022 商人とは
「本当に行くんですの?」
「そもそも公国に行くのに金を払うか頭を下げれば裏道を使えたところをそうしなかったわけだ。無理やり押し通るつもりだったんだろうが」
「それは……そうですが……」
公国とて貿易相手にいちいち危険を冒させることは望んでいない。
道の使用権は条件付きで買い取れるのだ。
だが今回それを選ばなかったと言うことは、そこにそれだけの意図があると言うことになる。
「公国に下に見られず、金を融通させたいらしいが……そもそも行ってからが問題だぞ? いくら王家の人間と大臣が直々に出向いたところで、あの国に意味はほとんどない」
「……」
「お前らのようなメンツにこだわる貴族たちはそのあたりを高くみるかも知らんが、あいつらは根っからの商人。権威ではなく損得で選ぶ。そのための権威というならいいかもしれんが、見てる限りそこに策はないんだろう?」
「全く……味方に引き込めたのは良かったですがこうも少ない情報から的確に突っ込まれるとは……」
リーマスはお手上げと言わんばかりに呟いた。
「私はそう安くないつもりだったけれど……」
「身分、権威、どれをとっても失礼のない最上の土産だが、それがどう金になる?」
「金に……?」
「お前が嫁いだら公国は儲かるか、そこだけが判断軸だぞ?」
「そこまでですの!?」
「リーマス、あんたは知ってるだろ?」
外交大臣がその事情を知らないわけはない。
「そうですな……」
「ちょっと!? じゃあどうして……」
「わざわざルーク殿がここまで踏み込んできてくださるとは……」
「え?」
ルークが不適に笑う。
そう。リーマスははじめからルーク頼みでこの作戦を考えていたのだ。姫であるメリリルに黙って。
「公国にはあんたより俺の方がありがたいわけだ」
リーマスにしてやられたメリリルだが、それはもちろんメリリルの身を守るためである。
リーマスはメリリルを高く買っている。経験がなく多少浅慮が目立つが、それはこれから埋めれば良いこと。こんな形で望まぬ政略結婚の道具にされていい器ではないと見込んでいた。
一方でルークもまた、ギルドマスターシャナハンにしてやられた形になっている。
もちろんこちらもまた、その身を守るためのものだったので何も言えないわけだが。
「公国の相手は俺がやる。その代わりあんたはまだ王国に尽くせ」
「どういうことかしら……?」
「ルーク殿の目下の目的は仲間の奪還でしょう」
「そうなの?」
疑問視するメリリルの表情。当然、根本的なルークの目的を把握していないわけではない。
「貴方なら……むぐっ!?」
ルークが口をふさぐ。籠には3人しかいないにしても、これは王家が口にしていい話ではない。
代わりにルークが仕方なく次ぐことになる。
「俺なら今の警備程度、三千全て回収してまた盗賊をやるってのもできるがな」
そうしないだけの理由があることを言外に物語ってから、顔を赤くする王女の口から手を離した。
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