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勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。  作者: かませ犬
第三章 相死相哀ノ殺シ愛

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96.加護の消し方

「ふふ、相変わらず愉快な男だなタケシ(お前)は」


 楽しそうに話すデュランダルに呆気に取られる。空気の読まないタケシの発言もそうだが、親しみの感じるデュランダルの口調に遠く感じた距離が嘘のように思えた。先程までのやり取りから一変したとも言える。場の空気が変わったな。

 俺にとってもデュランダルにとってもそれは好ましいものだろう。


「昔から変わらないのですか?」

「何時ものように話せ。お前のその話し方は嫌いでは無いが、素のお前が1番好ましい」

「なら、そうさせて貰う」


 今までと違う威厳の感じるデュランダルの口調から、どうしても身構えてしまう自分がいる。頼れる相棒ではなく、勇者パーティー(俺たち)の宿敵である魔王として接してしまうからだ。

 頼れる相棒(デュランダル)として過ごした彼女の事を知っていても魔王(ティエラ)としての彼女の事は知らない。それでもタケシさんの言葉から彼女を信じたいと思えた。だからこそ語り合うべきだ。俺の味方だと語るデュランダルの言葉は真実かどうか見極める必要がある。

 空気はどうしても張り詰めたものになってしまう。それもタケシさんに壊された訳だけどな…。

 魔道具に視線を向けるとタケシさんが、『申し訳ないでござるー』と謝っている。空気を読まない発言に対してではなく、言い忘れた事に対する謝罪だろう。

 まずはタケシさんの話を聞くべきか。


『大事な事を言い忘れていたのでござるよ。某たち転生者にとって大事な事でござる』

「早く話せ」


 録音した声なのだから言った所で意味はないのだが、デュランダルの言葉通り早く話して欲しい。前起きはいらない。


『加護についてご存知でござるか?某も転生者について調べている時に気付いた事でござる。デュランダルと偉大な先人、ルドガー殿のお陰で気付く事が出来たでござる』


 俺が加護について知ったのは先生とセシルのお陰だな。加護という名の呪い、俺たち転生者の人生を歪めるミラベルが与えた彼女を楽しませる為の運命(ストーリー)


『魂に刻まれた加護と呼ばれるモノは某たち転生者の運命を決めるモノでござる。本人の意思さえ介入させない加護と呼ぶのも烏滸がましい、呪いのようなモノござる。加護がある限り某たち転生者はミラベル殿の掌の上、彼女の娯楽から逃れる事は出来ないのでござるよ』

「タケシも語っているが、私を含め転生者には皆加護が与えられる。ただ転生させるだけではその一生は変化のないものになる事が多い。

『それでは面白くない、私を楽しませて』と、あの女の下劣な趣向によってな」

『だからこそ某は調べたでござる。ミラベル殿の掌の上から逃げ出す為、抗う為に。歴史の中に一人だけいたのでござるよ、ミラベル殿に反抗出来た者が』


 それが誰かという事は既に俺も知っている。彼がいたからこそ、セシルから加護について教えて貰う事が出来た。加護を解除する方法も彼は知っていた。彼が俺たち転生者に向けて残してくれたモノはあまりに多い。

 彼の遺言に従い、セシルもまた俺を救おうとしてくれた。


『教会の創設者、『初代法皇』ルドガー・キリストフ。彼だけがミラベル殿が与えた加護を消す事が出来た。某はエルフと親しくしていたでござるから、教会の者からルドガー殿の事を聞く事が出来たでござるよ。

そのお陰で某は加護について、そして『瘴気』と『浄化』について知ることが出来たのでござる』


 加護を解除するのに世界樹と聖剣を使用する事は知っている。世界樹の浄化の力を使い、魂に刻まれた加護を払う。今は世界樹が呪いによって弱っている為それは出来ない。俺の為、いや世界の為に世界樹を救う必要がある。


『魂に刻まれた加護は呪いと呼べるモノでござるが、呪いではない故に解呪する事は出来ない仕組みでござる。しかしながらその性質は呪いに近いのでござるよ。いや、正確に言うならば呪いが神の加護に近いと言った方が良いでござるかな?

魔力と瘴気の2つが混ざりあったモノが呪いであり、魔力と合わさるから魔法で解呪する事が出来る。魔法を発現するにはマナが必要なように、魔法(解呪)が介入するには魔力が必要でござる』

「呪いの性質には魔力があり、そして呪いがかけられたものに魔力があるからこそ解呪する事が出来る。魔力があるからこそ、魔法は介入する力を持つ。知っていたか? 魔法は魔力を持たない者には無害だという事を」


 頭の理解が追い付かない。魔力を持たない者には魔法が効かない? そんな事聞いた事もない。考えた事すらない。それだけこの世界では魔法と呼ばれる力は絶対視されている。いや、それ以前にこの世界のものに魔力が宿っていないものなどあるのか?


「この世界のモノは全てに魔力が宿っている。生物はもちろん土や水、空気にすらな。唯一の例外が魔力と異なる性質を持つ瘴気と呼ばれるものだ」

『呪いについて話すと長くなるので詳しくはこの部屋に置いてある本から調べて欲しいでござるよ。さて、来訪者殿は瘴気とは何か分かるでござるか?』


 世界を蝕む毒。魔物の死体や、生物が発する負の感情から生み出される目に見えない毒。瘴気に犯されれば人は魔物となり、死の大地に成り果てるとミカは言っていた。


『瘴気とは神の力でござる』


 予想を遥かに超える答えだな。瘴気が神の力だと?


