015 盗賊王の知恵
「こんな大量の薬草、どうしたんですか!?」
「あぁ!? 言われたとおり盗ってきたんだろうが」
「またですかっ!? 駄目って言ったじゃないですか」
「森からなら良いって言っただろうが」
「森から……でもいま盗ってきたって……」
困惑顔の受付嬢リィム。
「お前らは何でも短絡的に考えすぎる」
「ルークさんの言葉が足りないのも悪いと思うんです」
リィムの言うことはまあ、もっともな話だった。
もはやいまギルドに居る人間で真正面からルークにこんな事を言えるのはリィムだけだろう。
「思慮が足りない」
「それも、ルークさんの言葉が足りないのが悪いと思うんですっ!」
リィムはめげない女だった。
だがそれ以上にルークもまた、人の話を聞かない男であった。
「だから俺たちに盗られるんだ。良いかよく考えろ。お前は人から盗みを働こうと思ったらまず、どうする?」
「どうって……」
突然の問いかけだった。
リィムが困惑した様子で頭を悩ませはじめる。
「何を盗る?」
「そりゃ……金目のものを……」
「いいじゃねえか。どうやって盗る?」
「隙をついて……」
「隙をつくか。どこからだ? 金目のもんはどこにある?」
立て続けにぶつけられるルークの質問にリィムは懸命に頭を働かせた。
「そうですね……大体ポケットか、かばんに」
「相手はだれだ? 男か? 女か?」
「それは……女性の方が良いかもしれません」
「よしよし。歳は? 若いか?」
「えーっと……それならどちらかといえばお年を召していたほうが良いかと……」
「良いじゃねえか。じゃあもう一度質問だ。金目のもんはどこにある……?」
「それは……あっ」
リィムの顔がパッと開けた。
「お年寄りの女性が大金は持ち歩きにくい……狙うなら、家です」
「そうだ。家だ。何時に行く?」
「夜のほうが目立たず……違います。昼、出かけているときです!」
「上出来だ。わかったか?」
「へ? なんで私盗みに行くことになったんでしたっけ……?」
「ばかか!」
「いたっ!」
ルークはリィムのほおけた頭を軽めに小突いた。
看板娘がぞんざいに扱われてギルドにいた冒険者が一瞬立ち上がりかけたが、大したことがなかったことを確認して座り直す。
そもそもここにルークに意見できるものなどもう誰もいなかった。
「もう……か弱い女の子に手を出すなんてひどいじゃないですか……」
「何のための話か考えろ。人も森も同じだ」
「人も森も……?」
「考えりゃわかるだろう? 冒険者ってのは馬鹿野郎が多い。こんな近くの森だぞ? 何回も見てりゃわかることも増えるだろうが」
「それは……」
「何が欲しい、いつどこにある、どうすれば効率よく手に入る、簡単だろ?」
「……」
その言葉に、受付嬢のリィムも思うところはあった。
確かに下位の冒険者は考えなしに森に行って、痛い目にあうケースが多い。
それに比べて上位の冒険者は情報がいかに重要かをその身に染みて学んでいるものが多かった。そしてこの地域、ラカンの冒険者では久しく、上位らしい上位の冒険者が生まれていないのも現状だった。
「そこまで考えりゃあとは簡単だ。森の魔物は別に倒しちまってもいいと来た。じゃあ薬草集めが趣味の丁度いいのがいるじゃねえか?」
「丁度いい……?」
ギルド受付として数々の魔物に触れてきたリィムの頭を巡らせても、下位の魔物にそんな都合のいいものがいた記憶はない。
「薬草を巣に使う。上質な薬草を集めれば集めるほど良い雌が来てくれる。そういう習性の鳥がいるだろうが」
「それって……! グランドハーブバードじゃないですか!? 危険度Aクラスですよ!? なにしちゃってるんですか!」
「ただの鳥だろうが」
「ただの鳥じゃないですよー! その体長は建物一つ分ともいわれる怪鳥ですよ!?」
「それはメスだ。巣を作ってるオスは大したことねえ」
「え……? そうなんですか?」
ギルドにもない情報だ。リィムはとっさにギルド内にいた冒険者を見やるが、全員が目をそらした。
よく知らないどころか、ここにグランドハーブバードに挑もうと思うものすらいない状況だった。
「流石だな……ルーク」
「おっさんか」
「ギルドマスター!? なんでこんなところに!?」
「自分のギルドの様子くらいたまには見に来るだろうに……にしても、その情報一つでSランク冒険者が動きかねんぞ……?」
「んなことも知らずにSランクとか名乗ってるバカがいるのか?」
「冒険者はお前らと違うからな」
「そうかい」
その言葉は冒険者の擁護以上に、盗賊王ルークを始めとした裏の者たちを称賛したとも取れる、そんなギリギリの発言だった。
だからこそルークはその言葉を軽口で受け流す。
ルークは傍若無人だが義理を重視する。一度世話になっている人間に迷惑をかけることは嫌う男だった。
「少し話をせんか?」
ギルドマスターシャナハン。
ルークがここを始まりの地に定めた理由そのものだった。
昨日の夜中からタイトルを5回位いじくり回して迷走しています。
あらすじも変えました。
おかげさまでランキングも最高位を更新しましたありがとうございます。
タイトル、ご意見あればどんどんください。
伝説の盗賊王、Fランク冒険者を始める
伝説の盗賊王の成り上がり
伝説の盗賊王、国の命令で冒険者を始める
〜裏社会最強の存在は表の世界でも無双する?〜
〜裏社会最強の存在が表の世界でFランク冒険者を始めたら〜
〜裏社会最強の存在がFランク冒険者として表の世界でも成り上がっていきます〜
などなど色々ためしてますがなんかガラッと変えること含めご意見いただけたら嬉しいです
今日は2話更新予定です
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