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裏道抜けたらケモの国   作者: 空鹿
9/14

東氏の街へ①

暗い部屋の中、耳元でピピピっとアラーム音が響いた。

付けていたイヤホンを外し起き上がる。

早速コートを着込み、その上からローブを羽織った。



計画通りここから脱出する。



まず鞄から取り出したのは

“消臭スプレー”


獣人はきっと鼻が効くだろう。

ならばこれを使ってみるしかない。



この消臭スプレーは無臭タイプ。

ただし台所用なんだよなぁ。

大丈夫か…?(汗)


まあいいや。

ないよりはマシな筈!



早速スプレーを身体中に吹きかけ鎧戸に向かった。


実はこの馬鹿力について、暇を持て余していた間に暖炉にあった火かき棒を使って色々検証してみた。



振り回す→折れない。曲がらない。


単にいじくり回す→変化なし。


曲げるぞ!と力を入れる→曲がった。


真っ二つに折るつもりで力を入れる→折れたっ(笑)



どうやらこちらが意識しなければ、この力は発動しないらしい。

それとこれは多分だけど、怒りも引き金になるんじゃないかと思う。

地面割った時、そんなつもりなかったのに割れたからね。


まあ、常に“怪力スキル”フル稼働だったら、普段の生活に支障が出るもんなぁ。



そんな事を考えながら折れた火かき棒の半分を持ち。

鎧戸を半開きにすると、鉄格子を数本まとめて左右にグニャリと思い切り広げた。

かなり広げたつもりだがやはり狭い。

折ってしまおうかとも思ったが、音で気付かれそうだったので諦めた。

広げ口に近い棒なんて、根元が細くなって今にも外れてしまいそうだ。


これ以上はまずいな…。


一先ず鞄と火かき棒を外に出す。

振り返って鎧戸を可能な限り引き寄せた後、両方の取手にイヤホンを軽く結ぶと窓枠に足を乗せ、鉄格子と窓の外の地面に手をかけた。

足やお尻でイヤホンを引っ掛けてしまわないよう注意しながら、軽く反動をつけるとやっと外へと抜け出せた。


それからすぐに腹這いになり、窓から上半身だけを覗かせると。持っていた火かき棒で(たわ)んだイヤホンのコードを引っ掛けると慎重に引き込んでいく。

すると鎧戸がゆっくり閉じ始めた。

手が届く位置まで引き寄せ、結んだイヤホンを(ほど)くと。残った隙間を指と爪で可能な限り閉めた。



やった!部屋から出られたー!



座敷牢から抜け出せた開放感を実感しながら思い切り背伸びする。


やはりここは通路のようだ。

風も少し吹いている。


照明などは見当たらないが、何故か薄ぼんやりと周囲が見渡せる。



月でも出てるのかな?



上を見上げたが月の状態などまるで分からない。

ただ上に行く程明るくなっているようだ。



さて、右と左どっちに向かうべきか…。


自分の髪が少したなびいている。

風は左から吹いて来るようだ。


火かき棒をしまい、鞄を担ぐと覚悟を決め一歩踏み出した…。


コツン…


思った以上に足音が響いてしまった。



やばっ!


これはまずい!

ローファーだと足音響いちゃう!



鞄から体育館シューズを取り出し、素早く履き替えた後、ローファーをカバンに仕舞い込んだ。



結構使い込んでるし、キュキュッという音もさほど気にならない…。

ゆっくり歩けば大丈夫だと思う。



角を曲がる度手鏡を使って様子を見るが、今のところ人影は見当らない。

しばらくすると開けた場所が見えてきた。


両のほっぺを軽く叩いて気合を入れる。



なるべく汗をかかない!

足音に注意する!

よしっ!


