表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。  作者: かませ犬
第二章 世界樹防衛戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/160

46.サーシャの告白

 ───俺とサーシャは今、酒場の二階の個室に場所を移している。というのも酔っ払いのテンションがアップして鬱陶しくなったのと、サーシャが俺と話したい事があるという事でだ。

 いつものノリで店主に部屋を聞いていたので、もう何度かお世話になってるのだろう。移動する時に俺に対してブーイングが飛んできたので、大人気ないが殺気を飛ばして大人しくして貰った。萎えるわーとか言いながら飲み直し始める酔っ払いを見て俺も萎えた。ふざけんな。


「それで何時、セシルの事に気付いてたんだ?」

「タングマリンに着くまでの道中ね。流石に会ったばかりでは分からないわよ」


 何時ものように収納の魔法で酒瓶を出して酒器にお酒を注ぐ。今日はガラスで出来ている少しオシャレなやつだ。2人分準備しているから1つは俺の分か。飲みながらって事だよな?


「とはいえあの子はまだ分かりやすいわよ。女物の服着てたしね」

「それもそうか」


 初めて会った時からセシルは女性ものの服を着ていたし、髪飾りなどのアクセサリーを付けていた。あまりに似合っているのもあって最初はノエルに弟と説明されて、え?って間抜けな声が出た。

 それはまぁパーティーの仲間全員に言えることだから構わないが。普段表情に出ないエクレアも驚いていたな。


「エルフは1度心を開いた相手に執着するって聞いた事ある?」

「一応な」


 デュランダルから改めてエルフの話を聞いて、過去のノエルが浮かんだものだ。13年前にその事を知っていたら今と違っただろうか? いや、ノエルを助けていたのは変わらないだろう。それがきっかけなら何も変わらないな。それに思う事はあるが不満な訳ではない。


「でもそれはあくまでも異性に対してよ。同性に対しては軽口叩き合う程度の関係性に収まることが多いわ。生涯の友ってくらい仲良くなった者がいない訳ではないけどね」

「それでセシルの距離感から分かったのか」

「あの子の場合はカイルを見る目で分かったかしら? 異性として見てる感じだったわ。女の顔してたもの」


 クスクスと笑いながらお酒を飲んでいる。俺は笑えないので黙ってお酒を口に運ぶ。辛味が強いな。喉越しは悪くないがあまり好きな味ではない。酒瓶のラベルを見ると『ドワーフ殺し』と書いてある。度数が高そうなお酒だ。


「それにしてはセシルに当たりが強くないか?」

「だってあのまま、あの子に付いて行ってたらカイル喰われてたわよ」

「喰われてた?」

「そう喰われてた。押し倒されてエッチしてたんじゃない?」


 しっかり飲み終えてて良かった。お陰でお酒を吹き出さずに済んだのだから。


「男同士だぞ?」

「そうね、でも心は女よ。女としての立場から見ると好きな人に抱かれたいし、抱きたいもの」


 何時ものように頬杖をついてこちらを見ている。熱っぽい視線を感じる。正直今はこの雰囲気が好ましくない。タケシさんの事。ミラベルの事。魔王の事。正直考える事が多すぎる。頭がぐちゃぐちゃになりそうなんだ。そこまで気が回らないのは仕方ないだろう。


「カイルとエッチして欲しくないから邪魔したの。悪い?」


 上手く言葉が出ない。ストレート過ぎるだろう。顔を真っ赤にして走り去るセシルの顔が浮かぶ。とはいえサーシャの言うことが確かならセシルとの距離感はしっかり取るべきだろう。セシルに迫られるのも怖いし、何よりノエルが怖い。


「前に言ったと思うけどカイルの事好きなのよ。今ここで告白してあげようか?」

「勘弁してくれ」


 両手を上げて降参のポーズを取る。本当に勘弁してくれ。仮に告白されたとしてもサーシャにとって良い返事は返せないだろう。

 ノエルの婚約者になった以上、彼女を裏切りたくない。


「ノエルと何かあった?」


 なんでこうこの女は核心を突いてくるのだろうか。黙っていたら無言を肯定と取ったのかクスクスと笑っている。


「あたしは別に1番に拘らないのよね。カイルと関係が持てたらそれでいいから。ノエルにお願いしようかしら」


 思わず頭を抱える。どうして俺のパーティーの仲間はどいつもこいつも恋愛脳なんだ。ノエルに相談する? 嫌がるだろうな。それでもノエルがサーシャに負ける姿が予想出来る。ノエルがサーシャに口で勝ってる姿を見た事がない。

