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勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。  作者: かませ犬
第三章 相死相哀ノ殺シ愛

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103.シャーリー・フェルグラント

 この書類に書かれている内容は二代目勇者シャーリー・フェルグラントについてだな。軽く流し見てみたがこの手に持つ書類だけで終わる内容ではないらしい。中途半端な所で文字が途切れている。


「ティエラ、一つ気になったんだが」

「どうした?」

「タケシさんが残した書類の文字は全て日本語だ。この世界の字ではない。何故だ?」

「最初はこの世界の文字で書いていた。だが字が汚いのもそうだが、癖字が酷くてな。私の判断でやめさせた」

「そうだな、この世界の文字で書かれた手紙を読み解くのには苦労した覚えがある」

「あれでも綺麗に書けた方だぞ」


 ───タケシ!


「どうしても前世の文字に意識を持っていかれるようでな。英語や日本語とごっちゃになって文字が崩れるようだ。1文字1文字意識して書けば多少マシだが、書いてる途中で汚くなっていくから私も諦めた」

「気持ちはまぁ、分かるかな?俺も慣れるまでは時間がかかった。つまるところ日本語の方がまだ字が綺麗だった訳だ…」

「そういう事になるな。私目線で見てもまだ何とか読み解ける文字だ」

「なるほど…。一つ気になるんだが、今回は俺だったから良かったけど転生者が外国人…あるいは別の世界の住人ならせっかく残した情報を読めなったんじゃないか?」

「その場合は私が代わりに読むから問題はない。タケシの家には私も共に行くことが前提だからな」


 そういう事か。外国人や別世界の人間の場合はティエラが翻訳して伝える事を前提に全て考えられている。ティエラも前世は俺やタケシさんと同じだ。汚い文字とはいえ読み解ける訳だ。

 納得出来ると同時に疑問も込み上げてくる。今更な話だが、ティエラはどうやって紙に書かれた文字を読んでいるのだろうか?

 俺の顔が好みとも言っていたが…。不思議だな。目が無い筈なのに視る事が出来、耳が無い筈なのに聴く事が出来る。当たり前のように喋っているが、口は無いんだよな。本当にどうなっているんだ?

 気になる所ではあるが…今は聞く必要はないか。重要性という意味では高くはない。山積みにされた書類の1番上の紙を手に取り目を通すと、二代目勇者シャーリーについての続きのようだ。

 なんと言うか性格が出るな…。読む人の事を考えるならシャーリーならシャーリーの情報として纏めておきたい所ではある。時間があれば整理しておきたいな。


 散らかっている部屋を見てため息を一つ吐き、改めてシャーリーについての情報を読む。彼女は転生者ではないようだ。だからといって平穏な一生を送った訳ではない。貴族の産まれではあるが、正妻の子供ではなく愛人の子供だったようだ。

 よくある話ではあるが、正妻からその存在を疎ましく思われていたようで幼少期から嫌がらせを受けていた。書かれた内容だけでもなかなかに悪質だ。物語に出てくる悪役のような立ち回りをしている。


 シャーリーの父親であるフェルグラント家の当主が彼女の味方だったお陰で大事には至っていないが、胸糞の悪い話が続く。重要な情報ではなさそうなので流し読みで進めていくが、彼女の一生はまるで物語のようだ。

 転機が訪れたのは15歳の時か。シャーリーを庇護していた当主が病気で倒れ、正妻を止める者がいなくなった。

 後に勇者として名を馳せるシャーリーではあるが、貴族の令嬢として育てられたようで当時はまだ普通の女の子でしかなかった。その為、正妻の指示で使用人が命を狙ってきた時もシャーリーは逃げるしか出来なかった。

 命からがら逃げ延びた彼女に第二の不幸が襲う。シャーリーが生きている事を許せなかった正妻が呪詛師を雇ってシャーリーを呪ったようだ。シャーリーと仲良くしていた使用人を生贄として、彼女に死の呪いをかけた。読んで字のごとく彼女を死へと誘う呪いだ。


 必死で逃げていたシャーリーも呪いにより体を蝕まれ、力無く倒れた。そんな彼女の前に現れたのが聖獣ユニコーンだ。性獣と書かれているが、恐らく誤字だな。正確には聖獣だ。

 書かれていた情報が確かならユニコーンはその背にシャーリーを乗せ、彼女の命を助ける為に水の精霊の元へと訪れた。

 水の精霊の持つ浄化の力によりその身を蝕む死の呪いは解呪され、シャーリーは死の運命から逃れた訳だ。そこからは見るものを爽快にさせる逆転劇のようなストーリーだ。死の呪いから解き放たれた彼女は激怒した。彼女を水の精霊の元へと案内したユニコーンが二本足で立って逃げ出すレベルでブチ切れた。