通路を抜けた途端、下から風が吹き上げてきた。


その風の強さに一瞬(まぶた)を閉じたが、再び目を開けると、目の前に広がった光景に思わず声を漏らしてしまった。


「嘘でしょ…?」



深夜にも関わらず。

蛍色のグリーンの光と白熱灯のような優しい光の束が、子供の頃タワーから見た東京の夜景のように遥か先まで広がっていた。



実は馬や馬車を使っているような世界だからと、かなり舐めてかかっていた。

(みやこ)といえど小さな町がより集まった小規模の街。

その程度だろうと思い込んでいたのだ。

これはちょっとどころじゃない…。

想像以上の大都市だ。




そして何よりも、自分が監禁されていた場所が、とてつもなく巨大な塔の城だという事に驚愕(きょうがく)した…。



何?

この馬鹿みたいに高い塔は…。



見上げると。


天を突き抜けるかのように高く。

それは一角獣の(ツノ)のように螺旋(らせん)状に伸びており、塔の遥か先には闇に彩られた雲がかかっているのが見える。


こんな夜更けなのに、何故そこまではっきり分かるのかというと。

まるでプロジェクションマッピングで照らされた建物のように、()()()が光を放っていたからだ。


但し光っているのは真ん中にそびえる螺旋の塔だけで。

根元付近に迫り出した。ロマネスク様式の砦に似た巨大な建造物は、中央にそびえる塔の光が当たった面が反射されているだけで発光していない。


どうやら自分はその砦?の一つにいるらしい。


それにしてもあの塔が一体どんな素材で建てられているのか想像もつかない。


街の様子は暗くて全貌は見えないが、この塔とあの夜景を見ればそれなりに発展した世界だという事が推測できる。

いや…元の世界以上に科学技術が発展した世界なのかもしれない…。

正直驚きを隠せなかった。



何というファンタジーの世界…。

明るいお陰で上も下もよく見えるけどさ……


視線を下に向けた途端絶望した。



はあぁぁぁ?


自分の立っている場所は、この馬鹿でかい塔の中でもかなり下に位置していたが。

それでも地上からは優に100メートル以上の高さがある。



あ。ダメだこれ…。

なんか逃げられる気がしなくなってきた…。


軽く目眩を起こしその場にへたり込みそうになったが、そんな暇はない!

ひとまずポケットからスマホとメモ帳を取り出し、これまで(まと)めた情報に外の様子も付け足していった。



エルとギールはあの場所を“東ヶ原(あずまがはら)”って言ってた…。

そんで東龍城(とうりゅうじょう)って城の先に東氏(とうじ)の街があるんだっけ?

その街を抜けて東へ一本道だったよね?



東は…と。



スマホのコンパスアプリを起動すると、砦の周りをグルリと歩いてみる。



なるほどあれが東龍城か。


コンパスの指した先には、塔の光に照らし出された高い壁と幾つもの黒い旗を掲げた城が見えた。

建物の構造が洋風に見えるが、どことなく日本の城のようにも見える。



あの城もデカイ…。



どうやら自分は北東の位置に立っているようで、北側に目を向けるとやはり壁は他の城に繋がっているようだ。

北の城は東龍城とはまるで違い、高く積まれたギリシャ神殿のような外観で、屋根には金色の旗がはためいている。



なるほどね…四つの城と壁がこの塔をぐるっと取り囲んでいるのか。


ふと、東龍城の正面に黒い道が続いている事に気がついた。

道を辿って下に目を向けるとそれは真っ直ぐこの塔に向かって伸びている。



この世界に飛ばされたあの日。

戦場に黒と銀の軍旗があった事。

彼等の軍服の飾緒(しょくしょ)と肩を飾っていたエポレット、襟と袖元の色を思い出した。

東氏のシルバート達は黒。

クロード達は銀色だった。


もしかして、四つの領地を象徴する色なんじゃないか?

東は黒。

北は金。

南は分からんが、西は銀という事なのだろう…。


これは良い目印になる。

黒い道を進めば東氏の街に出られるんだ。


とりあえず何とか下に降りなければ、これ以上どうすることもできない…。



非常階段みたいなのはないのかな?



