五、小蘭の秘密を知る者
「小蘭、早く行くぞ!早く行かないといい場所で見れなくなるぞ」
今日は皇帝と第四皇子がこの町に来る日だ。
早く、早くと言いながら、勇敢は足踏みしている。
私は興味がないので別に急がなくてもいいのだが。
厨房からは母が勇敢、小蘭を任せたわよという声が聞こえる。
任せとけと言いながら、手を差し出してきた。
幼い頃から勇敢は必ず私と手をつないで行く。年々手が大きくなり、握る力も増している気がする。
幼い頃ならまだわかるが、今は。
(十五にもなって手をつないで行くのはどうなのだろう?)
と思いつつも、素直に従って手をつなぐのであった。
手をつないで歩いていても、町の人にとってはいつもの光景である。
特に何を言われることもない。
声をかけられても、二人も見に行くのかい?と言われるぐらいである。
私も特に勇敢の事を意識しているわけでもないから、これでいいかと思う。
「第四皇子は俺と同じ歳だってよ。どんな人なのかなぁ。まぁ、俺のほうがいい男だろうけど」
そう思うだろう、と同意を求められる。皇子と比べるなど、なんて失礼なことだと思いながらも、はい、はいそうだねと適当に相槌をする。
しばらく歩いていたら、勇敢がこっちだと言って森の方へ進んで行く。前もって下調べをした結果、近道らしい。
俺はできる男だからなと鼻を膨らませながら言っている。
感情を込めずにさすが、勇敢と言ってみる。あまり言うと調子に乗るからこれ以上はやめよう。
ぽつ、ぽつ
今まで雨の降る気配はなかったが、急に降りだした。
勇敢は私の手を引いて走り、雨宿りできる場所を探した。
見つけた小屋は、今にも壊れそうだったが、とりあえず雨さえしのげれればいいので、そこで雨宿りをした。
「小蘭・・・、髪が・・・」
(どうしよう、このままでは行けない。家に帰るしか・・・)
勇敢は父、母を除き唯一私の秘密を知っている。秘密を知った後も変わらずに接してくれている。
そういうとこだけは見直している。
しかし、町中で雨が降らなくて本当によかったと安堵する。今回は勇敢の下調べが役に立った。本人には言わないが心の中で感謝する。
勇敢は何か思いついたらしく、背負っていたものの中から布を取り出した。これを頭に巻いておけと渡してきた。
頭に布を巻くが髪が見えてるかどうかまではわからない。
「勇敢、大丈夫?わからない?」
ちょっとまってと言いながら、勇敢は小蘭の頭に布を巻きなおす。
ふと我に返ると、小蘭の顔が近いことに気付く。顔が真っ赤になりながら巻き終わると、後ろを向き、大丈夫だと言った。
小蘭は何が起きたのか分からず、困った顔をしていた。
しばらくすると雨も止んできた。通り雨だったのだろうか。再び太陽が見えてきた。
勇敢は勢いよく立ち上がり、雨も上がったし行くかと手を差し出した。
握った勇敢の手は心なしか先程より温かかった。




