ミソラ冒険者に戻る 王都東門外討伐記 その1
投稿します。
昨日の疲れはミソラには残っていない、すぐに支度してドネルグを迎えに行き、ギルドに顔を出していた。
「おぅミソラ。昨日はありがとよ。高位冒険者が留守でいないから助かったぞ。」
「ギルマス。いえいえ昨日はソフィアちゃんと買い物のついでです。」
「なんだ、その王女様と買い物か、ミソラもずいぶん王に気に入られていると言う事だな。」
「ソフィアちゃんにもね。」
「それで今日は?」
「もう体が鈍って・・依頼を受けようと思ってきました。」
「帰ってきて、まだ2日だぞ。もうやるのか。」
「はい。やります。」
「解った。アリン、ミソラが冒険者再開だそうだ、なにか依頼あるか。」
「ミソラさん。今張りだすところでした。この依頼受けますか。」
「どれどれ、王都東門に来る東山のゴーレム退治ですか。」
「ミソラはゴーレムと戦ったことないだろ。ゴーレムは体が岩の様に固く剣が通らない。何度も同じところを叩いてダメージを与えるのだが・・ハイゴーレムは回復もするので厄介だぞ。今回の依頼は・・・普通のゴーレムだな。なら大丈夫だろう。もしハイゴーレムが混ざっていたら東門にある投擲機でやっつけるのがセオリーだぞ。」
「ゴーレム・・」ミソラの目が光る。
「やる気なのは良い。アリン引き受けるそうだぞ。」
「ミソラさん大丈夫?普通のゴーレムはCランクで討伐できるけど、ハイゴーレムはBランクですから、危ないと思ったら東門におびき出して門の兵士に投擲機を使ってもらってください。」
「はい。了解です。ドネルグこれで良い?」
「ミソラが大丈夫なら良いと思うよ。」
「よし、決まり。これにする。」
「そうか。やるか、これでBランクの個人資格は超える事になる。あとはチームだけだな。」
「チームか・・卒業まで無理かな。」
「元気に行ってこい。」
「行ってきます。」
ミソラとドネルグは王都東門に向かって歩き出す。
普段は西門ばかりで魔物退治を行っていたのだが、今のミソラの実力では弱すぎてつまらなかった。
そして、より強い魔物がいる東門の依頼を受けたのだった。
王都は北、西に賑やかな門があり、街も栄えている。
王都東門は主に東の山脈にある石炭を掘り出し、王都に運ぶための通用門であり、魔物もDランクからAランクまで確認されており、初級中級向けの西門、中級向けの北門、上級向けの東門と分類されている。
なお噂だが、東山脈には「神々の通路」があると噂されていて、ハイエルフも少数だがいると聞く。
殆どのハイエルフは女神教が作ったサービウエル島の大神殿に暮らしている。
ただし、聖地巡礼など神格化に怒ったハイエルフが大神殿一帯を立ち入り禁止の場所にしてしまった。
近寄ると頭痛がして、尚も進むと体がマヒして動けなくなり、最後に呼吸もできなくなり死んでしまうらしい。アトラム王国で唯一禁忌の場所であった。
神殿の神官全員を殺したと噂があるが真偽のほどは解らない。
それでも懲りない女神教は、王都の東山脈をはさんだ、トリタリ街の近くにある湖に元からあった古代遺跡を改造して教会にしてしまい。今ではこれが女神教の本山となっている。
話を戻そう。
石炭流通の為の通用門となっている東門は、通用門と呼ばれているが、石炭や大型の木造機械を出し入れする為に門自体は大きい。西門の3倍はある大きさで、魔物が王都に侵入しない様に何重もの障害物や溝を掘り、大型の投擲機も6機が常設してある。
兵士の数も多く、常時500名の兵が魔物侵入を見張っていた。
魔物が現れた時には、冒険者ギルドに上位冒険者への依頼として仕事が入る事がある。
今回の依頼もそれであった。
「ドネルグ、なんか西門周辺って・・・・」
「言いたい事は判るよ。なんか空気が淀んで街も薄汚れた感じだと言いたいのだろ。」
「うん。そんな感じ。」
「ここ西門周辺は、東山脈で石炭を掘り出す労働者や石炭を使う鍛冶屋などが多いからね。西や北と違う雰囲気だと思うよ。」
「うん。華やかな王都にもこんな所があっただなんて。不思議だなと思った。」
「そうか。東門初めてだったの?依頼受けて良かったの?」
「うん。何とかなるでしょ。」
「ミソラ、注意しておくけど、東門は上級者向けの地区だからね。心して臨んでね。」
「うん。」
「ミソラこの路地から南側は貧民街と呼ばれている、犯罪も多い地区だよ。」
「王都にもこんな所が・・・昨日王女と買い物に行ったのに、落差が激しすぎる。」
「えっソフィア王女と買い物。」
「うん。そう。」
「そっか、王女も貧民街など知らないと思うけど。」
「私も知らなかった。」
王城から東に歩いてきたミソラ達は、途中から突然変わる景色に戸惑いを覚えていた。
東の門に進む通路は大きくもあったが、何かくすんだ様に見える。
行きかう人も、兵士とよごれた工夫が主で、主婦や子供は殆ど見かけない。
東門に近付いてきた。
「とまれ。ここは子供の来るところではない。」
「あっ冒険者のミソラと言います。東門外での討伐を受けてきました。」
「冒険者?お前がか、東門の外は地獄だぞ、工夫達も兵士の護衛付きで鉱山に入るのだ、護衛無しで大丈夫なのか。」
「はい。これ。」ミソラは依頼書とギルドマスターの書簡を渡す。
「えっお前Cランク冒険者なのか。」
「ええ。一応。」
「それは失礼した。昨日からストーンゴーレムが時々鉱山の道に出てくる事があり、困っていたのだ。
我々兵士でも100人で1匹やれるかどうかだからな。」
「兵士100人でですか・・」
「通行は許可する。ただし危なくなった東門までゴーレムを連れて逃げてくれ、我々が投擲機でとどめを刺す。」
「ええ、ギルドからもその様に言われています。」
「なら大丈夫だろう。横の通用口から外に行けるから気を付けて行けよ。」
「有難うございます。」
ミソラとドネルグは通用門と言われる東門の小さな通用口・・・から外に出る。
「ドネルグ、迷路みたい。」
「魔物侵入させない用心だろう。それに足止め効果もあると思うよ。」
「それで投擲か。納得。」
「行こうか。」
「うん。行こう。」
二人は迷路のような通路を通り、外堀の外に出た。
「さっき聞いたら、ここから鉱山までは一本道らしいよ。」
「なら簡単。私が先を歩くから、ドネルグは後ろを警戒してついて来て。」
「わかった。」
二人は坂道になっている幅の広いなだらかな山道を歩いて行く、魔物遭遇を想定してゆっくり進む。
向こうから大きな馬車がやってくる。道の端に避けるミソラとドネルグ。
馬車には大量の石炭と真っ黒になった人らしきものが乗っている。
ミソラは手を振った。
真っ黒な塊が手を振り返す。
「あれ、人だったの。」
「炭鉱の工夫さん達だね。煤で真っ黒だね。」
「体大丈夫なのかな。」
「東門で、水浴びして、ヒールを受けるらしいよ。沢山の煤や石炭の砕けた物をすい込んでいるからね。」
「そっそっか。大変な仕事だね。」
「でも、そんな石炭工夫のおかげて僕たちは生活が出来るのだから感謝だな。」
「うん。」
さらに二人は進む。
ありがとうございます。