表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。  作者: かませ犬
第二章 世界樹防衛戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/160

71.不穏な影

「王都まで後どれくらいじゃ?」

「国境は既に超えてテルマの領内ですが、それでも途中で休息を挟みながら向かうので後10日程かかるかと」

「前回クレマトラスに向かった時より日数がかかっておるのじゃ!」

「単純な距離の問題もあるが、今から『デケー山脈』を超えないといけないからな。山越えとなるとどうしても日数はかかるし魔物の襲撃も増える」

「教会の自治領を経由してから行けば安全なルートがありますけど、どうしても遠回りになります。今回は護衛の騎士を付けているので山越えで向かう事にしました」


 大陸の中心地にあった町『マンナカ』からクレマトラスに向かうのはそれほど日数はかからない。山が少なく平坦な道が続くからだろう。教会の自治領という事もあり道の整備がしっかりされているのもあるか。初代法皇ルドガーの方針でそうなっているようだ。そこら辺は転生者らしいな。

 この世界は道の整備に力を入れている国は少なかったりする。特に国境近くの道はあまり整備されていない。今は魔族の脅威で互いに協力をしているが、正直何かのきっかけがあれば戦争を始めても可笑しくない。それくらいの緊張感はある。


 特にエルフの領地を奪って建国したタングマリンとテルマの関係は決して良好ではない。ドワーフが作った魔道具の存在があるから両国で国交があるだけだ。

 最初に戦争を始めるとすればその2国だろう。タングマリンとテルマの国境沿いにある『デケー山脈』は天然の要塞だ。対タングマリンの防衛線とも言える『デケー山脈』をテルマが開拓して整備する事は今の所ないだろう。

 

 険しい山が続く『デケー山脈』を超えるとなるとそれなりに日数はかかる。それでも自治領を経由してからテルマの王都に向かうよりは早く着くとセシルは想定しているようだ。

 山越えを想定して騎士を雇ったようだな。道中で魔物が襲ってきても騎士が対応していたので俺たちが出る幕はなかった。だが、『デケー山脈』に入ってからは俺も魔物の相手をした方が早く着くかもしれないな。

 タングマリンの道中は楽させて貰ったし、体が鈍らないように動くとしよう。女性ばかりで肩身が狭いのもあるが。





「それでデイブはどうしたんだ?」

「妻に浮気の現場をが見られていたからな。変に言い訳せずに謝罪したよ。浮気相手と一緒にボッコボコにされたがどうにか許してくれたよ」

「子供いたから許してくれた感じだったよな!それ以来こいつ嫁さんに頭が上がらないから仕事が終わると直ぐに帰るんだ!」

「もう家庭内で俺の立場はないよ。何かあれば浮気の事を言われるからな」

「俺も気を付けるか」

「そうした方がいいぞ、色男!兄ちゃんに好意を持っている女の子は多いようだし気を付けな」


 ハハハハっと馬車を護衛している騎士達が笑い、それに釣られて俺も笑う。

 『デケー山脈』に入ってからは俺も外に出て一緒に魔物の対応をしていた為か気付いたら仲良くなっていた。エルフの騎士というのもあって距離を感じていたが、接しているうちに騎士の方から話しかけてくれるようになった。

 今ではたわいのない雑談を交わす仲だ。

 共に険しい山を超えたのが大きいと思う。魔物の多さに文句を言いながら山を進んだ。俺が馬車を出てから魔物の対処が楽になったらしい。セシルにはお金で雇っているのだから義兄さんは働く必要がないとブツブツ言われたな。

 彼女が言っている事は正論ではあるが、出来れば男である俺の事を考慮して欲しかった。


「義兄さん、次の町で休息を取る予定です。そこから王都『ハルジオ』までは1日あれば着くかと」

「わかったよ!」

「義兄さんは凡人なんですから、無理しないでくださいね!」


 馬車の窓を開けて顔を覗かせるセシルに手を振って返事をする。周りにいる騎士が『兄ちゃんが凡人なら俺たちは何だ?』『凡人以下だったら愚者とかか?』『俺たちは愚者の集まりだったか!』と楽しそうに会話をしている。

 正直に言おう。同性と一緒に行動している方が気分的に楽だ。見目麗しい女性達と旅をするのは目福ではあるが、気を使うからな。出来れば勇者パーティーにも男の仲間が欲しかった。


「ん?あれは『妖精の騎士』だな。随分と急いでいるが本国で何かあったか?」

「方角的に『聖地エデン』の可能性はないか?魔族に襲われたばかりだ。また何かあったんじゃないか?」

「結構な数が向かっていったな」


 騎士たちの視線の先を追えば馬に乗った騎士達が土煙を上げながら走り去っていくのが見えた。確かに数が多かったな。こちらに見向きもしなかった。騎士たちが言っていたように何かあった可能性が高いと思う。

