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勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。  作者: かませ犬
第二章 世界樹防衛戦

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81世界樹防衛戦Ⅱ

 ルークの先導で崩れた大通りの道を進む。

 大通りを走っている最中でもちらほらと騎士の亡骸が目に映る。それに混じって倒壊した建物の下敷きになって事切れているエルフや、ドラゴンの炎に焼かれた焼死体なんかも散乱している。被害は少なくないな。多分俺たちが関わった中で過去最大と言えるだろう。

 

「ドレイクは王宮方面か?」

「狙いまでは分かりませんが、ドラゴンを引き連れて向かって行くのを確認しています」


 俺たちが今向かっているのは王宮だ。ドラゴンは王都を無差別に襲っているが、それは全てのドラゴンがという訳では無い。全体の半数はドレイクに引き連れられ王宮の方へと向かったそうだ。狙いは王宮、いやミカの話の通りなら世界樹だろう。分かれた半分のドラゴンは騎士を引きつける為に暴れているようだ。


「先の報告だとローウェン卿が何とかドレイクを押さえ込んでいるそうです」

「『聖騎士』ローウェンか」

「はい!ローウェン卿の指示の元、隊を分けて王宮を守る者とドラゴンの討伐に向かう者、国民の避難及び護衛をする者で分かれたようです」


 ───『聖騎士』ローウェン。テルマにおいて最も有名な騎士の名だ。面識自体はないがその名前は嫌でも耳にする。

 俺が『剣聖』を継承した事で比較される事が多かったからだろう。どちらが最強の剣士か暇な者たちが口論しているらしい。どこの世界にもそういう者達はいるんだな。

 ローウェン卿は騎士階級のトップである騎士団長の地位に着く男で、御歳500歳だったか? 質実剛健を絵に書いたような人物のようだ。

 部下にも随分と慕われているらしい。ルークの話にも度々出てきたが、アイドルについて熱く語るファンのような口調だったな。憧れの存在なら仕方ないか。


 妖精の騎士が不在で、薔薇の騎士が半数したいない現状でローウェン卿がいたのはせめてもの救いだ。

 彼がドレイクを抑えてくれてなかったら世界樹は既に奴の手で落ちていた可能性がある。


 ───王宮に近付くに連れ喧騒の音が耳に入ってくるようになった。前から聞こえてはいたが徐々に大きくなっている。頭上に視線を上げれば炎を吐くドラゴンの姿が映った。5体程か。まだいるだろうな。

 何体か倒せるか?


「『狂乱飛燕』」


 俺の持つ魔力の半分をデュランダルに喰わせて剣を振るう。大きさは10m位か?思ったよりデカイな。

 燕の形をした巨大な魔力の斬撃がドラゴンを襲っている。こうして見ると魔力の斬撃というより魔物のように見えるな。燕の形をしているのが原因な気がする。

 ドラゴンが『飛燕』を破壊しようと炎を吐いたが、デュランダルの意思で縦横無尽に動く斬撃は炎を躱してそのままドラゴンの首を切断した。次のターゲットを決めた斬撃がまたドラゴンを襲っていく。


 デュランダルの持つ『解放』の力である『飛燕』は込めた魔力量が多いほど威力が増す。とはいえ外したら終わりなので普段は最低限の魔力しか込める事はない。『狂乱飛燕』ならばデュランダルの意思で動く為外す事はそうそう無いが、如何せん使用魔力量が多い。

 トドメの一撃なんかで多く魔力を込めた事はあったか? それでも魔力の残量を気にして使っていた筈だ。

 今は『マナの泉』のお陰で魔力を気にする必要はないからバンバン使える。先程使った魔力も既に回復している。ミカには感謝だな。


「移動の片手間でドラゴンを倒さないで貰っていいですか? 俺たちがあんなに苦労して戦っているのがバカみたいにじゃないですか」


 やめろ、そんな化け物を見るような目で俺を見るな。ルークの視線から逃げるように頭上を見れば空を飛んでいたドラゴンの姿が既にない。代わりに仕事しましたよ!とアピールするようにクルクルと回る飛燕の姿がある。

 仕事が早いな流石デュランダル先生だ。

 俺たちが向かっている方向からまたドラゴンが向かって飛んできた。その姿を認識して『飛燕』がドラゴンへと肉壁する。炎を躱しながら首を切断した斬撃は込めた魔力が無くなったのか飛散した。

 ものを言わない亡骸となったドラゴンが音を立てて落下する。だから俺を見るな。俺というよりデュランダルだ。確かに俺が放った技ではあるがデュランダルの働きが大きいのは確かだ。