隅々まで探してみたものの、それらしい階段は見当たらない。

仕方なく抜け出した窓まで戻り、今度は反対の通路へ進んでみた。




しばらく歩くと突き当たりに扉が見えた。

扉の向こうに階下へと続く階段を見つけた。


ここは外よりも更に薄暗く、それは下へ行くほど暗さを増していく。

仕方なく、スマホで足元を照らしながらゆっくり階段を降りて行った。

このまま下まで続いてるといいんだけど…。



だが、やはりそうは問屋が卸さないようで、十階くらい下りた辺りで次の扉が現れた。


そっと開けて中の様子を伺うと、さっきまでの暗さが嘘のように明るくなり、ザワザワと行き交う人の気配もする。


扉を抜け、細い通路の隅から様子を伺うと。

何十人もの獣人達が書類や積み上げられた木箱を抱えては、忙しそうに行き来していた。

シルバート達のような軍服姿や官職らしき獣人、なかには自分が着ている黒いローブ姿の獣人もいる。



こんな時間まで働いてるの?

獣人社会ブラック過ぎ…。



だがこれなら何とか紛れ込む事ができそうだ。

ならばとまた鞄の中を探ってみた。



確か二年の文化祭で使った小道具が…。


その年のクラスの出し物は“猫耳喫茶”だった。

自分は裏方担当で接客することはなかったが、全員アレを付ける事が決まっていた。


絶対入ってる筈…。


やっぱりあった!

黒い猫耳のカチューシャ。


安物のおもちゃだけど無いよりはマシだろう。

急いで頭に装着したが、カチューシャ部分が気にかかる。

全体が真っ黒なので、髪でなんとか誤魔化そうとしたがやはり限界はある…。


頭なんてフードで隠してしまえばいいいのだろうが、ローブを着た獣人達は全員それを被っていない。

一人だけフードをしていれば怪しまれるに決まっている…。


いざとなると不安になった。

こんなもので誤魔化せるもんだろうか?



でも他に方法が見つからない。

やるしかない。


念の為。

もう一度消臭スプレーを身体中に振りかけ、開けた場所へと進み出た。




「うわぁ…凄い…」


そこはまるで超高層ビルの中にある吹き抜けの回廊のようだった。


最初に目に飛び込んできたのは。

直径で何十メートルあるんだろうか…。

遥か上空までそびえる巨木のような、白く光る円柱の建造物…。

この塔を支える主柱(しゅちゅう)にも見える。


その柱?には階ごとに幾つもの扉があり。

外周の回廊とその扉の空間には、何本も朱色に塗られた欄干(らんかん)の橋が放射線状に架かっている。


下から上を見上げると、まるで一本の軸に無数の歯車が取り付けられているように見えた。

橋では獣人達が忙しそうに行き来している。



もしかして…あの扉の向こうはエレベーター?

でも変だな…随分と回転率が良くない…?



普通のエレベーターなら、移動待ちの人達が並んでいてもおかしくない。


だが。

だが彼等は同じ扉から矢継ぎ早に出入りしている。

何より誰一人として同一の獣人を見かけないのは、あの扉が移動手段として使われているからなのでは?


ならばあそこから地上に降りる事ができるはず…だが…。



あそこに入るのはちょっと怖いな。

下手したらシルバート達と鉢合わせって展開もありえるし…。



いかん。危険すぎる。


あれだけの人数が利用しているのだ。

もしもエレベーターだとしたら、至近距離でこの耳を見られたら絶対に怪しまれる。

バレる可能性が高過ぎる。



他に移動できる場所はないかと辺りを見回していると。

明らかに周りの獣人達とは雰囲気の違う集団が中央の扉から現れた。



あれは女官(わらし)



橋を渡り終えた数人の女官達が向かっているのは、奥まった場所にある狭く暗い通路だ。

獣人の姿はない。

女官専用の通路なのだろうか?



スタッフ以外お断り的な?


どうしよう…。

こんなバレバレな変装をしている自分が通ったら怪しまれるだろうな…。


…いや待てよ?


確か彼女達って、自分の仕事以外に興味示した事なかったよね?

ダメ元で行ってみる?