 『妖精の騎士』はエルフの騎士の中でも特に優れた者を集めたエリート部隊だった筈だ。テルマの最高戦力が『薔薇の騎士』、それに次ぐ戦力とされるのが妖精の騎士だ。

 そんなエリート部隊が馬を走らせて急行している姿に胸騒ぎがする。聖地エデンに向かっているのだとすれば、また魔族によって騒動が起きた可能性が高い。

 『赤竜』のドレイクによって法皇が殺されたばかりだ。2度目があっても不思議ではない。聖地エデンにいるノエルの事が心配だ。とはいえ今の俺たちに出来る事はないからな。妖精の騎士と接触出来ていたら話は早かったが、こればかりは仕方ない。町で少しでも情報を収集出来ればいいが。





 ───それから半日後、町に到着した俺たちは1日しっかり休息を取る事を決めた。セシルの想定よりこの町に着くのが早かったのもあるが、道中で見かけた妖精の騎士の様子から何かしらの騒ぎが起きていると判断。念の為、何が起きても対応出来るようにと疲れを取るために1日ゆっくり休む事になった。

 それは護衛に着く騎士の皆も同じ意見で、妖精の騎士が出動する程の自体ならかなり大きな騒動だろうと。そこら辺の事情は間違いなく俺より詳しいので、騎士の意見を尊重したい。


 馬車に乗っていたダル達も長時間揺られて体のあちこちが痛いらしく、特に反論もなく宿屋の部屋で既に休んでいる。

 もう少しインフラが進んでいたら快適な旅だったな。タングマリンの王都を出てからこの町に着くまでに10日以上かかっている。山越えで思った以上に日数を取られた。

 前世のように一直線に進めるトンネルがあれば話は別だが、整備のされていない山を登るのは思ったよりキツかった。岩山だからまだマシだったか?木が生い茂っていたら馬車が進めなかったな。

 魔法で馬と馬車を強化していたとはいえ、その進みは早いとは言えない。魔物が出てこなかったら後2、3日は早く着いたと思う。まぁ無事にここまで着けたので良しとしようか。飛行機や新幹線でスムーズに移動出来た前世が懐かしい。

 

 ───町についてから住民の人に話を聞いてはいたが、が欲しい情報は手に入らなかった。それでも分かった事が1つかある。

 ドレイクによって法皇が殺された事で聖地エデンの警備をもっと厳重にしようと大臣から意見が出たらしい。賛成多数で採用されて、最高戦力である薔薇の騎士の半数が聖地エデンに派遣された。あくまでも次の法皇が決まるまでの期間限定で、法皇が決まり次第薔薇の騎士は本国に帰還。入れ替わる形でテルマに仕える騎士を派遣する予定だそうだ。

 妖精だったり薔薇だったりと、自分達を神聖視するのが好きな種族だなと改めて思った。神に愛された種族というのは強ち間違ってはいないだろう。神に世界樹を守護するように命じられたのはエルフだけだ。

 神の声を聞くことが出来る神官を多く輩出しているのもエルフ。自分たちが選ばれた種族だと思うのも無理はない。その分、他の種族から嫌われているが。


 ───話を戻そう。既に聖地エデンには薔薇の騎士が半分だが派遣されている。大抵の事態には彼らで対応出来る筈だ。

 妖精の騎士が向かったのが聖地エデンであるならば、薔薇の騎士だけでは対応出来ない程の大きな騒動が起きた事を差す。やはり四天王絡みか?

 法皇の死で教会の内部は大きく揺れている。まだその騒ぎを治める事は出来ていない。そこに四天王が襲撃を仕掛ければ、聖地エデンが魔族の手に堕ちる可能性がある。いや、もしかしたら既に聖地エデンが戦場になっているかも知れない。


「無事でいてくれよ」


 聖地エデンに滞在するノエルを思うと心配で仕方ない。

 俺たちがするべき事は王都ハルジオに向かう事。俺の加護を解除する事も大事だが、魔族の襲撃があるのならそっちを優先するべきだ。情報を得て聖地エデンに行く必要があるなら急行しよう。

 妖精の騎士を見た時からずっと胸騒ぎがしている。こういう時の嫌な予感ほどよく当たる。

 懸念事項が1つあるのも胸騒ぎの原因だろう。今テルマには戦力と呼べるものはどれくらいいる?最高戦力である薔薇の騎士は半分派遣され、次点の戦力である妖精の騎士も聖地エデンに向かった可能性が高い。

 魔法使いが多い国ではあるので、戦力はそれだけではないが万が一魔族の襲撃があった場合に対応仕切れるだろうか?


「鳥か?」


 不意に頭上を大きな影が通った。鳥かと思ったが明らかに大きい。見上げれば赤い点の様なものが過ぎ去って行くのが見えた。俺の視力ではハッキリと確認出来なかったが翼の様なモノは見えたな。赤い翼か。鳥にしては大きいが、鳥獣種の魔物にしては小さい。恐らくドラゴンでもないだろう。





 ───赤い翼か。まさかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