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001 洗礼

 冒険者ギルドは今日も大いに盛り上がっていた。

 活気ある酒場で飲み食いをするのは見るからに粗暴な筋肉隆々の男たちがほとんどだ。

 そんな屈強な男たちが騒ぎ立てる中、ルークは歩みを進めた。


「まずここに来いって話だったか……おい、誰かいねえのか」

「なんだ兄ちゃん、新人か?」

「そうだな」

「なるほどなるほど、よーしじゃあ俺らがここのルールを教えてやろう」


 男の姿を見て声をかけたのは対照的な体格をした二人組だった。どちらかといえば横に幅を取る大柄の男と、比較的細身だが見える場所だけで傷痕が数カ所見える、どうみても堅気ではない男。二人が下品な笑い声を上げてルークに絡んだ。


「まずここを通るにゃ俺らに銀貨3枚払わなならん。それが新人のルールってもんだ」

「ぎゃははは。今なら大負けに負けて2枚にしておいてやろうか?」


 新人を見て調子付く男たち。

 珍しい漆黒の髪を無造作になびかせるルークは、初心者狩りを趣味とする男たちから見れば格好の獲物に思えたのだろう。

 だがルーク自身もまた、街中で見かければまず距離を置きたくなるほど鋭い眼光と、一見細身な身体からそれでもなお鍛え抜かれた肉体美を感じさせる容姿をしているのだが、酔った男たちにそれ見抜けなかったらしい。

 ルークは冷ややかに二人を見つめた。


「おい兄ちゃん、なにガン飛ばしてんだ? あぁ?!」


 威嚇するように机を蹴り飛ばす男に、誰も注意するものはいなかった。

 むしろ自分にとばっちりが来ないよう、目線を合わせないことに必死だ。


「おいおい兄ちゃんよぉ? 俺らは金()()ですましてやろうって言ってんだぜ?」

「いまなら地べた這いつくばって謝れば……は?」


 気づけば絡んでいたでかい方の男がなぜか地べたを這っていた。


「てめえなにしやが……へびょ⁉」


 続いてもう一人もギルドの床に叩きつけられた。顔を足置きにされるおまけ付きで。


「おい。その程度でなにを奪おうってんだ?」

「てめぇ……俺らにこんなことしていでででで」

「状況が見えてねえようだな?」


 ルークの冷酷な瞳が男を突き刺す。今もなお足は顔から退かされていない。


「くそっ……」


 太った方の男が睨むがルークはどこ吹く風だった。

 むしろ足に入れる力を徐々に強める始末だった。


「ぎゃあぁぁあ。いでえ! おいてめえ! ぎゃっ……」


 何か言うたび床にめり込んでいく男二人。

 と、そこに一人の男が現れた。


「まぁまぁそのくらいにしたまえ」


 仲裁に現れたのはこの近辺の伯爵家の子息、ベッキャルだった。形だけ立派な装備を整えているものの本人にあまり資質はなく、コネだけでCランクになった男である。


「誰だ?」

「おやおや。私を知らないとは……私はビンガル家の跡取り。今は社会勉強としてこのような――」

「あーあのおっさんのとこのガキか」

「……は?」


 空気が止まった。


「私の父を、いま……なんと?」

「あ? デブのおっさんだろうに。なぁ? ちったぁ痩せたか?」

「貴様……そうだな。貴様はこの辺りでも見ない顔、余程の田舎者と見た。この地域のルールを、冒険者としてのしつけを私が直々にしてやろう」


 ビキビキと青筋を立てたベッギャルが杖を手に取る。

 周囲の人間がさっとルークの周りを離れた。

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