十二、白髪で特別美しい少女
「さすが、朱輝さん、お似合いですねぇ」
劉翰と朱輝は劉家豪が娘の雪華を見つけたという町に来ていた。護衛と軍部の装いで町をうろつくわけにはいかないので、二人は町民の服を着ていた。
「では、朱輝さん、今朝、話した通りお願いしますよ。私は、朱輝さんの補助をしますので」
朱輝は劉毅の誘いで軍部に入るまで、町で物乞いをしていた。今でこそ、言葉遣いや礼儀作法、皇族への接し方など問題ないが、軍部に入った当時は、挨拶一つろくにできなかった。
(まさかこんなところで町で暮らしていたことが役に立つとは。しかし、劉毅の弟は末恐ろしいな。皇帝が一目置いているだけはあるな。)
劉翰は父である家豪が雪華を見つけたという話を聞いた時点で、すでに私をこの町に連れて行くことを決めていたという。
「郷に入っては郷に従えとは言いますが、あいにく私には町民のふりはできません。朱輝さんは実際に暮らしていましたのでこれ以上の適任はいません。朱輝さんは昔の自分に戻ってくださればいいのです。あとは私の指示通りにしていただくのみです」
劉翰はそう言って、では行きますので服を脱いでくださいと、なぜ服を脱がされるのか説明もないまま、朱輝は町民に変身させられ、劉家を出てきたのであった。
では、朱輝さんお願いしますと劉翰は朱輝に声をかけた。二人は場所を転々としながら、町行く人に同じ質問をしていった。
「白髪の子供を見たことないか」
「白髪の子供?見たことないな」
「知らねぇな」
「見たことも聞いたこともないぞ」
「そんな子いたら見てみたいわ」
「そんな少女は見たことないな」
劉翰は朱輝の肩を叩き、目配せをして、内密の話ができそうな店に入った。
店に入った二人は、座ってお互いの目を見て、頷いた。二人とも考えていることが一緒であると確信した。
劉翰が話を切り出した。
「間違いなくあの男は、雪華のことを知っていますね」
朱輝は黙って頷き、同意した。
後をつけなくていいのかと言ったが、相手は警戒しているだろうから、今はやめたほうがいいと劉翰は首を横に振った。
朱輝は大きくなりそうな声を抑え、ではこの後どうするのかと前のめりになりながら言った。
劉翰は不敵な笑みを浮かべながら、大丈夫ですと答えた。
「あの男がいた付近で、もう一つの質問をすれば、一発でわかりますよ」
一発でわかるなら、何でそれを先に聞かなかった。先ほどまで町民のふりをしていたせいか、朱輝の口調がいつもより荒っぽく聞こえる。そんなことも気にせず、劉翰は、先に聞いてはいけませんよ、白髪の少女、雪華がいると確信してからでないと、この質問は抽象的なのでと、話を続けた。
「ここら辺りで、特別美しい少女を知りませんか?と聞けばいいんですよ」
朱輝はこいつは何を言っているのだと言わんばかりの顔をして、呆れているのであった。
「ほら、一発でわかったでしょ?」
「本当に一人目でわかるとは」
最初にした問いかけに、"そんな少女は見たこともない"と答えた男がいた近辺で、劉翰が言った通り、もう一つの質問をしてみた。
あぁ、あの店にいるわよと道行く人が指さした先の店、来蘭亭の厨房には例の男がいた。接客している少女が雪華なのだろう。
あれが妹か、もっと近くで見たいと言いながら、物陰に隠れているのに劉翰の体が半分以上見えている。朱輝は必死に劉翰を引っ張って隠している。
(あれが雪華か・・・遠くからではっきり顔は見えないがそれでも美しいとわかる。あれ?どこかで会ったような・・・)
「そういえば、なぜ最初に美しい少女を知らないかと聞かなかったんだ」
朱輝は先にこの質問をしても見つけ出せたのではないかと思っていた。
劉翰は少し笑いながら、それはいけませんよと言って
「美しい少女を知りませんかと聞いて雪華を知らなかった場合、とりあえず思いつくきれいな人を言うでしょう。あの美しい雪華を知っていたら答えは一つでしょうが、知らなかったら複数の美しい少女の答えが出ます。その少女たちに会っていたら、それこそ時間の無駄ですよ。美しい少女ではなく、妹の雪華を探しているのですから。白髪の髪はそれだけで目立ってしまうので、白髪は隠しているとは予想はしていました。この国に白髪の人は二人しかいませんから。それを知られないためにも行動範囲はそれほど広くはないでしょう。現に父が見たというところからあの店までそれほど距離はありません。ですから、白髪の少女の存在を知っているのは木箱から雪華を連れて行った者かその家族かに絞られます。正直、もう少し時間がかかると思っていましたが、こんなに早くわかるとは。白髪の質問で雪華が白髪であることを知っている者を特定し、美しい少女の質問で確実に居場所をあぶり出したのですよ。この方が効率的でしょ?」
(私にはそう言われても理解できない・・・ただ、妹を溺愛しそうなことだけはわかるな)
朱輝は劉翰の頭をぽんぽんと軽く叩いて、微笑んだ。劉翰は不思議な顔で見上げていた。
で、これからどうするんだと劉翰に尋ねたら、満面の笑みで、
「二日後に訪ねてみましょう。そしたら、全て話してくれると思いますよ」
「はぁ?」
朱輝にはやはり劉翰の考えていることが全く理解できなかった。




