秘密の姿
答えはこれでした~。
5話です
「これって……」
この封筒の中に入っていたのは、ある女子を中心に写っている数枚の写真だった。まず一枚目はライブ会場だろうか。『こてつ♡LOVE』と書かれたハチ巻きを頭に巻いて、ハート型のサングラスをつけて、ペンライトを両手合わせて6本持って、楽しそうに踊っている写真だ。
二枚目もほぼ同じだったが、ハチ巻きの文字だけが『けんと♡LOVE』になっていた。そして三枚目が、
「……ぶっ!!?」
ほぼ全裸である女子が寝ている写真だった。だらしなく寝ている。パンツは穿いているみたいだが、他の大切なところは黒塗り線で隠されていた。しかし背景は一体どこだろうか……加工されて分からない。………けど、
「エロ…………」
誰か分からない女子の写真で、不甲斐にも興奮してしまった。しかし一体誰が、どうして、何の目的で、こんなプライベートな写真を……? というか、そもそもこの写っている女子は一体………ん? この左肩にぽつんとある小さなホクロって、
「まさか………」
「おはよう、直くん」
「わーーーーーーー!!!?」
僕は今にも体から心臓がはみ出しそうなくらい驚いた。え、優紀姉ちゃん……!? なにこの超がつくぐらいのバッドなタイミングは!!?
「え!? なにどうしたの!??」
「え? あ、いえ何でもないです………」
「朝から下駄箱の前に立ってなにしてるの?」
「あ、いやその~……」
まずいまずいまずいっ!! この写真を彼女に見られるのは非常にまずい! だって……、
「あら? 写真?」
「!?」
まずいまずい、早く隠さないと……!
「なんの写真? 風景? それとも歴史的建造物?」
バレてはまずいっ! だってこれは……!
「なに慌ててるのよ? あ、落としたわよ」
「!」
「もうなにして………」
「あ!!」
だってこれは………。
「あらっ。…………え? ……!!」
「~~~~~~!!」
彼女はその写真を見て、どんどん顔が赤らめ始めた。当然だ……。この写真に写っている女子は優紀姉ちゃんその人なのだから! しかし僕は一体どの写真を落としたんだ!? せめてオタクの時の写真を…………二枚とも持ってた。じゃあ優紀姉ちゃんが見てるやつ一番駄目なやつじゃん!!
「………いったいなによこれ」
「いや、僕もなにが何だかさっぱりで………!」
「バッ!!」
「ビクッ!?」
「………写真はこれだけ?」
「……え?」
「写真はこの一枚だけ?」
「……いえ、あったのはあと二枚……」
「見せて」
「……はい」
そして彼女は残りの二枚も見る。しばし無言だったが、急にふらふらし始めた。
「あ、優紀姉ちゃん!?」
僕は急いで彼女を支える。ブルブルと彼女の小さな肩が小刻みに震えてる。顔は少し泣き顔だ。
「…………幻滅したでしょ?」
「……え?」
「私がどうしようもないキャラヲタ、声優ヲタだってことに」
(キャラと声優だったのか……)
「ううん、まさか」
「……え?」
「優紀姉ちゃんは昔から何でもスマートにこなして、クールで先導能力があって、完璧でかっこいい存在だったから、ずっと遠い存在だと思ってた。けど、本当の優紀姉ちゃんは少し違ってた」
「……?」
「この写真を見て、とても純真で情熱的な一人の女の子なんだなとつくづく感じたよ」
「直くん………」
「だから自信を持って趣味にまい進してね」
「うん……。ありがとう直くん……」
「優紀姉ちゃん………」
「オホン…!」
「!?」
「仲が良いのはとても素晴らしいことだが、チャイム一分前」
◇◇◇
生徒会を終えて下校時。
「もっと早く言ってくれたら良かったのに」
「その………いままで築き上げてきた私の理想の姉のイメージが……」
「あぁ、なるほど……」
なんかそんなことを聞くと、彼女の新たな一面が知れて、余計に微笑ましい。そしてしばらく一緒に帰り道を歩いていると、くいっと彼女は僕の袖を引っ張る。やたら顔を赤らめて恥ずかしそうだ。
「?」
「………あの、その……」
「ん?」
「一枚唯一違った趣向の写真……」
「!」
「あの……その………、どうだ…」
「…っゴメン! あの写真のことはちゃんと忘れるね!!」
「………え?」
「ん? いま、なんて………」
「そうね!! あの写真は忘れましょう!!!」
「………?」
いま自分の言葉と被さってよく聞こえなかったが………まあいい。それより気になるのは……、
「一体誰があんなことを……」
「………! そうね。確かにそれは気になるわ」
いつものキリッとした優紀姉ちゃんに戻る。僕たちはあの現場の状態から色々と考えを巡らしたが、まったく良い案が浮かばない。
「特定する材料が少な過ぎるわ」
「うーん、確かに……」
と、二人で話しているその時だった。僕たちの前に突然本気な表情をしたあいつが現れたのは……!
「え!? かっ、かのん!!?」
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