十三、十五年前の悲劇
「本当に大丈夫なのか?」
劉翰と朱輝は雪華の居場所を特定した二日後、来蘭亭の裏手側、おそらく家の入口と思われるところに来ていた。もうすぐ亥の刻だろうか。
朱輝の心配をよそに、劉翰は堂々としていた。
家の中からあの男が出てきた。いかにも気難しそうな男ではあるが、二人を見て何か悟ったのだろう。
「あの時の若者か。俺に話があるんだろう。中に入れ」
男は何も言わずに家の中へ案内した。
案内された部屋には男の妻と思われる女もいた。女は二人を見て、お茶を入れてくるわと言って席を立った。男に座れと言われ、言われるがまま椅子に座り、女が来るのを待った。
四人が座ったところで、いつもの調子で劉翰が話はじめた。
「まずは名を名乗らないとですね。私は劉翰と申します」
劉翰は朱輝を肘で突き、朱輝も慌てて自分の名を名乗った。
「俺は林晨だ。こっちは妻の徐媛だ」
徐媛は軽く頭を下げた。
劉翰はお嬢様は?と雪華が寝ているかどうか確認した。
林晨は大丈夫だ、もう寝ていると言った。
それはよかったですと言って、話を切り出そうとしたが、先に林晨が話をはじめた。
「お前たちが何者かは知らないが、娘のことだろう。俺は見る目はある。お前たちには話していいだろう」
そう言って、林晨は少し遠い目をしながら、
「どこから話そうか・・・」
林晨は語りだした。
林晨と徐媛は親の反対を押し切り、駆け落ち同然で結婚した。互いに十八の時だった。
二人は必死に働き、三年後ようやく自分たちの店を持つことができた。今よりも、はるかに小さい店だったが毎日が充実していた。喜ばしいことは続き、徐媛が身ごもった。
ようやく子供ができた二人は子供が産まれる日を待ちわびていた。
出産当日、子供が産まれるまで、まる一日かかり、難産だったが、元気な産声を上げて産まれてきてくれた。
「旦那様、奥様、元気な女の子ですよ」
林晨は産まれたばかりの赤子を優しく抱きかかえ、ありがとう、ありがとうと泣きながら何度もつぶやいた。そんな林晨を見ながら、あなたって泣き虫だったのねと言って、一緒に泣いた。
二人は子供に美蓮と名付けた。
しかし、突然悲劇が訪れた。
美蓮が生まれて三日後のことだった。
「あなた!美蓮が、美蓮が・・・」
徐媛の腕に抱かれた我が子はすでに息をしていなかった。
現実を受け入れられない徐媛は毎日泣き続け、林晨も娘を亡くした悲しみで生きる気力をなくしていた。
美蓮が亡くなって三月ほど経ったが、いまだに徐媛は娘の死を受け入れられないでいた。
林晨もやせ細り、まだ二十一だというのに、四十近くに見られるほどやつれていた。
林晨は毎日泣き続ける妻にどう接したらいいかわからず、逃げるように家を出ては、毎日森の中を歩いていた。
(あぁ、どうすれば・・・)
今後どうすべきなのかあれこれ考えていた。
この後、小さな一輪の花を拾うことになるとは、夢にも思わなかっただろう。




