僕らは永遠に
最終話です。
永らく更新できず済みませんでした。
最後になりますが、ゆっくり楽しんでください。
「ひーちゃん、いらっしゃ~い」
「お邪魔しまーす」
夢野さんが相葉家にやってきた。
「ささ、部屋に入って?」
「今日はご家族の方いないの?」
「うん、みんな忙しいから」
そして花音は夢野さんを自分の部屋に連れて行き、二人で話をし始める。
「それでどう? 作ってみた?」
「うん、作ってきたよ~」
「これね……。『裏切られた彼氏』。どういう物語なの?」
「うんうん。主人公二人が仲良く付き合ってるんだけど、彼女がある男に金銭面で騙されるの。そして彼女は彼氏にお金を借りるんだけど、徐々にその男に沼っていくの。恋人同士が別れると言えば、やっぱり『裏切り』行為が一番だから」
「なるほどね~」
「うんうん」
「花音ちゃんに言われた通り、『付き合う二人が第三者の手でバッドエンドになる』を題材にして書いてみたけど、これはこれで書いてて楽しかったわ~」
「ふふ、それは良かったわ」
「どう?いま読んでみる?」
「ええ、読ませて頂くわ」
そして花音はしばらく静かにそれを読む。ときどき「ここはどうするの?」などと夢野さんに質問していた。
「あら、もうこんな時間。ひーちゃんそろそろ帰る?」
「え? まだ大丈夫よ」
「そう? でも私が少し一人でこれをちゃんと読んでみたいから」
「あ、うん。分かったわ。それじゃあ帰るね」
そう言って夢野さんは帰った。そして花音は一人、部屋でブツブツと独り言を喋る。
「ふんふん。なるほどね~。……よし、私がある男に騙されて100万円出さないと、AV出演させられると、姉さんにすがって、姉さんはなおに何割かの資金を工面してもらう……。そして実はその金は姉さんが他の男と遊ぶための資金だったとなおにバラす…」
今だ!!
「そこまでだ!!」
「……え!?」
彼女は驚きを隠せない状態で部屋のドアを見る。そう、僕はずっと相葉家にいたのだ。
「ど、どうしてなおがここに……?? だってこの家には私しかいないはず……」
「悪いが、僕の靴は隠させてもらったよ」
「………え!?」
「花音、お前の数々の悪行を明るみにするためだ」
「……!?」
明らかに動揺を隠せていない。そんなに慌てた彼女の姿を見るのは初めてかもしれない。しかしもうそんなことでひるむ僕ではない。
「分かっているはずだ。優紀姉……いや僕達を陥れるために、映像研究会という新たな同好会を作って、優紀姉ちゃんを騙したこと」
「…そんなの……っ、一体何を根拠に………」
「宗太郎から聞いた」
「……くそっ! あいつ………!」
「それと今日のことだって、夢野さんを利用して、また悪行を働こうと……」
そしたら彼女は少し不敵に笑う。
「………ふふ、確かにそうとも捉えられるわね。でもね、それを示す証拠はない。そこがなおのまだまだ甘いとこよ」
「………ふ、残念ながらある」
「な、なんで……!?しょ……証拠なんて残ってないはずよ……!」
「悪いが今日のお前の話はすべて録音させてもらってる」
「……え!?」
「お前の隣の部屋から盗聴させてもらってたんだ」
「ど、どうしてなおがそんなこと出来るの……?」
「一人では出来なくても………僕にも頼れる仲間がいるからな」
「………」
そして僕は優紀姉ちゃんと早川先輩を花音の前に呼んだ。
「………姉さん」
「………」
「こんな場だけどはっきり言わせてもらう」
「……?」
「僕は優紀姉……いや、優紀と終生をともにすることを誓う! もうお前とは金輪際付き合うなんてことは絶対にないから!」
「そ、そんな………」
「そしてお前には今までの罪を償ってもらう」
「……え」
「今から東高に転校の手続き、再受験をしてもらう」
「え、でも……そんなこといきなり言われても………」
「もし転校しなければ、うちの学校でさっきの録音を校内で流す」
「………ひ!?」
そして花音はがくっと床に膝をつき、心身ともに崩れ落ちていったのだった。
僕達が花音の部屋を調べると、今までの事件の証拠が次から々へと出てきた。
それから数ヶ月後、花音は東高に転校した。
現在うちの高校は新年度新学期の準備で真っ最中だ。生徒会室もてんやわんやだ。
「急げーー!」
「宮川君、この部の予算申請を頼む」
「はい、会長!」
「喜多村くん、これも頼む……!」
「は、はい……!?」
ひーーーー!? 大変だ~~!!
そして生徒会を終え、会長……もとい優紀姉ちゃんと一緒に帰る。
「ふー、やっぱり新年度の生徒会も大変だね」
「うん、そうね~」
「私ももうこの春から受験生かぁ」
そう、優紀姉ちゃんはこの春から三年生。そして最後の生徒会長在任期間だ。
「そうだね~」
「直くん」
「ん~……?」
「私、大学は県外に行こうと思うの」
「え……」
その発言に僕はいたく驚いた。まさか県外に行くことを考えていたとは……。隣に彼女がいない時が来ると思うと、寂しい気持ちになる。
「じゃあこうして一緒にいられるのも後1年なのか……」
彼女が大学進学すると、しばらく彼女には会えなくなるのか……。
「……」
「それでね、直くん」
「……ん?」
「もし良かったら、私と結婚を前提に一緒に暮らすとかどうかな?」
「……え?」
「近々受験と二人で生活するために、アパートを借りようと思ってるんだけど……」
「……」
「私と終生をともにしてくれるん……だよね?」
「………」
「どう………かな?」
彼女はじっと僕の顔を観る。彼女の不安げな表情がなんとも可愛らしかった。
「こちらこそ喜んで。優紀」
完
最後まで読んで頂きありがとうございました。
また、応援のほど宜しくお願いします。