『正確に言うならば神の力の残りカスと言うべきでござるかな?

神の力は世界を変える程の膨大なエネルギーを持つでござるよ。神が力を使った際に余ったエネルギーが世界へと散り、生物の放つ負の感情と混ざって本来とは真逆の性質を持つ瘴気へと変わる。

神が力を使う度に瘴気は生み出されるのでござるよ』

「瘴気は神の力だ。そして神の力に対抗出来るのもまた神の力だ」


 神の力が負の性質を持ったモノが瘴気という事か…。だが、負の感情と混ざるだけで神の力が瘴気へと変わるものなのか?残りカスとはいえ神の力だろう。

 生物の放つ感情がそれだけの力を持つのか? いや、魔法の力を高めるのは言葉だったな。詠唱して言葉を紡ぐ事で魔法は威力が上がる。人が口にする『言霊』がマナをかき集めて魔法の威力を上げるように、生物が放つ負の感情もまた世界に対して影響力を持つんじゃないか?

 有り得ない話ではないだろう。言葉が力を持つなら感情や思想もまた大きな力へとなる事も考えられる。


 これで世界樹が瘴気を浄化出来る理由が分かった。

 世界樹が瘴気を浄化出来るのも、世界樹の巫女が同じように瘴気を浄化出来るのは全く同じ理由だ。神が与えた力だから瘴気(神の力)を消す事が出来た。

 世界樹にかけられた呪いを解呪出来ないという事は、ドレイクがかけた呪詛は通常の呪いと違い魔力の存在しない瘴気に近いモノなのかも知れない。瘴気(神の力)によって世界樹が苦しんでいる事になるのか…。


『負の性質を持つモノが『瘴気』であり、生の性質を持つモノが『浄化』と呼ばれる力でござる。『瘴気』は『浄化』の力のみで消す事が出来るのでござる。浄化(この力)は本来は神以外は持つ事が出来ないモノでござるよ』


 なら何故は世界樹や世界樹の巫女は浄化の力を持っている?俺の疑問を読み取ったように魔道具(タケシさん)が言葉を続けた


『浄化の力は能力ではないのでござるよ。某たち転生者に与えられる能力とは違う、神にのみ許された権限でござる。

例えるならば、某たちの能力がRPGに登場するキャラの使う必殺技。神の持つ権限とはRPGのプログラムでござる。

そんな重要な権限を本来は渡さないのでござるよ』

「だが、この世界の神はその権限を渡したんだ。全てではなく権限の一部だがな」

『神が浄化の力を渡した理由は某とて分からぬでござるが、神の権限を持つモノが神以外にいるのでござるよ。それが世界樹と世界樹の巫女、そして水の精霊でござる』


 瘴気は神の力が変質したモノであり、それを打ち消す事が出来るのは神の持つ浄化(権限)。呪詛によって弱っている世界樹を救う為に浄化の力が使える世界樹の巫女を探していた。その巫女は既に亡くなっている。

 正直詰んだとも思ったが、いたんだな『浄化』の力を持つ存在がまだ…。だが精霊は俺たちには見えない存在だ。空気と同じ存在を探す事は可能なのか?


『神に会うのは正直に言って不可能に近いでござる。長い歴史の中でも神と対話したのはルドガー殿しかいないでござるからな。故に、某たち転生者が取る手段は3つでござる。

世界樹を利用する。あるいは世界樹の巫女か水の精霊を探し、『浄化』の力で加護を消すのでござる』

「神の与えた加護を消す事が出来るのは神の権限だけだ。手っ取り早く加護を消すのならミラベル以外の神に消して貰うのが一番早い」

『某は世界樹を利用して加護を消そうとしたでござる。結果から言えば完全には消せなかったでござるよ。腐ってもミラベル殿は神でござるからな。彼女が与えた力は強大でござった。

加護を消すには世界樹だけでは力が足りぬでござる。世界樹の他に巫女か水の精霊の助けがいるでござるな』

「カイルの場合はこの世界の神の声が聞ける。神に消して貰うのが一番簡単だろう。世界樹の巫女は既に死んでいる上に、水の精霊を見つけ出すのは人間では無理だ」

『少しばかり物騒な手を打つのならば神から権限を奪うという手段もあるでござるが、所詮は空想の理論でござる。来訪者殿は世界樹の巫女か水の精霊を探すでござるよ!』


 世界樹の巫女は亡くなっている。ミカはミラベルが張った結界のせいで下界には降りて来れない。そうなると択は一つだな。

 世界樹を救う為に水の精霊を探さないといけない。それが俺の加護を消す事の近道になる。希望が見つかったが、同時に悩みの種も増えたな。どうやって精霊を探したらいいんだ?

 それについての答えをタケシさん(かれ)なら知っている気がする。


「ところで気になっていたんだが、先程から上手く会話が成立していないか?タケシさんとデュランダルのやり取りがやけに噛み合っている気がするんだが」

「次の転生者に説明する為にタケシと練習したからな。間のやり取りも完璧だ」


 魔王の威厳はどこにいったよ、おい。

良くも悪くもデュランダルはタケシの影響を受けてます

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