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勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。  作者: かませ犬
第二章 世界樹防衛戦

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80.世界樹防衛戦Ⅰ

 ───ミカに対して色々と文句を言いたい所だ。それをすると長くなりそうなので、気持ちを落ち着かせる為に深く息を吸って吐く。空気を吸った時に体中を魔力が巡るのが分かった。

 一呼吸で魔力が全快したのか?蓄積の分を優先し使っていたが、それでも半分くらいは魔力を消費していたと思う。それが一呼吸で全快か。かなりぶっ壊れ性能の装備じゃないか、これ?

 魔法使いが喉から手が出る程欲しい代物だろう。彼らは常に魔力の事を気にして戦闘や研究をしているからな。

 これだけの回復量があると、その気になれば一日で蓄積を多く貯める事が出来るんじゃないか?絶対量はそれで擬似的だが増やす事が出来る。1日に何度もあの疲労感を味わいたいとは思わないが。アレ、本当にキツイからな。

 蓄積がダイエットに効くと喜んでいたタケシさんはやっぱり頭が可笑しい。


「そういえば気になっていたんだが、世界の時を止めても大丈夫なのか?」


『1回や2回なら問題ないかな? あんまり多様すると世界の力の流れが乱れるから、天変地異が起きたり大陸が海に沈んだり色々と問題が起きると思うよ』


「軽く言わないでくれ」


『そこら辺は弁えてるから時止めを使ったのは今回含め2回だけだよ!一回目の時はルドガーの時だね。放置してたらルドガーが死ぬ所だったから時を止めて助けたの』


 という事は前回使ったのはかなり前だな。それだけ多用が厳禁という事だろう。事態が一刻を争うのも理解出来た。

 ───世界樹の危機か。この国に来る時はそんな事を想定していなかったな。加護を解除する為にテルマに来た。待て、加護の解除には世界樹の力がいるとセシルが言っていたな。余計に不味いじゃないか!


「時を止めている間動けるのは俺だけか?」


『カイル君だけだね』


「今のうちにサイクロプスやドレイクに攻撃したらどうなる?」


『何も起きないかな? 世界の現象そのものが止まっているから、カイル君が剣で切りつけてもそれが反映される事はないよ。仲間の女の子にエッチな事をしようとしてたけど、ピクリとも動かなかったでしょ?』


「そんな事はしていないが」


 流石に動かない仲間に対して劣情を抱くほどクズではない。少し試してみるか。時が止まっている以上、焦る事はない。騎士を棍棒で殴り飛ばしたまま固まっているサイクロプスに近付き、デュランダルに魔力を込めて切り付ける。

 カキンっと弾かれた。体に当たったが傷ついた様子はない。剣がぶつかって弾かれただけだ。


『時が止まった状態だと何をして意味はないよ。物は壊れないし、見ての通り殺す事も出来ない。せいぜい出来るのは移動くらいじゃないかな?』


 我ながら姑息な事を考えると思う。時が止まっているうちにドレイクを倒しておけばいいんじゃないかと思ったがそんな簡単にはいかないようだ。


「ミカ、俺の加護を解除するには世界樹の力が必要か?」


『必要だね。世界樹の持つ浄化の力が必要になるよ。聖剣を使って浄化の力をカイル君の体に導いて魂を浄化する。魂に刻まれた加護を解除出来るのはそれしか方法がないんだ』


「となると世界樹は守らないといけないな」


『うん!だからカイル君に守って欲しい。君ならあの竜人を倒せると思う』


「最後に1ついいか? ミカは俺の仲間に魔王が混ざっているって事を知っているか?』


『下界を見ていたからね。当然知っているよ!カイル君が望むなら誰が魔王か教えてあげる』


 正直に言うと期待はしていなかった。だからこそ、ミカの返答に思わずゴクリと唾を飲んでしまった。自力で見つけ出せてないのは恥ずかしい話だが、誰が魔王か分かれば後は証拠を探すだけだ。俺の胃の負担はかなり楽になる。


「教えてくれ」


『うん。いいよ。魔王は君の仲間の───だよ』


 彼女が自分の名前を俺に伝えようとした時と同じだ。ノイズが走るようにその名前の部分だけが聞こえなかった。ミカも思いもしなかった事態らしい。へ?あれ?と戸惑いの声が上がっている。大地が揺れている。よく分からないがミカが怒っているらしい。


