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勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。  作者: かませ犬
第三章 相死相哀ノ殺シ愛

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111.『悪童』レオパルド

 とんでもない変態が現れたものだ。

 この世界で28年、前世と合わせて50年過ぎ…半世紀ほど生きた訳だがこんな変態と直に会ったのは初めてだ。

 他人に自分の嫁を幸せにしろ、抱く時は自分を疎外にするな…なんて、どういう価値観で言っているのか問いただしたい。

 というよりティエラを抱くって何だ? 彼女が転生者であり元は魔族の女性である事は知ってはいるが、今の彼女は剣だ。

 普通に考えてそういった行為は出来ないだろう。もしかしてテスラはそんな行為すら行うような高度な変態なのか?

 それを俺にも強要しようと? 流石に引くな。個人の性癖にどうこう言うつもりはないが、それを俺に押し付けるようなら俺も抵抗しないといけない。その場合は拳か?流石にデュランダルで切るのは可哀想だろう…。


 相談相手が出来る事は大変喜ばしい事ではあるが相手を選ばせて欲しい。いや、待てよ。同じ条件ならセシルもじゃない?

 『読心』については知らないかもしれないが、夢の中だからミラベルも魔王も気にせず話が出来る。それにセシルは若年で教会の重鎮になるような才女だ。知恵を借りるという意味ではもってこいの相手じゃないか?

 セシルにも協力して貰おう。巻き込む形になって申し訳ないが、俺一人でこの変態を相手にするのは正直言ってキツイ。かなりキツイ。

 現実だけでなく夢の中でまで胃を痛める事になるなら魔王を探す前に倒れる自信がある。そうならない為にセシルに手伝って貰おう。


「セシル」

「はい、なんですか?義兄さん」


 俺とテスラのやり取りについていけなかったのか首を傾げて不思議そうにしていたセシルに声をかけた。


「夢の中でまでセシルに頼み事をするのは悪い気もするんだが…」

「そんな事は気にしないでください!」


 ブンブンと首を振って微笑むセシルに気持ちが楽になる。


「ありがとう。セシル、相談に乗ってくれないか?」

「相談ですか?」

「そうだ。誰にも言えなかった内容なんだ。夢の中だからこそ出来る相談であり、他の誰でもないセシルにしか相談出来ない」

「僕にだけ」


 何か言いたそうなテスラを手で制してから、頬を緩めて喜ぶセシルに続きを話す。


「テスラとのやり取りを聞いていたよな」

「はい」

「説明とすると長くなるな。簡潔に伝えるから出来ればそれで納得して欲しい」

「分かりました」


 夢の世界の時間は思っているより早く過ぎている印象だ。テスラとのやり取りで無駄な時間を消費してしまった以上、手早く済ませたい。

 賢いセシルなら簡潔な内容でも理解出来ると信じている。

 

「これはミラベルから教えられた情報だ。夢の中に現れたミラベルにある日、突然告げられたんだ。『勇者パーティーの仲間の中に魔王混じっている』と」

「魔王が!?なら何で皆に相談しないんですか?……あ、義兄さんたちが言っていた『読心』の魔法ですね」

「そういう事だ。これに関してもミラベルから聞かされた情報だから真偽のほどは分からない。魔王は人の心を読む魔法が使えるそうだ」

「人の心を読む…、だから誰にも相談出来なかったんですね。けど、義兄さんの心を読まれたら同じ事では?」


 当然の疑問だな。心を読む相手に秘め事なんて本来は不可能だ。俺が魔王に心を読まれていないのはミラベルから与えられている能力(チート)があるからで、能力がなければ他の者同様に心を読まれて対処される。

 仲間に共有する前に殺される可能性が高いだろう。俺自身ミラベルから言われなければパーティーの仲間に魔王が混じっているなんて思っていなかった。思いもしなかった。それが普通の感覚だ。

