで来たのです」
逸美は雪華と勇敢の関係が見えてきていた。
逸美は立ち上がり、戸を開け、勇敢はいる?と聞いていた。
しばらくしたら勇敢がやってきた。
雪華は逸美が勇敢を呼んだ意図がわからず、困っていた。
逸美は勇敢に町にいた頃のことについていろいろ質問していた。
勇敢も楽しそうに町にいた頃の話をしていた。
雪華は黙って二人の話を聞いていた。
「へぇ、なるほどね。それで、勇敢は諦めきれないんだね。雪華が第四皇子と婚姻すると知っても」
核心をつく問いかけに雪華は思わず逸美を凝視した。
勇敢は眉間にしわを寄せ、歯を食いしばっていた。
「その通りです。若奥様。私はお嬢様をお慕いしております。私は昔からお嬢様しか見ておりません。そのために町を出て、訓練に耐え、言葉遣いも覚えました。全てはお嬢様のためです」
勇敢の目は真っすぐ雪華を見ていた。
「こんなとこにも虫がいたのですね」
戸の方を見ると月亮と翰が敵を見るような目で勇敢を見ていた。
「雪華、町にいた時にこの護衛とは何もなかったですよね?」
翰の問いかけに、雪華は町にいた時のことを思い出していた。
(特に気になることはないよね・・・。手をつないでいたことは・・・言わないほうがいいよね)
勇敢は月亮と翰に向って一礼をして、自慢げな顔をしながら言った。
「これはこれは第四皇子と翰様、私は町にいた時、毎日のようにお嬢様と一緒にいて、手をつないで町を歩いていました」
(何で余計なこと言うの!)
雪華は変な汗が出ててきていた。その隣で冰夏は楽しそうに男どもの雪華を巡る争いを観賞していた。
逸美はこの状況を整えたかのように落ち着いていた。
「それは本当か!」「それは本当ですか!」
月亮と翰が雪華に詰め寄っていた。
雪華は嘘をついてもすぐわかってしまうと思い、正直に、はいと答えた。
「それならば、手を切り落とすまでですよ」
翰は本気でやりそうな目をしていた。
雪華は翰の後ろに回り、腰に手を回し、翰兄様やめてくださいと必死に止めた。
雪華に必死の訴えに、さすがの翰も剣を鞘に収めた。
不穏な空気が流れていた。
翰は何かひらめいた顔をした。
「では、こうしましょう。今から三人で戦って勝ったものが明日、雪華と一日過ごせることにしましょう。もちろん木刀ですよ。どうでしょうか」
月亮も勇敢も異論はないといい、外に出て行った。
(月亮様と勇敢はさておき、なぜ実の兄が混じっているのだ。そもそも私に選択権はないのか?)
雪華はどうでもよくなり、部屋の中から三人を眺めていた。
冰夏は楽しそうに応援していた。
「義姉上、どうして勇敢にあんなこと聞いたのですか?」
逸美は少し悲しい顔をしながら、
「勇敢には現実を受け入れてほしかったの。あそこで本音を言わせないと、間違った選択をして後悔しそうだったからかな」
と言いながら三人の戦いを見ていた。
「私は月亮に勝ってもらいたいけど、雪華はどう思う?」
「私はおそらく・・・」
勝者は雪華の予想通りだった。




