過去との訣別
たいへん遅くなりました! すみません!!
直樹は気持ちの整理をしてました
怒濤の15話です
「な、直樹……」
「………」
僕は前より少しやつれた元親友を少し動きの弱ったハエのようにただ眺めていた。僕が何も言葉を発せずにただ見ていると宗太郎は、
「…ごめん!! 本当にごめん!! あの子の言葉にそそのかされたというか、つい気持ちに魔が差したというか………! 手は出してない! ほんと、ただ手を繋いだだけで………それ以上は……。いや、完全に私の出来心でした!! 本当に済みませんでした!!」
彼はひたすら頭を下げて僕に謝った。もう取り返しがつかないことをしたと言うのに……。しかし事の次第では許さなくもない。
「………分かった。お前は今でも罪の意識を持っているのが伝わった。場合によっては許そうと思っている」
「ほ、本当か!? 本当に許してくれるのか!?」
「ああ、しかし条件がある」
「………?」
「お前にしか出来ないことだ」
それからもう一人に頼むことがある。
「なに? 今回起きた事件の証拠を掴みたいって?」
「はい、貴女の力が必要です」
僕は新聞部に行って、いつものようにパソコンと睨めっこしていた早川部長に今回起きた姉ちゃんの一件について説明をした。そして頭を下げ、彼女に協力を求める。
「それはなに? いつもの職権乱用かい?」
「いえ、今回は個人としての依頼です」
「ふむ……」
「どうでしょうか……?」
彼女は腕を組んでしばらく沈黙した後、そしたら突然にハハハッと高笑いをする。
「今まで散々ボクを使っておいて、ずいぶんムシの良い話だね」
「もちろん対価は払います!」
「ふふっ………そう? けどボクはやらないよ」
「……え?」
「だって今回のことはボクの興味にはまったく触れないからね~。それに………そういうことは自分がして価値があるものだ」
「………」
「………まあ手は貸さないけどね、ただし……やり方は教えてあげなくもない」
「!」
「さてどうするかな?」
「もちろん、お願いします!!」
「ふふ……そうかい? あぁ、それと……」
「?」
「見返りは各部が言えないスキャンダルネタで頼むよ」
それから数日経ったある日曜日に宗太郎から連絡が入った。どうやら僕が頼んだ聞いてほしい相手から必要な情報を手に入れたようだ。僕はとある施設内で宗太郎と会う。僕が着いた時には、もう先に宗太郎が来ていた。
「待ったか?」
「いや、いま来たとこだ!」
「………それで、どんなこと話してた?」
「それがだな……」
しばらく宗太郎からの話を訊いていたら、やはりあいつがこの件の主犯格だった。東高の演劇部を利用して、今回の犯行に及んだらしい。
「さすがに全ては訊けなかったが、ある程度役に立つ情報は聞けたと思う!」
自信満々に答える宗太郎に僕は迷わずスルーをした。
「………なるほど、助かったよ。だから君は僕に対して罪の意識をもう持たなくて良い」
「え、それじゃあ………!?」
「だからと言ってそれ以上の関係でもない。これから僕達は単なるクラスメイトに過ぎない」
「え……そんな………。それじゃあ話が違わないか……!?」
「うぬぼれるなっ!! 僕が許すと言ったのは初めから君の罪の意識だけだ! それ以上望むのは思い上がりだぞ!?」
「そ、そんな………」
彼は床に崩れ落ちわんわんと啼き始める。僕はそれを一切気にしないで、その場に背を向けて立ち去るのだった。
そして早川先輩に宗太郎から聞いた話をしながら、僕を主軸に作戦をまとめた。
「まあ、ボクはこの線が一番やりやすいと思うよ」
「僕もそう思います」
「じゃあその方法で試してみたまえ。一番口を割ると思うよ。ボクは部室で君からの朗報を待っているから、健闘を祈る」
「はい、ありがとうございます。必ず成し遂げます」
「はーい、ではまた~」
早川先輩の電話を切ったあと、今までのことを目を閉じて頭の中で反芻する。初めて手を繋いだこと、付き合ったこと、そして遊んだこと、そして初めて出会ったこと……。
「ふう……」
僕は息を吐いて、少しずつ目を開く。気合いを入れて挑む時がきた。彼女を必ず守らないと。これ以上不幸にしないように……。
「よし、やるか」
さようなら、僕が初めて想ったあの気持ち。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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