手段を選ばず!
久しぶりに登場します!
その人物とは……?
14話です
「花音……」
花音は僕の背後で立って、静かに微笑みかけてくる。もう日が落ちて少し経つから、顔は少し見えにくいがそういう表情に見える。
「………な、なんだよ? ゆ、優紀姉ちゃんがいない時は現れない約束だろ?」
「もしかして最近姉さんとうまくいってないんじゃない?」
「!?」
ニヤニヤしながら僕に近寄ってきて、よいしょと言って図々しく隣に座る。むちっとした白い太ももをこっちに向けて体育座りをする。
「な……なにを根拠に………」
「噂になってたよ~。怒って、姉さんのクラスに突撃したんですって?」
「………」
「姉さんもなかなかやるわね~。なおに哀しい思いをさせるなんてー」
自分のことはなかったような口ぶりで言う。それに僕達が気まずくなっているからかやたら嬉しそうだ。
「星がきれー」
「………」
「覚えてる? 中学生の時に夜の山登りしたの? あの時の星も綺麗かったなー」
「………」
確かに覚えてる。あの日は僕が何も答えずにいると、花音は少しむっとする。しかしまた明るい表情に戻して、口を僕の顔に近づけ囁く。
「ねえ、なお。私たちもう一度付き合わない?」
「は?」
僕は驚いて花音を見ると、彼女は終始ニコッとした笑顔だ。まさかの言葉に僕はどんな顔をしたか分からないが、暗闇でも分かるほどの驚きの表情だっただろう。
「な、なにを考えて………」
「もう二度と浮気なんて馬鹿なことしないからっ!! お願い! なおともう一度仲直りしたいの!!」
「気持ちは分かった……が、それはない。まだ姉ちゃんと別れてないから」
「え?」
想定外の発言だったのか、先ほどと一変して花音はかなり呆れた表情になった。
「な……んで…っ!?」
「なんで、もなにも別れるはっきりした理由がないからだ」
「なんでよ!? 私の時は別れといて、なんで姉さんの時はあれで別れないのよ!!?」
「はい?」
花音の突然の怒りに、僕はただただ戸惑うばかりだった。河川敷で声を高く響かせながら、マシンガンのように言葉を続ける。
「だっておかしいじゃない!! あの状況下で私をいとも簡単に捨てたのに、姉さんもよ………なおをかなり哀しませたことをしたはずなのに!! それでもはっきりした理由がないってどういうこと!!? どうしてそんなことになるのよ!!?」
「なんか姉ちゃんと出来事に違和感があったからな」
「くっ……、あれでも方法がまだまだ甘かったってことね……!」
「ん? 甘いって一体なんのこと……」
「とにかく私は絶対諦めないから!! 私と付き合うことをちゃんと考えといて!」
そう言いながら花音はすくっと立ち上がり、この場から小走りで去って行く。その彼女の背中を眺めた時、暗闇だからいや暗闇だからこそ、僕はなにか危険な予感がした。あのまっすぐな背中はいつもなにかを進める時のそれそのものだった。
これはなにか危ない……。誰かが花音に近づいて何を考えているか分かる手立てはないか……。一体誰か………、
「あ…」
後日、僕はある人物を校舎裏に呼んだ。
「来ていたか………」
その人物は、
「お前にしてもらうことがある…………………宗太郎」
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