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勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。  作者: かませ犬
第三章 相死相哀ノ殺シ愛

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123.愛してると言って

「つまり、トラさんは生きているという事なのじゃな?」

「サーシャの手紙が偽りでないなら生きている筈だ。冗談を言う奴だが、大事な事で嘘を吐くタイプではないから⋯生きていると思う」

「そうか⋯良かったのじゃ。どういう理由であれ、トラさんが生きている。それが一番なのじゃ!」

「…………」コクコク。

「そうだな」


 ───時刻は昼過ぎ、ジェイクと今後についての話し合いを終えた俺は昼食を取った後、ダルとエクレアのいる教会へ訪れていた。要件はサーシャの手紙の件と、勇者パーティーの今後の方針についてだ。

 サーシャの手紙があと半日早く届いていれば、三人がトラさんの死に悲しむ事もなかっただろう。こればっかりは仕方ないな。


 連日で教会に訪れた事と、一室を借りてしまっている事に申し訳なさはあるが、聞かれてはいけない類の話ではある。モロさんも政治と関わりのある立場である為、こちらの事も気遣ってくれた。本当に優れた人だと思う。


「ノエルには伝えのか?」

「二人に話してからノエルの屋敷に向かうつもりだ。ジェイクにお願いして使者は一応出してある」

「うむ!ノエルもトラさんの死を悲しんでおった!早く伝えやるのじゃ!」


 いつもの様に明るい笑顔で『早く行くのじゃ!』っと部屋の出口を指さすダル。その横でうんうんと首を縦に振るエクレアの姿がある。

 手紙の件を伝える前は一目で分かるくらい落ち込んでいたんだがな…。手紙を見せた後はいつもの二人に戻っていた。

 少し気になったのはエクレアが手紙を読んで一瞬、険しい表情した事だな。直ぐに何時もの表情に戻ったから気の所為かと思えたが…何か直感が訴えるものがあるの? 後で確認してみるか。


「言われなくて行くつもりなんだが、二人に伝える事があってな」

「む!トラさんの事以外にあるのか?」

「そうだ。勇者パーティーの今後の方針に関わってくる。二人の意見を聞きたくてな」

「我に任せるのじゃ!」


 腰に手を当てて胸を張るダルと真似るように同じポーズを取るエクレア。本当に仲良しだな。


「世界樹の件で話があってな」

「うむ、神官たちから話を聞いておるが呪詛に蝕まれておるのじゃろ?」

「問題なのは普通の方法では解呪する事は出来ず、神に告げられた呪詛を浄化出来る存在、『世界樹の巫女』が亡くなっていたんだ」

「なんと!」

「亡くなっていたからといって諦める訳にはいかないからな、俺も情報を得るために動いていた」

「我とエクレアもモロや神官に話を聞いておったが肝心の情報は…」

「…………」フルフル

「見つからなかったか…」


 二人がコクリと頷いた。これは想定の範囲だな。俺もタケシさんの残した情報やテスラたちに相談しなければ分からなかった事だ。そもそも残された情報が少ないんだろうな。


「カイルの様子を見るに、見つかったのじゃな?」

「そういう事だ。『世界樹の巫女』以外に呪詛を浄化出来る存在がいたんだ。それが水の精霊と呼ばれる存在だ」

「精霊…我も詳しくは知らないのじゃ」

「人には見えないらしいからな。会った人も極わずかだ。それもあって記録は殆ど残っていない」

「見えないものを見つけるのは不可能ではないか?何か方法があるのか?」

「ある。それが今後の方針に関わってくる。『獣人の国(ジャングル大帝)』に聖獣ユニコーンと呼ばれる生物が生息しているらしい。ユニコーンは精霊を見る事が出来、二代目勇者シャーリー・フェルグラントを精霊の元に案内したそうだ」

「おおっ!という事はユニコーンを見つければいいのじゃな!解決策が見つかって良かったのじゃ!」


 一番大きな問題はそのユニコーンがディアボロによって捕らえられているという点だ。これについては話すべきか話さないべきか。話せば二人は間違いなく俺の身を案じて、闘いに介入してくる。そうなるとディアボロは宣言通り姿を消すだろう。

