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寝坊助に人権はない

初投稿です!

作者の趣味全開!厨二全開!よろしくお願いします!


乱歩なんて言ってますがミステリーは書けません!かっこいいから言ってます!


「言葉がどのようにして発せられる分かるか」


―――遠い記憶。思い出すとかそんな生易しいものではない。

遺伝子に、魂に染み付いている記憶。


目の前の僕に向かって厳しい視線を向ける初老の男。

どうしても男が右手に持つ杖に目線がいってしまう。


”分かりません”と、そう答えた記憶がある。

するとやっぱり杖で殴られた。痛かった。


右の頬に残るジンジンとした痛みに耐えかねて思わず涙目で伏せていると、


「そうやってすぐ言葉で逃げるのがお前の悪い癖だ。答えろ」と、


苛立ちを隠そうともしない声色で追い打ちをかけてくる。

僕の幼少期はそんな杖による暴力と、言葉による暴力の日々だった。


”・・・声帯が震えて・・それで空気が震えて・・・鳴る・・ものですか?”


恐怖と痛みが原因で、おずおずと、慄き慄きそう答えた。やっぱり殴られた。


「・・では、人の口から出る”声”と”言葉”はどう違うというのだ」


――――違うのは、”心”の有無。

――――言葉とは、心が震え、声帯が震え、空気が震え、

――――”成る”ものである。


   ■■■


目が覚めるとそこは――家だった。自室だった。

見知った天井をボーっと眺めながら、見ていた夢について考える。


「夢の中でくらい休ませてよ・・・じっちゃん」


考えれば考えるほど、気分の滅入る夢。最悪の目覚めである。

終わり良ければ全て良しとは言うものの、始まりが悪ければやっぱりやる気は出ないもので・・


「寝よう」

「そうはギルドが卸さないよ」


そんな諺は初めて聞くなぁ・・・って

僕の意を決した二度寝宣言の出鼻を挫くように、ピシャリと。

その人――ギルドマスター兼僕の世話係であるスカイラーが、ベッドの横でさもありなんと腕を生んで仁王立ちをしていた。


「なんで居るの?」

「いつまで寝てるの?あと、私はお前の世話係ではない」

「朝飯前のように人の心を読むのはやめて?」

「もう昼飯前よ」


時計をみると、確かに昼飯の時間であった。


「言い訳を聞くなら・・・言い訳が効くなら、言い訳を述べたい」

「寝坊助に人権はない」

「さすがに言い過ぎでは?」

「言い過ぎではない。その様子だとさては私との約束も忘却の彼方って感じね」


その言葉を聞いてハッとする。確か今日は――


「・・・・」

「言い訳は?」

「ございません」

「人権も?」

「ございません」

「よろしい。ではとっとと起きて、私との約束を果たしなさい」


怖い・・・さすがギルドマスター、その可憐な見た目とは裏腹の横柄・・毅然とした態度である。

まあそんな彼女だからこそのギルドマスター、そして国内「めちゃカワ冒険者ランキング(酔っぱらいの冒険者が言っていた)」1位の座についているだけある。


そう囃し立てたくなる気持ちもわかる。

綺麗に肩の高さで揃えられた漆黒の髪は、触らなくてもその手触りが素晴らしいものであると分かる。

身長が高いわけではないが、その一本筋の通った立ち振る舞いや姿勢は、凛とした雰囲気と、冒険者としての実力が相当なものだというオーラを醸し出している。


肌も冒険者でありながら透き通るように白く、一部では”氷帝””雪姫”といったように、その白に目を引かれて――そんな彼女に惹かれて二つ名まで付くほどだ。

(ちなみに彼女に熱烈なアプローチを行う冒険者は後を絶たないが、どれも例外なくドン引かれている)


性格は兎も角として、月並みな表現だけど彼女はとても綺麗だと思う。


「”月並みな表現”って言葉、私嫌いなのよね。たかだか人間の口からでた言葉を、壮大な夜空に浮かぶ月と比べた挙句、”並み”って。おこがましいにも程がある」


そんな可憐な見た目とは裏腹に、スカイラーの毒舌は筆舌に尽くしがたく猛威を振るう。

(その毒舌が更なるファンの獲得に一役買っているのだが・・・)


「だから人の心を読まないでってば・・・あと、”月並み”って言葉はもともと”毎月”とか”月ごと”とかそういう習慣を表す言葉が語源であって、夜空に浮かぶ月は関係ない・・・」

