二十七、聖旨
季節はもうすぐ冬となる。
劉家では冬に備えて従者や侍女たちが準備をしていた。
いつも表門から出入りする者たちが、皆裏門からひっそりと出て行っていた。
雪華はいつものように朝餉を食べ、冰夏と共にゆっくりした時間を過ごしていた。
家豪から第一皇子俊智が禁足になっていることを知り、冬の晴れた日のように気持ちが澄んでいた。
今日、雪華と冰夏は逸美のところへ行き、靖と遊んであげる予定だった。
二人は逸美の元へ向かっていた。
ふと耳を澄ますと何やら騒がしい声が門の方から聞こえていた。
雪華と冰夏は疑問に思いながら、遠くから表門を見てみた。
声は表門の外からしているようだった。
「今日は催し物でもあるの?」
「いえ、何もないはずですが」
二人は何事もなかったかのように再び逸美の元へ向かった。
まさか、外で騒がしくなっている原因が雪華であることに、当の本人は知る由もなかった。
「劉将軍に娘がいるとは。美人だろうか」
「劉夫人もお目にかかれないからな。きっと娘もそうなのだろう」
「歳は三男よりも下だと。まだ子供だな」
月亮が皇帝の前で雪華の名前を出したため、瞬く間に雪華の噂は広まった。
予想外の人だかりに門番の何恩と白竜も困っていた。
「白竜さん、今日ですよね。旦那様が言ってた日は」
「そうだよ。でもこれでは・・・。どうしようか。応援を呼ぶか?」
そんな中、劉家の屋敷の前には皇帝の許可がなければ使用できない馬車が止まった。
正装をした三人の男たちが降りてきた。
何恩と白竜は野次馬を止めながら、三人を屋敷の中に案内し、誰も入って来ないよう門の前で見張っていた。
ある声が劉家に鳴り響いた。
「聖旨である」
逸美のところにいた雪華の耳にもその声は聞こえた。
「雪華、行くわよ」
雪華は訳も分からず、逸美と冰夏に引っ張られながら、門の方へ急いだ。
(聖旨って皇帝の言葉だったような・・・)
雪華は平穏な日常に終止符が打たれる予感がしていた。
門の前では従者と侍女、護衛たちもひれ伏していた。
一番前には琳琅がいた。雪華と逸美も琳琅の隣でひれ伏した。
一番前にいる男は巻物を広げ読み上げた。
「天意に従い、勅命を下す。大将軍劉家豪の娘、劉雪華は聡明にして、気品があり、温厚従順。
よって第四皇子趙月亮に娶す。明年、誕辰日に輿入れせよ。以上」
(いつかはこの日が来るとは思ってはいたが、父上、早いですよ。明年の誕辰?あと一年か・・・)
昨夜、家豪と話していたことがもう現実になるとは雪華も予想外だった。
逸美は固まっている雪華に、
「雪華、聖旨を受けとって」
と小声で言った。
(まだ心の準備も何もできてないのに。これ拒否したら殺されるやつだよね。こんな時、翰兄様がいてくれたら止めてくれそうだな・・・もう流れに身を任せるしかない)
「ご聖恩に感謝いたします」
雪華は覚悟を決め聖旨を受け取った。
「勇敢、明日劉家の護衛として配属されるらしいな。まぁ、元々お前は護衛の訓練でここの来てたしな。しかし、羨ましいな。あの劉家の姫を間近で見れるとは」
「劉家の姫?あぁ、えっと、雪華・・・お嬢様のことか」
勇敢は言われ慣れない雪華という名前にまだ少し抵抗を感じていた。
「その美しさはこの国一らしいからな。しかし、第四皇子が羨ましいよ」
「何でそこで第四皇子が出てくるんだよ」
「勇敢、知らないのか?だって、第四皇子は・・・」
そう言いかけた時、勇敢の訓練仲間は遠くから名前を呼ばれていた。
「すまない。勇敢、姫の護衛頑張れよ!」
訓練仲間は足早に去って行った。
勇敢は第四皇子が話題に出たことに引っかかていたが、考えても仕方がないと思い再び訓練に励んだ。
(小蘭にやっと会える。俺に会ったらどんな顔をするだろうか。喜ぶかな?)
勇敢は雪華の姿を思い浮かべながら、剣を振っていた。
「翰、昨日の宦官は何だ。というか宦官ではなかったぞ」
珍しく月亮は翰に対して怒りを露わにしていた。
「あれは侍女だろ。どこから引っ張て来た」
「いえ、宦官ですよ。だってついてないのですから」
月亮は呆れていた。
「そういう問題じゃないだろ。しかも、あの侍女。本当に宦官かと思うくらい男らしかった」
翰は笑いを堪えていた。
「殿下、なぜ女だとわかったのですか?まさか・・・」
「変な想像をするな。私の部屋に虫が出たんだ。それを見つけた侍女が、きゃーって急に女の叫び声を上げて。それでわかったんだ。あの侍女は一体誰だ?」
「殿下、お忘れですか?義姉上の侍女の琴韻ですよ。私が殿下の護衛をどうしようか悩んでいたら、義姉上が声をかけてくださって。私よりは頼りないですが武術の心得がありますので」
その言葉を聞いて月亮は納得した。
(どおりで見覚えがあると思ったら・・・あとでお礼を言っておかないとな」




