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勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。  作者: かませ犬
第二章 世界樹防衛戦

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68.名探偵セシル

 2人の会話をしっかりと聞いてなかったのが悔やまれる。何故、ダルは怒っているのだろうか? 聞いたら余計に怒られる気がするな。どうやって対応したらいいだろうか?

 ダルに怒られる要素はなんだ? 基本的に彼女が怒る事は少ない。大体のことには寛容だ。

 一緒にセシルがいる事も含めて考えるべきだ。考えられる要因は2つ。ノエルとの婚約がダルに伝わったか、俺がエクレアとサーシャとトラさんと肉体関係を持った事がバレたか。

 改めて考えると3人、婚約者であるノエルを含めると4人と関係を持っている事になる。やはり俺の股間の相棒をどうにかした方がいいんじゃないか?

 デュランダルに相談しても仕方ないし、先生に相談してみようか。前世は教師だったと聞く。もしかしたらそういった相談を受けた事があるかも知れない。


「ノエルと婚約関係にある事か?」


 2つの内、まだ比較的に確認しやすい方で反応を見てみる。俺が聞けばダルの眉間に力が入るのが分かった。怒ってるな。多分これだ。

 口は1文字のまま明らかに怒ってますよって表情でこちらを見ている。隣に座っているセシルは俺と目を合わそうとしない。味方という訳ではないだろうな。

 むしろダルの方に付きそうだ。2人は年齢が同じという事もあってか良く話しているのを見掛ける。付き合いとしては浅いが、それでも親しくはなっているだろう。


「そうだな、ダルに言ってなかったのは俺の責任だ」


 ダルは変わらず。何かしら反応してくれた方が助かるのだが、このままだと俺から全部話した方がいいか。


「ダル。俺はノエルと婚約している」


 ピクッとしたな。表情が僅かだが変化した。眉が下がっているな。


「魔族の問題が解決したら結婚するつもりでいる」


 今度はセシルもピクッと反応した。2人からしたら受け入れ難い話になるんだろうな。ダルは唇を噛み締めている。怒りより悲しみの方が強いのかも知れない。目元に涙が溜まってきている。罪悪感が凄いな。


「ダル…、いやダルフィア」


 彼女の名前を呼べば泣きそうな表情でダルが俺を見る。


「すまないが、俺はお前の好意に応える事は出来ない」

「……………」

「もっと早く言うべきだったな。すまなかった」


 ダルに頭を下げる。その際に赤い瞳から涙が零れていたのが見えた。泣かせてしまったな。


「何時、ノエルと婚約したのじゃ?我の告白の後か?」


 ダルの声に反応して頭を上げれば手の甲で涙を拭う姿が視界に映った。ダルからすれば到底納得出来る話ではないのは分かっている。プロポーズまでしたのだ、後は俺を振り向かせるだけだど豪語していたからな。

 気付いたら意中の相手に婚約者が出来ていたなんて俺なら耐えられないだろう。偽りなく答えるべきだ。それがダルへの誠意だ。


「いや、それよりずっと前だ」

「なら、何故我の告白を断らなかった!浮かれていた我はまるで道化ではないか!?」


 涙声だ。普段見せないダルの姿に思わず歯を噛み締める。彼女の言う通りだ。ハッキリと断るべきだった。いや、待て断る以前に婚約していた事を忘れていたよな。あの時点だとどうしようもなくないか? トラさんと関係を持ってしまったのはダルの告白の後だから、それは俺が悪い。


「忘れていたんだ、ノエルとの約束を。13年前に婚約した事を」

「13年前…」

「義兄さんにその事で聞きたかったです!13年前に父さんが2人に祝福を授けたのは聞いてます。

義兄さんはその時から姉さんを愛していたのですか?」


 今まで黙っていたセシルから思わぬ質問が飛んできた。さて、なんて答えるべきだ。今ノエルを愛しているかと問われれば愛していると即答は出来る。

 13年前はどうだ? 15歳の時だ。自分の意思なんてまるで聞かずに祝福を受けていたな。押し倒して強引にキスしてきたノエルの、光が消えた目が怖った覚えがある。ミラベルに記憶を封印して欲しいと頼むくらいトラウマになっていた。

 13年前ノエルを愛しているかと聞かれれば、NOと答えるしかない。好意より恐怖の方が強かっただろう。

 とはいえその事を正直に答える訳にはいかない。何故なら俺はデュランダルを持って来ている。つまり、現在進行形でノエルに盗聴されているのだ。やっぱり外すべきだったか!

 今になって後悔している。こういった質問を想定していなかったな。


「13年前か」

「そうです!13年前です。義兄さんは15歳!姉さんは7歳です!今の2人なら納得出来ますが昔だと姉さんが幼過ぎるのでずっと前から疑問に思ってました!」


 うん。正しくその通りだと思う。今の2人の関係なら違和感はないが、13年前だとノエルは幼女だ。前世で言うなら高校生が小学生を愛していると言ってるようなものだ。犯罪臭がするぞ。冷静に考えたら有り得ない話だもんな。

 7歳の幼女と15歳の少年に婚約者として祝福を授ける? 正気ではないな。普通の神官ならもう少し2人が大人になってから祝福を受けるように進めるだろう。

 セシルの言葉の意味を理解したのか、ダルの涙が引っ込んでいる。悲しそうな表情は変わらないが真っ直ぐに俺を見つめている。

 2人の視線が俺を貫く。視線って痛いんだな。質問に答えろと目が言ってる。嘘を許してくれる感じではないな。


「嘘は言えないよな。13年前だ、流石にノエルを恋愛対象に見てなかったよ」

「なら!なんで姉さんと婚約したんですか!?愛しているから祝福を受けたと思っていました!」

「そうじゃ!そうじゃ!」


 まるで尋問じゃないか!?言葉が強いぞ2人共。さて、どう答える。どっちにしても角が立つな。俺が思うに大事なのは過去ではなく現在(いま)だと思っている。ノエルに対するフォローは可能だ。愛しているという思いには偽りはない。