 本来なら知り得もしない情報だ。そんな情報を手にして心を読まれて知られれば…どうなるかは容易に想像出来る。


「俺はミラベルから常人は持っていない特殊な能力を与えられている」

「ご先祖さまみたいにですか?」

「そうだ。ルドガーも同じだったなら話が早いな。俺はミラベルから与えられた能力のお陰で他人からの干渉を一切受けない。呪いや毒、そして魔王の読心の魔法も」

「つまるところ魔王の使う魔法に唯一対処出来るのが義兄さんって事ですか?」

「そうなるな…、他にも方法があるかも知れないが」

「なるほど…なるほど。この様子だと誰が魔王かまでは判明してないんですね」

「まだ分かっていない。情報を集めている最中だ。何人かには絞れているんだがな…」


 勇者パーティーの目的である魔王討伐の為に、情報を集める事が最優先事項だ。ミラベルの事がなければもう少し情報が集まっていたかも知れない。

 言っても仕方ないか。それにミラベルの件も放置するのは不味かった筈だ。ルドガーの件やタケシさんの情報から加護を放置していいモノではないのは分かっている。魔王や世界樹、色々とやる事はあるが並行して解除しないといけないな。


「少し時間をください。整理します」

「分かった」


 顎に手を当てて思案するセシルを見てもう少し分かりやすく説明出来ただろうかと考えてしまう。いや、要点は伝えられている筈だ。セシルなら理解出来るんじゃないか?


「そろそろいいか?」

「あぁ、すまない」


 色々と言いたい事はあっただろう。セシルに話をしている時も鋭い視線が飛んできていた。それでも黙ってやり取りが終わるのを見ていた。空気は読める男らしい。変態だが。

 本当にこの一言で全てを台無しにしている。変態でさえなければ俺もテスラに心の内まで話せただろう。相談相手になってくれるのは嬉しいが、胃の負担が増えるのは本当に勘弁してくれ。


「小娘は必要か?相談相手なら俺で十分だろう」

「知識や経験という意味ならそうかも知れない。けど、初対面である貴方を信用出来るかどうかは別だ。その点セシルの事は仲間だから良く分かっているからな」

「俺の情報もそこの小娘と信用出来るモノかどうか吟味するって訳か。それで別に構わないがな…」


 テスラにとって面白い話ではないな。お前の事は信用出来ないって言っているようなモノだ。それでも怒っている様子もなく、ただセシルを見て鼻を鳴らした。見下している? なんとも言えないな。


「時間もない。話を進めるぞ。そこの小娘も思案しながら聞け」

「はい」

「分かった」

「さて、『読心』の魔法についてだが知っての通り相手の心を読む魔法だ。人やエルフ、魔族といった種族も関係ない。動物や魔物にだって『読心』は効く。流石に植物や土の声は聞けないがな」

「他には?道具に魂の宿った者…デュランダルやテスラ達のような者の心を読めないのは本当か?」

「それも本当だ」


 疑問に対する即答からテスラの自信が伝わってくる。自分の情報は間違っていないと彼の目が伝えてくるようだ。念の為確認しておくか。


「『読心』について随分と詳しいな。どこで知った?」

「使える者を知っているからな。お前が探している魔王だけではない。『読心』を使える者は他にもいるって事だ」


 ───何…だと…。


「もっとも既に死んでいるがな…。『読心』について詳しいのはそいつと共に魔法の効力を実験して確かめたからだ。だから『読心』の使い手と同じレベルの知識は持っているつもりだ」

「そういう事か…」

「魔法の使い手は小僧も名前くらいは知っている筈だ」


 テスラの口ぶりから名の知れた人物なのは分かる。誰だ? 可能性として高いのは魔族…それもテスラが生きていた時代の者たち。つまり初代魔王であるティエラに仕えた魔族の誰か。

