残酷な現実
直樹にとっては衝撃の話です!!
2話です
……まさかっ!
僕はしばし動揺したが、顔を横に振って気を取り直そうとしたら、ガッと足に器具が当たる。
「あっ!」
カランカラン!
外にはみ出ていたフラフープ数個がドミノ倒しみたいに倒れた。その音に驚いたのか、さっき話していた二人の女子がこちらへ見に来た。
「……!? 喜多村君…!」
「……や、やあ……」
「…………聞いてた?」
「……ん? なんの話?」
「う、ううん! 聞いてないならいいの!」
そう言いながら二人はそそくさ……と立ち去った。
「…………」
僕はしばらく思考が止まったまま、作業を続けた。
◇◇◇
「どうした喜多村くん?! また計算が間違えているぞ?!」
「す、すみません!!」
副会長の宮川先輩にまた注意された。今日はミスがあの後からずっと続いている。宮川先輩の最終チェックから判明した。さきほどの体育倉庫の用具確認用紙のチェック欄で同じ箇所にハネが何個もピンをしていたようだ。
「部屋に戻ってから元気ないし……。どうした、何かあったのか?」
「…………いえ、何もないです……」
「………それなら良いが」
宮川先輩はとても心配した表情でこちらを見る。とても申し訳ない気持ちになる。言おうかどうしようか思ったが、やはりこれは言えない。噂の域を出ないし、そもそも流石に考えられないことだから……。
「仕方がないわ。今日はさっさと帰りなさい」
「会長……!」
生徒会室の窓際の真ん中に座っている彼女に言われた。生徒会会長、目はキリッとしてさらっとした黒髪ロングで、スラッとした高身長にスタイル抜群だ。生徒会会長だけあって成績優秀、スポーツ万能でその上統率能力が高い。だからその美貌と指揮能力で多くの女生徒を魅了する。
「……し、しかし」
「しかしもたかしもない。このままじゃあ仕事に支障が出る。残りは私がやっとくから早々に帰りなさい」
きっとした目で強く僕を諭す。
「…………はい」
僕は部屋を出てから、帰りしなずっとため息を吐く。他人の噂を真に受けて、仕事モードに切り替えられなかった自分が憎い。
「はあ。会長怒らせちゃったかな~……」
怒るとあの人怖いからな~、と僕は下ばかりを観ながらとぼとぼと歩きながら思った。
「あ、そうだ」
とはいえものは考えよう。せっかく早く帰れたんだから、少し遠出をしよう。少し距離はあるが、頭を冷やしがてら、この前花音と行ってとても美味しかったパフェ屋さんへ買いに行こう。あ、花音にも買ってあげようかなー。
そして僕は鼻歌を歌いながら学校からの最寄り駅に向かって、電車にガタンゴトンと揺られながら4駅目で降りた。駅からほど近い、しかし少し裏の路地に入った場所にパフェ屋さんがある。
「よし、着い………!?」
そこにはちょうどパフェを作ってもらっている花音と宗太郎の姿があった。僕はつい近くの壁の隅っこに隠れてしまった。
(なななな、なんで僕が隠れてるんだ?? それに花音のやつ、いま部活中じゃないのか!? なんで宗太郎と一緒に……??)
二人が何を話しているかはまったく分からないが、なにやら楽しそうにしゃべっていてズキッと胸が刺すように痛い。
「……でさ~……なの」
「………まじかよ~……」
しかし楽しく話すのは良いことだ。僕の親友とカノジョなんだから仲いいのは素晴らしいこと……!?
よく見たら、二人はあろうことか手を恋人つなぎで繋いでいたのだった。
「…………」
僕はポケットからスマホを取り出し二人にカメラを向ける。しかし手の震えが止まらず、まったく照準があわない。乗り込もうと思ってもそんな勇気は出ず、僕は……僕は………。
「……そんなところで何をしているの?」
「………え?」
気づけば学校の近くの河川敷に体育座りで座っていた。
「……あ、いや、これは……」
「いいわ。私も隣に座らして」
「し、しかし会長……! お尻が汚れま……」
「いまは生徒会長じゃないから、いつものように呼んでよ」
「……優紀姉ちゃん」
そう会長こと、相葉優紀は僕のカノジョの一つ上のお姉さんなのだ。相葉家には小学校のころから通っていて、花音と遊ぶ時にいつもお姉さんにお世話になっていた。いや、今でもすこぶるお世話になっている。
「で、しょげてる内容はなに? どうせ花音のこととかでしょ?」
“花音”という名前を聞いて、胸がえぐられそうだった。そして呼吸が荒くなる。
「……はあ、はあ……っ!!?」
「え!? ちょ、ちょっと大丈夫!!?」
「だ………だい……じょう……ぶ……です……!」
自分でも初めての経験で戸惑う。
「大丈夫じゃないみたいだから、急いで救急車呼ぼうか!?」
「いや、ほんと大丈夫だから、そこまで……、しないで……!」
「………そう。なら良いけど……」
「………」
「………」
そしてしばらく川を眺めていると、突然目から涙が溢れ出てきた。
「わ………!?」
「え……? 直くん!?」
何度も何度も拭いても、いっこうに涙が収まらない。止めようと気持ちとは反対にいや、むしろ止めようと思えば思うほど、止めどなく涙は流れていく。
「何でもない……。何でもない………くぁわら……」
もう声も泣いている子供のような状態だ。恥ずかしい。泣き止め、泣き止め………っ。
そしたら背後に暖かく柔らかいのが当たり、手を僕の前に回して包み込む。
「優紀姉ちゃ………!?」
「苦しかったね、辛かったね。いっぱい泣いちゃえ」
そう言われてはもう気持ちを抑えることは出来ず、僕は久しぶりに、堰を切ったようにわーーと大泣きした。
そして収まったあと、僕は理由を優紀姉ちゃんに話した。そしたら、いつも冷静沈着な彼女が瞬く間に顔を真っ赤に染め上げた。
「あの馬鹿っ!! まさかそんなことをしているなんて!!」
「ま、待って……。も、もしかしたら見間違いかもしれない……」
「……」
「と、とにかく、本当のことはなんなのかちゃんと調べないと……」
「……」
泣き終えた僕はいささか冷静さを取り戻していた。さて、これからどうするか、花音に問い詰める、それとも……、
「直くん」
「……はい?」
「とりあえずまずはあの馬鹿と別れなさいっ」
…………ふえ?
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