迷った挙句、意を決して彼女達の後を追う事にした。


気付かれないよう、見失わないように彼女達の後を付けていく。


座敷牢では特に気に留めていなかったが、皆小さい女の子だ。

歳は十二、三歳位だろうか?


目の前を綺麗に整列して進む女官達は、皆一様に同じ背丈。同じ髪型、揃いの衣装。


まるでコピー人形のようだ。



おかっぱ頭に臙脂(えんじ)色の服…。


あれ?あの服。

全身同じ色で気付かなかったけど…。白拍子(しらびょうし)が着るような水干(すいかん)によく似てる。


獣人の中にも、狩衣(かりごろも)みたいな服着てた人達が居たな。

あれは官服?

ここって和風の異世界?


※狩衣は平安時代以降の公家の服。

神社の神主などが(まと)っている衣装だ。


あの豪華な座敷牢もこの建物も、和風と洋風が混じった造りだったな…。

うん。

どちらかと言えば、和風テイストが強い気がする。


そうだ。

シルバートも和風の鎧付けてたっけ。

装飾なんかは、なんとなくファンタジー要素は入ってたけど…。


日本と何か関係でもあるんだろうか?


でもクロード達は洋風の甲冑…。

しかも中世の騎士が付けるようなフルプレートタイプ。


洋風と和風がごちゃ混ぜになってるよね。


両方とも兜は付けてなかったけど…。

あ、耳が邪魔なのかな?



それにしても…この世界に対し違和感をあまり感じていないのは、知ってるものが多いせい?

勿論、今の日本とは大きくかけ離れているし、時代様式や文化などは旧式スタイルに見える…。


世界観が自分が居た世界と似てるからそんな気がするだけ?




あれこれ考えながら随分歩いたが、彼女達は黙々と歩き続けている。



一体どこまで行くんだろう…。


女官って狐の獣人…だよね?

よくみると耳と尻尾の色は微妙に違う。

ような…気がする…。


いや…まあ区別はつかんけどな…。



それにしても。

角を曲がる度チラリと見える彼女達の顔からは、まるで生気が感じられない。


本当に人形なんじゃなかろうか…。



そうこうしている内に。

女官達は扉が大きく開かれた部屋へと入っていった。

すると入れ替わりに、お膳を持った女官達がぞろぞろと列を成し部屋を出て行く。

そのままこちらには見向きもせず奥の廊下へとお膳を運んで行った。


ここは厨房……?


「‼︎」


身をかがめ部屋を覗いた途端ギョッとした。


ここはやはり厨房のようだ。


調理帽を被った細身で背の高い獣人達が一心不乱に調理している。

何より不気味なのは※丈長(たけなが)で綺麗に巻かれた尻尾と、額から顎にかけて白い紙を垂らした料理人の姿だった。

あまりにも異様過ぎて、背筋に走る悪寒が止まらない。


※丈長…巫女の髪に巻かれた紙。



何あれ…マスクのつもり?

顔全体覆う必要あんの?

てか、それで前見えてんの??



怖い気持ちとは裏腹に、思わずツッコミを声に出しそうになった自分に少し呆れた。



彼等が調理し終えると、前掛けをした太めの女中が足付きのお盆の上に綺麗に配膳していく。

女官達は仕上がったお膳を持っていそいそと部屋を出て行く。


どうやら料理人も女中も狐らしい。

お城勤の獣人は全員“狐族”なのだろうか?



こんな夜中に宴会でもやってんの?



身をかがめたまま、様子を見るのに夢中になっていた私の前に。

ヌッと誰かが立ちはだかった。



「え?」


見上げると。

料理人の一人が私にお膳を差し出している。


「はい?…これ何?」


女官と勘違いしてる?

でも彼女達と私じゃ見間違えようにも…。


困った顔をしている私に、彼は再びお膳を突き出した。



え〜〜〜…。



仕方なく受け取ると、今しがた女官達が出て行った方を顎で促し、そのままフイっと調理場へ戻って行った。



どうしろってんだ…。



仕方なく小走りで彼女達の後を追った。


ようやく追いついたが、やはり女官がこちらを気にする素振りはない…。


いや。

最後尾にいた女官が突然歩みを止め振り返った。


「‼︎」


うっ!バレたっ!


