017 任務
「貴方が護衛かしら? ランクは?」
約束の場所につくなりルークはため息を吐いた。
声をかけてきたのがこの国の第一王女メリリル=ヴィ=ディターリア。
ルークをして見たこともない素材で作られた銀白のドレス。流れるような美しい金髪。透き通るような肌。目元が釣り上がっていてなお、それを含めて芸術品のような美しさを携える容姿。
男女問わず見るものを惹きつけるオーラがあった。
そしてルークが溜息をついたのもまさに、その部分に対してだった。
「守る側の身になってくれ……」
一応周囲一帯に広がる護衛はいるものの、いま遠距離から狙われて守りきる力がこの付近の騎士たちにあるとは思えなかった。
こんな露骨に「私は偉いです」という容姿で堂々とひとり歩きしているところを見るに、護衛の気苦労が伺えた。
「早く質問に答えなさい」
メリリルが急かす。
周りの騎士たちも自分たちの指揮を取る可能性のある男に注目していた。
シャナハンから告げられたクエスト内容はこうだった。
◇
『ライカの街から次の中継点であるガザドギルド支部までの道中、王女のそばに仕えその身を守る盾となり、必要に応じて他の護衛を動かすこと』
ライカはギルドがある街だ。またガザドまでも1,2日あればたどり着く上、そうそう危険な目に遭う事態は考えにくい。
この護衛に意味がないことはシャナハンもルークもわかっていた。これはテストだ。王女を守るに足る冒険者を行く道行く道でテストしていき、実力を見定めるための。
「お前さんの読み通り、本題は国越えの遠征だろうて」
「その依頼、なんで冒険者に頼る?」
「騎士ってのは対人間に向けて訓練される。国越えで厄介なのは魔物だ。そっちの専門は冒険者ってわけだな」
お前さんは両方得意だったなとシャナハンが付け足して笑う。
「第一王女はすでに王都を出て経由する全てのギルドにこの依頼を出している」
「用心深いことで……いや待て……王女の行き先はエルモンド商業公国だろう?」
「流石によく知っているな……」
盗賊にとって要人の移動は稼ぎ時である。また本来出会すはずのない有能な騎士と出会ってしまう確率を上げることから、この手の情報は最重要事項の一つと言えた。
「公国へ向かう道はどこを通るにもややこしいだろうな……」
「そうであろう……ましてお前さんたちのいない山道はもはや無法地帯と化したからな」
「俺たちがやってたことを他の奴らがやってただけだろうに。状況が悪く見えるのは、俺と繋がりがあったかないかだけだろ」
ルークの言うことは半分正解で、半分は不正解だった。
騎士の目が届かない都市部から外れた地域において、治安の維持を担うのはギルドと、皮肉にもルークに代表される裏のものたちであったことは疑いようがない。
大盗賊団が一斉に消えたことにより、今やそちらの世界は戦国の様相を呈している。もはや治安維持には何の役にも立たないどころか、むしろ治安を乱す大きなきっかけとなっている。
ルークにとって、それをひっくるめてもあまり代わり映えせず映るというのが現状だった。
「しかしまあ、エルモンド商業公国にいくか」
ルークは頭の中でその意味をいくつかの仮説を立てながら考え出していた。
今日は二話更新するかもしれません
軽率に感想くださいませ〜