 秘密裏に支援していた事からドワーフや獣人も考えられるが…。セシルに視線を向けると小さく首を振っている。彼女も心当たりはないようだ。


「小娘も知らんか。当然か。魔法について知っているのは魔族の中でも限られた数名だけだった」

「魔族の実力者…四天王か」

「そうだ。『読心』の使い手の名はレオパルド・アルカディオス。『悪童』レオパルドとして名を馳せた魔族最強の剣士」

「魔族最強の剣士…」


 始まりの四天王の一人だな。『赤竜』のドレイク、『豪鬼』バージェス、『校長』のコバヤシ、『悪童』レオパルド。一人明らかに浮いているがそれはまぁ…置いておこう。


 タケシさんの残した情報にも彼らの名前は書いてあった。現代では一人一人が一騎当千の強さを持つ魔族だが、奴隷の身から立ち上がった直後の魔族はそれほど強くなかった。

 『闇』属性の魔法の強さこそあれど、魔法を学び出したのは他種族から大きく遅れた。魔法の理解度ではエルフや人間には遠く及ばない。戦いは魔族にとって厳しいモノになる筈だった。

 そうならなかったのはある種の特異点と言える魔王(ティエラ)の存在と、魔法…あるいは戦いの才能に秀でた四天王のお陰だ。彼らの尽力により魔族は人間やエルフと互角に戦う事が出来た。


 ───四天王の多くは既に死んでいる。バージェスはエルフの騎士によって、レオパルドは人間の勇者に討ち取られ亡くなっている。コバヤシの死因も勇者パーティーにだったか?

 唯一の生き残りは『赤竜』のドレイクだけだ。いや、コバヤシも生きているのか? これについては訳が分からないな。


「俺から言わせればクソガキだな。心が読める事を利用して相手の弱味を握って優位に立とうとする性根の腐ったガキだ。だが、天才ではあったな。10歳の時にティエラの元にやってきて13歳の時には四天王の一人に数えられていた」

「とんでもないな」

「四天王と呼ばれる奴はどいうもこいつも化け物だ。それは小僧も良く分かっているだろ?」

「そう…だな」


 俺が直接対峙したのは4人。戦ったのは内三人だが、他の魔族とは一線を駕す強さを持っていた。ふざけたような戦いをするバージェスJrだってエクレアがいなければ勝つのは難しかっただろう。

 四天王を倒すのは生半可ではない。歴代の勇者パーティーも四天王との戦いで亡くなった者も多い。


「『読心』の魔法について話を戻そう。小僧は読心の魔法が何属性の魔法か分かるか?」

「闇属性ではないのか?」

「その答えは決して間違っていない。だから一つ正解と言ってやろう」

「一つ正解…どういう事だ?」

「まさか!」


 俺と違ってセシルは心当たりがあるらしく、驚いたような顔で声を上げた。


「『読心』の魔法は『闇』と『風』の複合魔法だ」

「複合魔法?」 

「二つの属性を同時に扱って使う魔法です。義兄さんが知らないのも無理はありません。世界全土で見ても使える者は片手で数える程しかいないので」


 魔法に関しては専門外すぎてまるで分からん。複合魔法とか初めて聞いた。サーシャなら知っているのだろうか。


 なんて説明しましょうかと首を傾げるセシルと鼻で笑うテスラ。好感度の差は言うまでもない。相談相手はセシル一人でいい気がしてきた。


「小僧、お前はもう少し魔法に学ぶべきだ」


 上から目線の言葉に反論出来ないのが腹立たしい。


「あれ?僕の記憶が確かならおじさんは魔法が使えないんでしたよね?」

「……………」

「義兄さんは魔法が使えますよ。おじさんは使えない。知識量でマウント取るのは分かりますけど…、魔法が使えない人が言う言葉は説得力が…ね?」

「……小娘っ」


 先の展開が予想出来た所為で思わずため息が出た。煽るセシルとキレるテスラ。案の定言い争いを始めた二人を見て相談相手を間違えたなとひとりごちた。

更新遅れてすみません。


一先ず、資格試験の筆記テストが無事終わりました。

結果が分かるまで怖い。自己採点なら通ってるんですけどねー

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