 その結果産まれたのが『血濡れの悪魔』という訳だ。勇者のポテンシャルをその身に秘めていた彼女は怒りにより覚醒。二足歩行で逃げたユニコーンをタコ殴りにして従えた彼女は、怒りのままに自身の生まれ育った屋敷を強襲。


 正妻の下で甘い汁を啜っていた使用人たちを血祭りにあげ、彼女に呪いをかけた呪詛師はユニコーンの角に刺して殺害。諸悪の根源であった正妻はシャーリー気の済むまで殴られたようだ。


 ───『正妻が死ぬまで殴るのをやめない!』


 結果から言えば正妻はシャーリーに殴り殺された。殺人の罪でシャーリーもまた捕まる運命にあったが、神様のイタズラかあるいはミラベルが作った物語の都合かは知らないが彼女は捕まらなかった。

 勇者としてシャーリーが選ばれたからだ。神のお告げにより聖剣の元へと導かれた彼女は何人も抜く事の出来なかった聖剣を容易く抜いてみせた。

 彼女を捕らえようとやってきた兵を証人として彼女は聖剣に選ばれた勇者となった。ティエラの跡を継いだ二代目魔王アデルの猛攻により、人間とエルフが劣勢だった事もあり勇者の存在は誰もが待ちわびていた。

 その為殺人の罪は正妻側に非があった事もあり無罪となり、正式に勇者として選ばれたシャーリーは世界中から集められて英傑達と共に魔族との戦いへと向かった。

 その戦いにはユニコーンも付いていったようだ。いや、正確に言うなら嫌がるユニコーンを脅して連れていったらしい。


 聖獣ユニコーンも随分な扱いだな。言ってみればシャーリーの命を助けた恩人ならぬ恩馬と言える存在のようだが…。

 結局、シャーリーが二代目魔王アデルを倒すまで文字通り馬車馬の如くこき使われたようだ。魔王を倒し勇者としての役割を終えた彼女は恩賞としてフェルグラント家の当主の座を望み、それが国王により認められ事でフェルグラント家を継ぐ事となった。

 魔族との戦いの最中に当主であったシャーリーの父親が亡くなっていた事もおり、ちょっとした御家騒動はあったようだが今も勇者の家系としてフェルグラント家が続いてる事から結果は分かりきった事である。


 さて、重要なのはここからだ。シャーリーから解放された聖獣ユニコーンは彼女から逃げるように住処である『ジャングル大帝』の奥地にある密林に逃げ込んだようだ。

 彼女の時代は今から1000年程前の時代にはなる為、現在の住処は変わっているかも知れないが貴重の情報と言える。世界樹を救う為には浄化の力を使える水の精霊の力が必要だ。

 残念ながら俺たちにはその姿を見ることは出来ずどこにいるかも分からない。だが、ユニコーンは水の精霊を見る事ができその下へと案内出来る事がシャーリーについて書かれた情報から読み取れる。ユニコーンを探すのが第一優先になりそうだな。


 一つの目標が出来た事に一息ついた所でタケシさんが書いた落書きが目についた。奇抜なイラストと共に書かれた内容はえげつないものだ。

 タケシさんらしい文章を俺が翻訳したものが以下の通りだ。


 『性獣ユニコーンは穢れを嫌う。生粋の処女厨であると同時に闇の属性を扱う魔族を蛇蝎のごとく嫌っている。ユニコーンの代名詞と言える立派な角が処女かどうか見分けると共に魔族かどうか見分ける事が出来るようだ。その事を利用してユニコーンの角を折り、魔族探知機を作るのはどうだろうか?擬態で姿を隠す魔族への有効札になる事間違いなし。角は殺傷力も期待出来るので武器として加工するのもいいかも知れない。そうと決まったら素材を確保しよう。ユニコーンを捕まえるには穢れを知らない乙女…処女の力が必要…』


 そこで文字は終わっている。ティエラなら詳しい事を知っているんじゃないかと紙を見せる、数秒の沈黙の後に話し始めた。


「タケシの知り合いにユニコーンの捕獲を協力してくれる者はいなかった。力を貸そうとしてくれる女は皆、タケシと関係を持っていたから非処女でな。ユニコーンはまるで釣れなかったよ」

「そうか…」

「処女をわざわざ探すのは変態と同じだ。タケシの場合は見た目の問題もあって、探すのは断念した。タケシは決して容姿が優れた男ではなかったらからな。タケシに好意を寄せる女達に止められたのが一番大きいか」

「処女じゃないとダメなのか?」

「ダメだな。まるで相手にされん」

「……………」

「ユニコーンに会うのならダルと共に行く事だな。他の女共はお前と関係を持っているから釣れないぞ。ユニコーンは非処女というだけでゴミ判定してくるような駄馬だ。上手く捕らえて有効活用しろ」


 ───なるほど聖獣ではなく性獣という事か。ユニコーン(そんなヤツ)に希望を託さないといけないのか。










 角を有効活用するなら槍がいいか。そうしよう。

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