『あのクソアマぁぁぁ!またくだらない小細工しやがって!!せっかくカイル君のラブポイントを稼げるチャンスだったのに!!!ふざけんなよ!』


 怒声と共にバンっと何かを叩く音も聞こえた。怒りのあまり台パンでもしてるのか? というかラブポイントってなんだ?そんなものはないぞ。ゲームじゃあるまいし。

 ミカの反応からしてまたミラベルが何かやったんだな。魔王の名前を俺が知ると不都合という事か。まぁ、それについても後で考えるか。

 聞きたい事はだいたい聞いた。俺の加護を解除する為にも動かないといけない。ミカに頼んで再び時を動かして貰わないとな。


「怒っている所すまない。時を動かしてくれるか? 世界樹を守りに行ってくる」


『今の時が止まった状態で行けば楽だよ』


「急に俺がいなくなったら仲間が戸惑うし、サイクロプスから騎士を救うわないといけない。このまま頼む」


『分かった!分かってると思うけど同じように時を止める事はもう出来ないからね!カイル君を信じるよ!世界樹を守ってね』


「任せてくれ」


『うん!それじゃあ時を動かすね。急に動く訳じゃないから安心して準備していて。今から60秒後に再び世界は動き出すよ』


 60秒後か。仲間が困惑しないように元々いた場所に戻る。時が動いた時にするイメージは既に頭の中で出来ている。

 急に動き出しても対応は出来るだろう。


『そうそう。カイル君に伝言というか、エクレアちゃんに伝えておいて』


「何をだ?」


『聖剣の力をあまり乱用しないようにって!あれ、魔力じゃなくて星の生命を使ってるから考え無しにバンバン使ってると下手したら世界が滅びるよ!

ちょっと使う位なら影響はないけど、一日に何十回と聖剣の力使ったら色々と影響出るから気を付けて!』


「は?」


 ───時がまた動き出す。

 うわぁぁぁと叫び声を上げて騎士が殴られた勢いのまま飛んでいく。とてつもない爆弾を最後に投げつけられた気もするが今は切り替えろ!

 魔力で肉体を強化する。ミカから貰った『マナの泉』のおかげで魔力量を気にする必要はない。普段はしない体全体に魔力を流して強化する。同時に使った魔力が一瞬で回復した。これならずっと魔力で強化していても問題はないな。

 『マナの泉』の効果を改めて実感していた為予定より1歩出遅れてしまったが、地面を蹴ってサイクロプスとの距離を詰める。


「『空牙一閃』」


 騎士を殴り飛ばしたサイクロプスが真っ二つに両断にされ、驚いた表情で地面に落ちた。仲間がやられた事で激昂しているサイクロプスに向けてもう一度『空牙一閃』を放つ。

 魔力によって伸びた刀身が俺とサイクロプスとの距離を関係ないとばかりに、その肉体を切り裂いた。体感で言えば4分の1ほどデュランダルに魔力を喰わせた。それでも失った魔力は一呼吸で回復する。

 これが神器の力が。想像より遥かに強力だな。魔力を気にしなくていい分、今までと違う戦い方が出来るな。


「おぉ!カイルの動きが早すぎて見えなかったのじゃ!」

「……………」コクコク。


「だから、俺たちが苦労するサイクロプスをそんなにあっさり倒さないでくれますか?」


 ダルが感心するように拍手をする中、聞き覚えのある声がした。こちらに近付いて来る騎士を見ればそれがルークである事が分かった。

 無事でいてくれた事に安堵しつつ、そんな化け物を見るような目で見ないで欲しいと心から思う。そこにいるエクレアを見てくれ。サイクロプスより遥かに強い魔族の四天王を一方的に倒してたぞ。

 俺が化け物ならエクレアはなんだ?天災とかそんな扱いになるんじゃないか?


「軽口叩けるくらい余裕があるなら良かったよ。無事で何よりだ」

「カイル殿がサイクロプスを倒してくれてなかったら声すら出せなかったですよ。ありがとうございます」

「それで今はどういう状況だ」

「サイクロプスは今カイル殿が倒したやつが最後の筈です。恥ずかしい話ですが、侵入してきたサイクロプスは『薔薇の騎士』が対処しました」

「薔薇の騎士か」


 ここに来るまでに何体かのサイクロプスの死体を見かけた。国の一大事に当然、薔薇の騎士が動いた訳だ。

 これで残りの敵は『赤竜』のドレイクと引き連れてきたドラゴンか。空を見上げれば少なくとも10匹近いドラゴンが悠々と空を飛び、炎を吐いて街を破壊している。

 一匹のドラゴン目掛けて雷が放たれたのが見えた。雷がドラゴンの羽を貫き、バランスを崩してドラゴンが墜落していく。魔法耐性がない分、ドラゴンの方が対処しやすいようだな。


「残りはドラゴンか」

「10体程は倒したと思いますが、まだ数が多いです。空を自由自在に飛ぶドラゴンに対処する為、1箇所に集まらず分かれて行動していますが我々では手に負えないのが現状です」


 申し訳なさそうにルークが頭を下げた。拳を強く握り締めている。思い詰めたらダメだ。

 ルークの肩にポンっと手を置いて笑いかける。


「まだ間に合うさ。それに俺たちが来た。この国を救おう、協力してくれるかルーク?」

「はい!任せてください!お前達も行けるな!」


 ルークの言葉に力強い返事が返ってきていた。サイクロプスに殴り飛ばされていた騎士も、決意に満ちた顔で声を上げていた。彼を回復している騎士が動くなと怒鳴っており、小さくなる騎士の姿に思わず笑ってしまう。

 ダルとエクレアを見ると2人も笑っている。悲しんだり後悔するのは全てが終わった後だ。今は救う事を考えろ。


「さぁ、行こうか!」

「おぉ!なのじゃ!」


 ドラゴンの対処をしつつ、世界樹に危害を加えようとしているドレイクを倒さないといけない。簡単な事ではない。それでもやらないといけない。この国を、世界を守る為に。

 






 ───世界樹防衛戦、開幕。

 

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