018 内容確認
エルモンド商業公国。
商人たちが集って国を名乗った土地は、周囲を山々で囲んだ防衛都市である。
もともと帝国から独立を図ったこともあり実際にその防衛能力は絶大なものであった。
「あやつら商人たち用の専用の連絡通路を複数持ちながら、外部からの来客でもそれを使わせんからな」
「そうだったな」
国を跨いだ輸送は多くの危険が伴う。そのため同じ品が一つ国境を越えると倍額にというケースも多い。地域でしか生産できないものは場所により価値が大きく変わるのだ。
商業公国は近隣6つの国々と貿易を行うことで利益を上げる。
「お前さん、一応言っておくが……」
「わかってらぁ。流石に第一王女に俺らが使ってるルートは使わせん」
ルークたちは当然のように公国の公開していない情報を元に専用の経路をいくつか利用可能な状態にはしていたが、流石に今回それを使えないことはわかっていた。
「なら頼む」
「いやいや、この手の話は格の問題も出てくるだろう。俺が出張ればおっさんが……」
ルークがためらうのはもっともなことだった。
王家や貴族は格式にこだわるプライドの高い連中であることがほとんどだ。それがBランクを要求しておいてFランクのルーキーを送り込んできたとなれば、逆鱗に触れることは容易く想定された。
だがシャナハンはそんなルークの心配を笑い飛ばしてこういう。
「良い。むしろ逆だ」
「逆?」
「ライカのFランクはここまでのレベルなのかと、周囲を驚かせてやれ」
ニタっと笑うシャナハン。
「それだけじゃねえだろ……」
シャナハンがあえて言わない事情は二つあった。
一つはこのクエストがルークの部下たちの救出に繋がる話だということ。王家の威光は絶大である。継承権がないとはいえ第一王女に覚えられるというのは大きな意味を持つ。もしここで恩を売れたなら、シャナハンであれば先程のルークの率いた幻夢の盗賊団の部下たちの開放への話を取り付けやすくなることもわかる。
なのでこれはシャナハンがあえて言わない、ルークのための理由。
そして二つ目はどちらにとっても複雑な話になるが、盗賊王ルークとその大盗賊団が消えたことにより、街道を外れるとこれまででは考えられないほどの山賊や盗賊が現れるようになっていた。
この状況はルークにとってもあまり歓迎すべき状況ではないが、率先して解決する必要がある問題というわけでもないもの。そもそも部下たちがすべて拘束されていることになっているこの状況で、根本的な解決には至らないと言う話もある。
だが、ただの冒険者に任せきれない裏側の対策まで頭に入れる必要があるという部分に対して、ルーク以外に適任がいないという事情があった。
「わかってるなら安心だ」
「しゃあないな……」
これでルークにとってこのクエストは、ただの護衛任務ではなくなる。
顔見せのためのわずかな時間の中で力を見せ、王女に名前を売り込み、最終的に選ばれる必要がある。
「お前さんがその目を見せたということはまあ、任せて安心だな」
「言ってろ」
すでにルークの頭の中ではいかにして公国まで王女を運ぶかという段階まで踏み込んでいた。
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