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疑惑と良からぬ噂

直樹なりに考えがあって……


7話です

 優紀姉ちゃんと分かれてから、僕は単騎帰路を辿(たど)りながら先ほどの一件を再度思案する。あの時二人には言わなかったが、実は花音の意見を承諾したのには、あいつが引き下がらないからだけではない。もう一つ理由があったからだ。

 それは花音に容疑があるかどうかの痕跡を見つけるためだ。今回起きた優紀姉ちゃんの写真、親しい間柄でないと絶対に撮れない内容だ。あの写真を撮ることが出来る人は他にも何人かいるだろう。しかし動機が分からない。

 その上で僕との関係を知る人物だ。でないと僕の下駄箱に置く必要性がない。そうなるとどうしても花音の犯行である可能性がかなり濃厚になる。

 法律だと疑わしきは罰せずが常套句だし、花音が本当に償うために僕へ近づいただけならそれはそれで良い。ただ疑いの可能性があるのなら、しっかりとその可能性を潰す必要がある。

 だがしっかり用心せねば……。あいつの警戒心の強さは二股の一件でよく分かったから、花音にこのことがバレないようにしないと。バレたら、ますます警戒心が強まるかもしれない。

 そう思いながら、僕は計画を立ててみるのであった。


◇◇◇


 それから時々だが、優紀姉ちゃんとともに花音がウチに来るようになった。

 花音に多少の不快感と警戒心はあったが、僕の身の回りのことをよくしてくれた。静かに掃除をして、散らかっていた部屋の中がみるみるうちに綺麗になっていく。そしてひと通りの用事が済んだら、少しくつろいでから、花音はさっさとこの部屋を後にする。

 しかし改めて驚いた。確かにあいつはカノジョ時代、ときどき僕の部屋の掃除をしてくれていたが、彼女の行動にはまったくの無駄がなかった。これじゃあ容疑の是非を証明する痕跡がぜんぜん掴めない。僕はほとほと困惑した。

 一方の優紀姉ちゃんは自分の妹でかつ、かつての僕のカノジョがテキパキと身の回りのことをこなすからか、なにやら機嫌が悪そうだった。


◇◇◇


 それから月日が流れ、あと2日で冬休みが近づくころだ。ある噂が学校中に流れる。


「えーー? 自分の妹の元カレを狙ってるってまじ?」

「その子と一緒にいるのを見たって人が結構いるみたいだよ」

「なんか相葉会長からよくアタックしてたとか」

「えー、もうそれ確定じゃん!」

「もう彼に手を出した話とかもある」

「えー、それやばー」

「それにグループチャットに例の動画と音声を流したの、なんか会長じゃないかってもっぱらのうわさだしー」

「いくら浮気をしてたからって実の妹にそこまでするー?」

「相葉生徒会会長って実は結構やばいんじゃねー?」


 どうしたことだろう。昨日辺りから急速にこの噂が広がった。一体誰がこんな悪名高い噂にしたのだろうか?

 放課後、生徒会に向かうと、いつもより人が多い気がする。部屋に入っても、廊下からがやがやと声が聞こえてくる。


「会長大丈夫ですか?」


 宮川副会長は仕事の合間合間で会長を心配する。


「大丈夫だ。単なる噂に過ぎない、気にするな」

「はい……それなら良いのですが……」


 ため息を吐きながらも、彼は席についてテキパキと仕事をこなしていた。今日は残業で会長と副会長は生徒会室に居残り、僕は会長を見ながら定時で部屋を出る。一人で帰路につくのだが、一人で歩くのは少々寂しい。

 はあ、と僕はため息交じりで帰っていると、後方からなにやら付けられる気配を感じる。まさかと思いながらも後方を意識すると、カサリカサリとやはり足音が聞こえる。もう冬だから夜はすでに暗い。僕は恐怖を抱きながら、早歩きをしてすたすた歩くと、後方も足早になる。そして僕は振り返って、おもむろに走った。そしたらそいつはビクッとして逃げる。後ろ姿からよく似た年頃の女子だった。

 僕は逃がさないように彼女の肩を掴む。


「捕まえた! 誰だ!? っ! あんたは新聞部の……」

「や、やあ喜多村君……、どうもこんにちは……」


 新聞部部長の早川愛理だった。


「どうして尾行なんか………。………まあ、新聞部のことだから大体の見当はつくが」

「あはは……」

「……まあ良い。尾行はもう中止だし、夜ももう暗い。家の近くまで送ってあげますよ」

「あら、優しいね。感謝するよ」

「いいえ」

「……これが年上女子の心を掴む生徒会会計の常套手段と」

「…………」


 多少面倒くさそうだが、まあ良い。少し彼女と話してみたいこともあったしな。

 こうして僕は彼女を家の近くまで送ることにしたのであった。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分絡みの噂でへこんでるのが分かってて待たずに帰るどころか他の女を送っていくってこの主人公ヤバイ。さすがに主人公に魅力が無さ過ぎてギブアップ
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