材料が足りなくなった、フレンチトースト。
フレンチトーストを作るには
パンと牛乳
それから卵と砂糖があれば作れます。
まずは、パンを浸す液作り。
卵をパカッと割り入れて
泡立て器で色が均一になるまで混ぜ合わせ
牛乳と砂糖を加えます。
ここにあればバニラビーンズとか
バニラエッセンスを入れると美味しく仕上がるのです。
おっと待って、
今回はフライパンで焼くので
バニラエッセンスよりも
バニラオイルの方が
香り飛びが少なくていいかも知れません。
紫子さんも瑠奈さんも甘党ですので、
砂糖はたっぷりと。
「あ。」
作っている途中で、紫子さんが口を開く。
「?」
泡立て器を動かしながら
瑠奈さんは紫子さんを見て、首を傾げた。
心做しか紫子さんの顔が青い。
「紫子さん? どうしたの?」
「……」
瑠奈さんがそう尋ねると
紫子さんは視線は合わせずに
モゴモゴと何かを呟いた。
「?」
再び瑠奈さんは
紫子さんの顔を覗く。
「どうしたの?」
「えっと、……それがね……」
「うん」
「ないの……」
「ない?」
紫子さんが頷く。
「そう。『ない』の……」
「『ない』……」
言って瑠奈さんはハッとして辺りを見回して
そして見つける。空になったパンケース!
「!? ……は? え?
ちょ、パン……パンがないっ!!」
今日の朝ごはんは、味噌汁に白ごはん。
お昼ご飯にはサバのみりん干しを焼いたから
やっぱりご飯を食べた。
パンは食べなかったので
材料チェックの時は気にもとめなかった。
牛乳と卵……それからバターが冷蔵庫にあるか
サラッと確認しただけだ。
「え、ちょっと何でない!?」
瑠奈さんは唸る。
「えっと……昨日の夜、食べちゃった……」
テヘッと笑いながら
紫子さんが頭を搔く。
「いやいやいやいや、
パン買ったの昨日の夕方ですから!
てことは何? あなたは夜中にパン一斤
一人で食べちゃったってこと!?」
「えへへへへ」
「『えへへ』じゃない!
どうしてくれんの!?」
瑠奈さんは、既に混ぜ合わせてしまった
卵液を見る。
たくさん作るつもりで、液もかなりの量だ。
牛乳の他、バニラオイルも入れたので
卵焼きに変更……と言う訳にもいかない。
「うぐ……。
買ってきます。パン……」
しょんぼりとそう言って
紫子さんは外へと出た。
「え、ちょ待って! 私も行くから……!」
出ていった紫子さんの後を
瑠奈さんは慌ててエプロンを剥ぎ取った。
紫子さんは確かに大人だ。
だからお使いなんて、朝メシ前……のハズなんだけど
何をしでかすか分からないのが
この紫子さん。
この前なんて
たんぽぽに蝶に桜に……と誘われて、
とんでもない所に行っていた。
またそんな目にあうのはゴメンです! とばかりに、
瑠奈さんは慌てて卵液にラップを掛ける。
フレンチトーストは、火を通すから
大丈夫かも知れないけれど、
卵にはサルモネラ菌がついてるかもしれない。
常温放置はかなり危険だ。
しっかりラップして、冷蔵庫に卵液をしまうと
近くにあったお財布を掴んで
瑠奈さんは紫子さんを追い掛けた。
「──ったく! 財布なしで、いったい何買うの!!」
春の風が清々しい、午後の晴れ渡った青い空に
瑠奈さんの叫びが吸い込まれていった。
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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