「煩い。私はそもそも”月”って言葉が嫌いなの」

「・・・それは僕の名前を知ってて仰っているのですか?」

「そうよ。Fランク冒険者”ハヅキ”くん」


そんな嫌味たっぷり不機嫌マシマシなスカイラーと会話をしながら、ギルド寮から本館に向かう廊下を歩く。

昼前ということもあり、午前中の狩りを終え部屋に戻る冒険者や、食堂にむかう人々等で結構廊下は混雑している。


そんな中を前述したように有名人であるスカイラーと、それはもう仲睦まじく並んで歩いているのだから嫌でも注目を集めてしまう。もちろん大半――というかほぼ100%、負の感情が僕に向けられている。


「ところで聞いた?隣のジュノ国が勇者パーティ候補を16人まで絞ったって。近々大会を開いて、絞られた16人を戦わせるらしいわ。・・・まったく。長命種族のくせに事を急いてるのは何でなのかしらね」


そんな周りに対して露程の気遣いもなく、スカイラーは平然と会話を続けている。さすがの胆力である。


「・・・シュラノはどうなってるの?」

「うちの国はどうせキヌガサ一族が名乗りを上げるでしょ。いつものことよ。なんせ今年のキヌガサの頭は歴代最強とか。ま、興味ないけど」

「ふ~ん・・・スカイラーは?勇者パーティになろうとは思わないの?」

「しつこいわね。私はギルドマスターとしての仕事があるし、そもそもパーティーを組むのも嫌。それに”塔”とやらにも興味ない」


うむ。スカイラー程の実力と人気があれば絶対に勇者パーティーとして活躍できると思うんだけど・・・まあ本人が興味ないと言うのだから仕方がない。


「そういうハヅキは?」

「ん?」

「いつも私に聞いてばかりだけど、あんたは塔を目指そうって気はないの?」

「・・・Fランク冒険者なので」


僕が塔を目指すなんて言ったら、それこそ先ほどから僕に冷ややかな目を向けている連中のお笑い草――正に戯言である。

一部特例を除き、冒険者はその実力・実績をもとにF~Sのランクがつけられている。

現にスカイラーは間違いなく国内トップクラスのA+。

そもそも勇者とやらは冒険者ランクにするとSSランクだと言われている。要は化け物だ。


先ほど廊下ですれ違ったこのギルドで中堅と言われる冒険者でさえも、B-の実力なのだから、いかに僕が冒険者として劣った存在か分かるはずだ。――Fっておま。


スカイラーは僕の回答が気に食わなかったのか、「またそうやって・・・」と呆れ顔である。


そうこうしている内に、目的地――すなわちギルド本館に到着した。


「・・・久々に来たけど凄い人の数だね」

「そりゃそうよ。ほかの三国と違って、シュラノにはギルドがここしかないんだもの。ほんっと・・管理する私の身にもなれって話よね。慣れたけど」

「何事も慣れって話だね」


ギルドの本館とはすなわち・・・この国の武力・財力・知力の集合地だといえる。この国の場合は特に。

少し見回しただけで、狩りの準備をする冒険者、露店で装備や日用品を売っている商人・食事をしながら情報を交換し合う一団等、とにかく様々な人々で本館は喧騒に包まれている。


久々の人込みでどんよりしながら歩いていると、浴衣に身を包んだ受付の女性がカウンターから身を乗り出し、困り顔で声をかけてきた。


「スカイラーさん!ちょっと・・・」


何やら気まずそうにスカイラーに助けを求めているようである。

これだけのヒト・モノ・カネ・情報が集まるギルドのマスター、五十歩もあるけば一つは厄介ごとがその身に舞い込んでくる。


いつもなら適当にあしらって、”ギルド管理人”と呼ばれる部下に仕事を任せるのだが・・・


「悪いハヅキ。急用よ」


何やら緊急事態のようだ。ギルドのマスターであるスカイラーが現場に出る程の事態ということか。

僕は「気にしないで」と右手をヒラヒラさせて承諾した。もとはと言えば僕が寝坊したのが悪いわけで・・


「そしたら僕は休養といこうかな。久々に大仙湯(だいせんとう)でも行くよ」

「ついさっきまで寝てたくせに休養って。まあいいわ。夕方までには片付けるから、本館で待ってて。」


そういってスカイラーは”管理人以外立入りを禁ず”と書かれた扉に消えていった。

扉が閉まる直前、何やら不穏な空気を感じたが、まあスカイラーなら大丈夫だろう。


――あんたが私を守る。私もあんたを守る。いい?これは契約よ。お互いが主語の守護契約。


もし万が一があっても大丈夫。僕がいるから、スカイラーは大丈夫。



最後まで読んで頂きありがとうございます!


感想や指摘もどしどし応募してます!

今後ともよろしくお願いいたします。

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