 そうなるとユニコーンも…世界樹もどうなるか分からない。この問題を解決する唯一の方法が俺とディアボロの一騎打ちだからな。


「生息地も凡そ絞れた。ジャングル大帝の『二ビル』という村の近くで目撃されたそうだ。ただ、ジャングル大帝は俺たちもあまり行った事がないからな…」

「ふむ、トラさんの助けが必要なわけじゃな」

「だから一度『ドワーフの国(タングマリン)』に戻ってサーシャとトラさんの二人と合流しようと考えている」

「…………」コクコク

「あい、分かった。モロや神官にも伝えておくのじゃ!準備が出来たら出発するのじゃろ?」

「問題がなければな…。世界樹がいつまで持つか分からない。出来るだけ急ぐべきだと考えている」

「…………」コクコク

「それが良いのじゃ!」


 俺たちの準備ができ次第、『エルフの国(テルマ)』を出立する事はジェイクを通して国に伝わるだろう。混乱も日が経って落ち着いてきた事もあり勇者パーティーが国を離れても大きな騒ぎにはならないだろうというのが、俺とジェイクの見識だ。俺たちが抜けた穴は大きいが何とかしますと爽やかに笑っていたな。

 それと、『世界樹をお願いします』と頭を下げて頼んでもきた。エルフにとって…世界にとって世界樹は大切な存在だ。優先するべきが何か皆もしっかり分かっている。


「俺は今からトラさんの件と今後についてノエルと話してくる」

「うむ、我とエクレアはモロに相談した上で旅支度を始めるのじゃ!」

「…………」コクコク

「頼んだ。それじゃあ、行ってくるよ」

「うむ!ノエルの事を頼んだのじゃ!」


 ダルの声を背中に受け、部屋を後にする。ノエルの屋敷が何処にあるかはジェイクに教えて貰っているので、場所が分からないなんて事はないだろう。

 今からノエルの元に行って今後について話す訳だが、先にダルとエクレアと会話をしたのにも意味はある。知っての通り、デュランダルの鞘にはノエルが取り付けた盗聴器がついている。恐らく今のやり取りも聞いていたと思う。

 という事で同じ説明をノエルにしないで済む訳だ。俺が考えたように話したがデュランダルの案だな。ジェイクの屋敷を出る前にデュランダルに効率が良いと提案された。

 万が一ノエルが盗聴していなかった場合は仕方ないが、一から話そう。


 教会を出る前にモロさんの元へ向かい、お礼の言葉の近い内に出立する旨を伝えておいた。驚いていたが、詳しい事はダルに聞いて欲しいと伝えその場を離れた。


 ジェイクから教えて貰った───紙に書いて貰った地図を頼りにノエルの屋敷に向かう。タケシさんが描いた地図と違って非常に分かりやすい。絵も上手いのもあるが、字が綺麗だ。流石ジェイクと言いたくなったな。


「ノエルさんの屋敷は王宮の近くのようですね」

「みたいだな」


 それだけ王族に近い一族という事なのだろう。目的地を目指して歩く事数分、分かりやすい目印である王宮が視界に映る。地図だとこの近くにノエルが屋敷がある筈だ。テルマは王宮、教会、貴族街、市民街の四つに分かれていると説明された。

 貴族街は王宮の近くになり、今回の騒動でも比較的被害は少なかった。建物の質や屋敷に結界を張っていたお陰らしい。ノエルの屋敷も無事だった筈だ。地図を頼りに歩いていると立派な建物が建て並ぶ貴族街が見えてきた。最も王宮に近い建物…どれだ?


「僕はここだよ、カイル」


 王宮に一番近い屋敷というヒントからノエルの屋敷を探していると背後から声をかけられた。声に反応して振り返れば何時もと同じ、自信に溢れるノエルの姿ある。良かった、悲しんでいるノエルよりも何時もの彼女の方がずっと可愛らしい。


「迎えに来てくれたのか?」

「わざわざ来てあげたんだ。僕に感謝しなよ」

「ありがとう。ノエルの事だ…、俺が来た用件なんかも既に知っているだろ?」

「当然だよ。凡人と違って僕は天才だからね」


 そんな天才がする事が盗聴なのだから笑えない。この様子だとダルとエクレアとの会話を聞いていたらしい。手間が省けたな。


「今後の方針についてノエルに相談したくてな」

「君の為に僕の知恵を貸してあげるさ。一先ず屋敷に向かおうか、誰が聞いているか分からないからね」

「そうだな」


 見たところ人気はないが勇者パーティーの大事な話だ、誰が聞いているか分からない所で話す訳にはいかないな。彼女の提案に乗り、屋敷に向かおうってなったが何故かノエルが動かない。案内してくれと促すべきか?


「カイル」

「なんだ?」

「案内する前に…」


 ノエルの様子を確認すると頬が赤くなっている。特徴的なエルフの耳も先端まで赤く…。


「僕の事を愛してるって言って欲しい」


 顔を赤くしながらお願いしてくるノエルの姿が愛おしくて、間を置かずに返事をしていた。


「愛してるよ、ノエル」


 ───デュランダルがカタカタと震えた。

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