彼女は眉一つ動かす事なく、ただじっとこちらを見つめてくる。


終わった…。


そのうち悲鳴を上げるか、何かしらの手段で衛兵を呼ばれるのだろう。

もう観念するしかないと覚悟した。



だが、何を思ったのか彼女はクルリと向き直り、スタスタと前を歩いて行く。



あれ?何で?


訳がわからず立ち尽くしていると。

彼女はまたこちらを見て、首を進行方向に傾けた。



来いって事?


仕方なく彼女の後に続いた。



目的地は何処なのだろうか。


所々で角を曲がる事はあったが。

窓もない暗い廊下を道なりに歩いているだけで、不安は増すばかりだ…。


お膳に乗っているのは、朱塗の大きなお椀に、蓋付きの黒い小鉢。

そして盃とお銚子(ちょうし)

大した量でもないが、長く持っていると流石に疲れてくる。



ところが突然。

少なくとも百段以上はあるだろうという登り階段が目の前に現れた。



ちょ…マジか…。

また上に逆戻り???



女官達はするすると列を乱す事なく登って行くが、こっちはそうはいかない…。


丸二日眠っていたとはいえ流石に辛い。


実は目が覚めてから…いやこちらの世界に飛ばされてからずっと気が休まらず、精神的にもかなり削られている。


やっと牢から抜け出せたのに、なぜこうなるのかと。

誰でもいいからクレーム入れてやりたい気分だ。



さっきの女官がまた振り返った。


ああ〜。

はいはい…分かりましたよ…。


はぁ…と深くため息を吐き、ゆっくり階段を登り始めた。


階段を登る足取りが重い…。

何でこんな目に遭わなきゃならんのだ…。


なんとか半分登ったところで異変に気が付いた。


重い…。

いや。これは疲れから来るものじゃない。

本当に身体が重い!


正確に言うと身体を取り巻く空気が重いのだ。


階段を上がる度ひどい倦怠感に襲われる。



ちょっとこれは洒落にならん…。


立ち止まると女官が振り返る。



心配してる?

それとも急かしてる?


彼女の表情からは何も伝わってこない。


戻るという選択肢のないこの状況。

進むしかない…根性出せ!



やっとの思いで登り終え、顔上げるとまた長い廊下が続いていた。


だが今までとは様子が違う。

左の壁には金や銀、赤に彩られた枠の紙障子(かみしょうじ)が並んでおり。

女官は既に、それぞれが戸の前で正座して何かを待っている。


すると。

戸はスッと一斉に開き、再び立ち上がった女官達が部屋へと入って行った。


さっきの女官が私を見つめ、視線で奥の黒い枠の障子の前へ行くよう促した。


仕方なく戸の前で正座すると、やはり戸は勝手に開き始める。


身体中に倦怠感が残ったまま、朦朧(もうろう)としながらその様子を見ていると急に目の前が眩しくなった。


これ…もしかして夢?


そう思えるほどフワフワと身体は軽くなり。

柔らかい布団に包まれた感触がしたかと思うと、さっきまでの(だる)さが消えていった。


しばらくその心地良さに浸っていると。

突然耳元で神楽鈴の音が一つ。

シャンッと鳴り響いた。


ハッと我に帰ると、いつの間にか部屋の中で立っていた。



夢じゃない!

一体これは何だ?



目の前には黒い紙垂(しで)の付いたしめ縄に囲まれた、真っ黒な炎が燃えていた。


やがて炎の一部が長い腕のようにこちらへ伸びてくる。



うぎゃぁぁぁ!怖い怖い怖い怖いっ!

ちょっとぉー!

さっきの料理人といい、こんなホラーな展開予想してなかったってばっ!



あ。

ダメだ喰われちゃうかも…。




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