 それにしても消えるのが早かったな。込めた魔力によって時間も異なるのか? 長くなるかと思ったが逆に短くなるようならそこも計算に入れて使わないといけない。

 時間がある時に検証してみよう。


「カイルよ、そんなにバンバン魔力を使って大丈夫か?」

「魔力の事なら心配しなくていい。理由については後で話すよ」

「分かったのじゃ!」


 ダルの視線が俺の左手に向かっていたな。エクレアも同様だ。何か言いたげだが我慢してくれたようだ。左手の薬指に指輪をはめている理由を追求してきそうだな。これは不可抗力なので素直に言えばいい。


 ルークの先導で走ること数分、大通りを抜ければ目的地である王宮の姿が俺たちの視界に映った。意外な事に壊れた様子はない。壮麗な宮殿だな。王が持つ権力をこれでもかと象徴するような建物だ。

 ドラゴンが襲っていると聞いていたが、ここまで王宮に被害がないとなるとやはり世界樹が狙いか?

 俺の疑問に答えるように1匹のドラゴンが王宮に向かって炎を吐いているのが視界に映った。だが、見えない障壁のようなモノが炎を止めている。なるほど王宮にも結界を張っているのか。道理で無事な訳だ。


「義兄さん!」


 聞き覚えのある声の方へ視線を向ければこちらに走ってくるエルフの美少女の姿がある。良く見なくても分かる。セシルだ。怪我はないようで安心した。


「無事だったか?」

「はい!これでも僕は強いですからね!」


 ムフーっと得意げな顔をしている。本当に男と思えない位に可愛いな。

 セシルの言葉通りなのだろう。王宮の近くにドラゴンの死体が幾つかある。あれ僕が倒したんですよっと指さしてドヤ顔してるから間違いないだろう。

 

「そうだ!義兄さん!奴らの狙いはどうやら世界樹みたいです!手を貸してください」

「世界樹を守る事に異論はないさ。行こう」

「はい!付いてきてください」


 王宮に向かって炎を吐いているドラゴンを放置しておくのも面白くないので、先程と同じように魔力を半分を喰わせた『狂乱飛燕』を放っておく。後はデュランダルが仕留めてくれるだろう。

 セシルが前を走るので付いて行く。金色の髪が風で靡いている。


 王宮から世界樹まではそれほど距離は離れていない。この位置からでも既にその壮大な姿を見ることが出来る。ハルジオの入口で見た時も大きいと思ったが近くで見ると樹というより壁だな。

 王宮の方が殆ど被害がないのに対して、世界樹の近くには巨大なクレーターが無数に存在している。


「この辺りは沢山木々が生えていたんです。全部壊されてしまってますね」


 ポツンポツンと木が生えているのは分かるが戦闘の余波で吹き飛んだのか、荒地に近い状態になってしまっている。

 ここまで来ると人影が見えた。立っているのは5人程。倒れている者の方が多い。空には世界樹に対して炎を吐くドラゴン。王宮と同じように見えない障壁が世界樹を守っている。

 ドラゴンの数はそれほど多くないな。ローウェン卿達が何体か倒したのだろう。数は7体か。


「ローウェン卿!」


 ルークの悲痛な叫びに彼の視線の先を追うと、1人の騎士が槍によって貫かれていた。

 槍を持つのは赤い人影。ドレイクか!

 その姿を認識するとほぼ反射的にドレイク目掛けて『飛燕』を放っていた。簡単に壊されないように魔力を半分喰わせた。

 追撃しようとしていたドレイクが迫ってくる『飛燕』に気付き上空へと退避した。

 ルークとその仲間の騎士が倒れた騎士───ローウェン卿の元へと駆けて行った。付いて行こうと思ったが、ドレイクの次の標的はどうやら俺達らしい。


「ほぅ、バージェスJrを倒したのか」


 相変わらず余裕綽々といった様子で俺たちの近くに降りてきた。驚いた様子はない。バージェスJrが倒される事もドレイクからすれば想定内という事か。


「お前たちの狙いは世界樹か」

「この現場を見ればバカでも分かるだろう。俺を止めるか勇者パーティー?」


 出来るものならしてみるといい。言外にそう言っているように見えた。仲間を見れば皆が武器を構えている。


「止めるさ。その為に来た」

「…………」コクコク。

「ぶっ倒すのじゃ!」

「世界樹に悪さはさせません!」


 ドレイクが笑った。俺たちの回答に満足するようにドラゴンのような口を大きく開いて笑っている。戦場に不釣合いな笑い声が響いた。楽しそうな笑みを浮かべたままドレイクが槍を構えた。

 それだけで空気が変わる。凄まじい威圧感と殺気だ。

 

「ならば止めてみろ!赤き竜の化身たるこの俺を!」

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