終業式 その2
題名回収です!
9話です
「学校のグループチャットに例の動画と音声を流したのは間違いなく私だ」
突然の会長の発言に館内はより一層ざわつき始める。みな驚きを隠せない様子で辺りを見渡す。しかし彼女はこの状況に臆することなく、さらに言葉を続ける。
「確かに私は妹に非情なまでの制裁措置を取った。彼女が少しの間不登校になるほどに。しかし私にとってはたった一人の可愛い妹だ。忌み嫌っているはずがない。だがそれ以上にあの子はひととして許せない行為をした」
彼女は続ける。
「一番大事なカレを疎かにして、別の男と会っていたのだ。彼氏にとても大切にされていたにもかかわらず、だ! 彼は昔からあの子のことが大好きで、勇気を振り絞って告白したのに、その状況にいい気になったあの馬鹿は自分のエゴのためにさらにスリルを求めた。そんな馬鹿のために振り回されて、苦しんでいる彼を見ていたらどうしても許せなくなったのよっ!」
姉として、そして想い人として発言した彼女のこの気持ちに館内一同は真摯に耳を傾け、さっきまでのざわつきが嘘のようにしんとなる。そして優紀姉ちゃんは最後の締めを述べる。
「……以上で話は終わりだ。質問がなければこれで私の登壇は終わりとする」
この一言でさっきまで黙っていた生徒側の何人かが噂のあのことをすぐに投げかける。
「じゃあ妹の元カレさんのことはなんとも思ってないで良いですかっ?」
「うぅ……! それは……」
さっきまで熱弁をふるっていた彼女が突如として慌て始めて答えに窮する。彼女は答えようとするが、戸惑ったままで一向に答えを言おうとしない。すぐに答えられないからかヤジが飛ぶ。
「どうなんですか? はやく教えて下さい!!」
「それは………その……」
そんな彼女の危機的状況を見て、僕は立ち上がって周りに聞こえるように叫んだ。
「僕たちはもう付き合ってます!」
ざわっとしてみんな一斉にこちらを見る。普段こんなに人から見られることがないからかなり緊張する。だが僕は虚勢をはって毅然な態度で振る舞う。
「僕たちはもう付き合っている関係ですので、その言葉は正しくありません」
「な、直くん……!?」
「それに優紀姉ちゃんからではなく、僕から告白したので、アタックしていたのはむしろ僕側です。だからその……彼女を悪く言うのは止めて下さい。あんまり言うと……その……僕が許しませんから!」
かなり負荷を感じたからか、その後の僕はずっとへとへと状態になり、終業式はあっという間に終わった。そして校内に広まっていたあの噂は瞬く間に収束したのだった。
そして二学期最後の生徒会の仕事を終え、まだ日が明るい間に優紀姉ちゃんと下校する。
「いや~、今日は大変だったね~」
「……うん」
「しかしパタッと噂が止んで良かったよ。これも直くんのお陰だね」
「いや、別に僕はなにもしてないさ」
そう僕は大したことなんてなにもしていない。
「けどゴメンね~直くん。その場のことだったとはいえ、みんなの前で直くんに嘘をつかせちゃって」
「……」
「けど嬉しかったな~。嘘でもその時だけ恋人同士になれて。………お姉ちゃんはその気持ちを大切に閉まっておくから」
「………嘘じゃないさ」
「え?」
「いま付き合ったら、嘘ではなくなる」
「え? ………え??」
「優紀姉ちゃん、これから新たな困難があったとしても貴女と一緒に乗り越えてたい。だから僕と付き合ってください」
彼女は目をゆっくり潤せながら、顔を横に振ってオロオロする。そんな彼女を見るのは初めてだ。
「うそ………そんなの嘘よ……。だってこんなこと………」
「嘘じゃないさ。ほんとに僕と付き合ってほしい」
「ありがとう直くん……。私、いまとっても幸せ………」
そう言いながら泪を流す彼女は僕の手を取りながら喜んだ。僕がなんとしても彼女を守り抜かなければ……っ!
昨日聞いた早川先輩の話が今でも耳から離れない。
◇◇◇
「とにかく相葉花音には気をつけなさい」
「え……?」
先輩の発言から突然花音の名前が出て、僕は少々戸惑った。
「彼女、裏でこそこそと他校の女子生徒と頻繁に会ってるみたいよ」
「え!? な、なぜ!?」
「それはまだ秘密ね。私がそこまで貴方に義理立てする理由もないし」
「………」
「まあ、とにかくこれは忠告よ。彼女には気をつけなさい。それと……こっちはアドバイス。お姉さんの相葉さんのことはちゃんと気にしてあげなさいね。彼女も一人の女子。彼女が追い込まれてしまった時は一体誰が助けるの?」
「………!」
「さあ、もう一度訊くよ」
「……」
──さあ、君はどうする?
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