 サーシャが一番に拘らないって言うならノエルが折れる可能性がある。と言うより、デュランダルを持ってきてるからこの話も聞いているんだよな。出来れば拒否して欲しいのだが。


「どうして俺なんだ?」


 何か特別な理由でもあるのか? 恋愛って意味で変に考え過ぎるも良くはないが。正直キャパオーバーだ。何人も同時に愛せる気がしない。


「それ聞かれると、あたしも告白する事になるんだけどいいの?」

「もう好きにしてくれ」

「じゃ、好きにさせて貰うわね」


 グラスに注いだお酒を飲んでいるのが見える。こちらを見る目は先程よりも熱っぽい。彼女が飲んでる姿をボーッと眺めていたら、グラスを置いて顔を寄せてきた。反応が遅れて気付いたら目の前にサーシャの顔があり、チュと触れるだけのキスをされた。


「酔っ払いの戯言じゃなくてちゃんとカイルの事好きだから」

「流石に酔ってないのは分かるよ。付き合いは長いから」

「色々と好きになった理由はあるんだけどね。話し出したら止まらないと思うし1つだけ。

あたしよりお酒が強いカイルが好きなの」


 素直に喜べない。お酒が強いというより酔わないだけだ。飲み過ぎたらお腹いっぱいになって気持ち悪くなるのは変わらない。

 サーシャにお酒で勝った事なんてあったか? そういえば旅に出て少し経った頃に1度だけ勝った事があるな。飲み過ぎて気持ち悪くなったの覚えている。それ以来、限度は決めていた筈だ。


「それだけか?」

「ドワーフの女として見るならこれ以上ない理由だと思うけど」


 種族的な価値観か。獣人は自分より強い者を異性として好む。エルフは高潔である者を、あるいは心を許した者を。人はなんだろうな。自分の事ながらイマイチよく分からない。

 ドワーフは自分よりお酒が強い者を好むらしい。そんな事酒場の酔っ払いが言ってたな。勝ったらあの嬢ちゃんは俺の事を好きになるぜ、なんて。バカな話だと思う。


「カイルとこうやってお酒を飲んでる時間が一番好き。貴方をこうやって独り占めに出来るから。

カイルの事を独占して一緒に話が出来るから。旅をしてきて、カイルに沢山守ってもらった。カイルに沢山助けてもらった。カイルに沢山楽しませてもらった。カイルに沢山教えて貰ったの、貴方を好きになる感覚を」


 こうもドストレートに言われると流石に照れるものがある。言ってるの本人の顔が赤い。お酒では無いだろうな。さっきまで浴びる程飲んでいたがここまで赤くはなってなかった。


「一番じゃなくてもいいからさ、カイルの事好きでいさせてよ」

「俺は…」


 なんて返事をしたらいいか浮かばなかったが、何か言わないとと思い口を開いたがサーシャの指に抑えられてて思わず口を噤む。


「返事はしなくていいわ。ノエルに許可を貰ったら襲うから」


 ───俺の意思は!?襲うってなんだ!

 ノエルに許可を取ろうとするのは分かる。その後に俺の意思を確認するべきじゃないか? 大事だと思うぞ本人に確認するのって。無視していいものじゃないと思う。

 あ、ダメだこの女もう話を聞く気がない。さっきまでの赤い顔が何処へやらふんふーんと鼻歌を歌いながらグラスにお酒を注いでいる。あまりに何時もと同じサーシャに言葉を失う。


「あ、そうだカイルに用があったのよ」

「面倒事なら勘弁してくれ」

「そういうのじゃないわ」


 なんというかもう疲れた。この女と話をしたくない。これで厄介事なんか言われたら堪らない。


「トラさんの魔道具だけど、あたしの師匠に話を通してあるから近い内に顔を出してきたら?」

「マクスウェルさんにか?」

「師匠は魔法の研究ばかりしてるけど、魔道具の職人としても一流よ。トラさんの魔道具を作って貰うなら師匠に頼んだ方がいいわ」

「その口ぶりだとサーシャは付いて来る気はないよな」


 正直な話、マクスウェルに会うにしてもサーシャがいた方が話は早いと思う。なんだかんか師弟関係なのもあって、マクスウェルに取次がしやすい。専門的な話は分からない事が多いからサーシャに聞きたい所だ。


「あのジジイに会うと小言が五月蝿いのよね。やれお酒を飲むのをやめろ。やれお酒を零すなって」


 ───マクスウェルさん、こいつは意地でも連れていきます。なので思う存分叱ってやってください。

次からシリアスパート

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