 2人を納得させる為にも嘘偽りなく話すべきだ。1番悪いのはノエルの父(あのおっさん)だしな。


「嘘偽りなく答えるなら、祝福に同意はしていないんだ。と言うより確認されなかった」

「どういう事じゃ?」


 意味が分からないと首を傾げるダルと対照的に言葉の意味を理解したのか、顔を歪めるセシル。察したらしい。


「父さんですか?」

「そうなるな。今でも親バカなのかあの人は」

「はい。今も同じです」


 苦虫を噛み潰したような表情だ。俺とのやり取りで答えを導き出したらしい。やはり彼女は頭がいい。


「どういう事じゃ?2人だけで納得しないで欲しいのじゃ」


 さて、何て答えるべきだ。言い方によってはノエルの父を非難しているように聞こえる筈だ。一応将来の義理の父だ、尾を引くような発言はしたくないが。


「ダルさん、僕の姉さんと父さんがやらかしたみたいです」

「どういう事じゃ?」

「義兄さんの発言から、望んで祝福を受けた訳ではないのが分かりました。そうですね義兄さん?」

「祝福を望んで受けてはいないよ」

「やっぱりそうですよね!」


 うんうんと頷くセシル。良く少ないヒントで答えを導き出すな。魔王探しも彼女がした方がいいんじゃないか?俺よりずっと早く魔王を見つけ出しそうなんだが…。


「もう1ついいですか?」

「なんだ?」

「父さんが祝福を授けたのは姉さんの為ですか?2人の為ですか?」


 2択ではあるが、どっちか分かって聞いてるよなセシルは。


「ノエルの為だな」


 俺の答えにセシルがため息を吐いた。身内のやらかしだからな、気持ちを察する所はある。とはいえ俺から言うのは少し違う気がするな。


「姉さんが義兄さんとの婚約を強請って、父さんが義兄さんの意志を確認せずに祝福を行った。そういう事ですか?」


 名探偵か。なんでそんなにハッキリと分かるんだ。


「どういう経緯だったか話した方が良さそうだな。概ねセシルの推測で間違いはないが」

「教えてください」

「そうじゃ!我も気になるぞ」


 正直に話すべきと判断して、2人に少し長くなるぞと断りを入れる。2人が頷くのを確認してからノエルとの出会いから話した。ダルは昔聞いた事があったのであの時の話かと言っていた。セシルも聞いた事があるような感じだったので、ノエルか父から聞いたのだろう。

 祝福を受ける事になった経緯を話した時に2人の顔が歪んだのが分かった。なんというか色々と言いたい事があるようだ。


「という経緯で祝福を受けてノエルと婚約者になった」


 13年前のやり取りを思い出しながら話したが、やはり今思い返しても7歳の幼女がする事ではないな。それに押し負ける俺も俺だが…。

 2人を見るとなんというか怒っているのが分かる。その矛先は俺ではなさそうだな。


「ズルいのじゃ!それはあまりに卑怯ではないか!職権乱用じゃ!」

「そうです!これは抗議するべきです!教会の条約にもしっかり書いてあるので、難しくないと思います!

姉さんには悪いですが、神に願い出て祝福をナシにして貰うべきです」

「そうじゃ!そうじゃ!」


 2人とも怒り心頭だな。怒りの矛先はノエルかその父か、どっちもありそうだな。2人からしたら恋敵がズルをしたように見えるのか。

 俺の意志を確認せず祝福を強要した形だからな。2人が俺の為を思って怒ってくれてるのは嬉しいが、祝福をナシにしようと言う考えは今の所ない。

 ノエルが何をするのか分からないという怖さもあるが、それ以上に俺を一途に思ってくれているノエルを愛おしいと思ってしまった。

 出来れば彼女の思いに応えたい。


「悪いが俺は祝福を受け入れるつもりだ」

「何でですか!?今なら祝福をナシにだって出来ます!13年前に不当に行われた祝福を重んじる必要はないですよ」

「そうじゃ!カイルが優しいのは分かっておるが、嫌なものは嫌と言うべきじゃ!」


 2人の剣幕に押されそうになった。余程に気に食わないらしい。恋する乙女は強いな。それでもはっきりと伝えるべきだ。


「確かに13年前の祝福は俺の望むものではなかった…」

「なら!」

「けど、俺は今のノエルを愛おしいと思っている。心から愛している。彼女と結婚する事に不服はない。いや、結婚したいと俺自身が思っているんだ。だから祝福をどうこうするつもりはない」


 俺がはっきりと答えるとダルの表情が歪んだ。唇を噛み締めているのが見えた。彼女にとって納得出来る話ではないのだろう。それでも必死に納得しようとしているのが分かる。すまない。ダルに辛い思いをさせてしまっている。

 セシルの方を見れば表情が消えている。代わりにこちらを見る目線は鋭く、なんというか責められているのがよく分かる。どういう事だ?


「義兄さんが姉さんを愛しているのは良く分かりました」

「あぁ」

「それで、心から愛する婚約者がいるのに義兄さんは他の女性と肉体関係を持ったのですか?」

「は?」


 2人の視線が突き刺さる。視線に物理的な力があったなら俺の体は既に穴だらけだろう。

 強い非難の眼差しだ。

 さて何て反論しよう。いや、無理だな。弁明出来る気がしない。浮気した俺が全面的に悪い。


 ───やっぱり股間の相棒を切り落とすべきか。

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