27 (帰る場所)
10月30日…木曜日…。
朝7:00にドロフィン1に辿り着き…ようやくオレは生還して帰って来た。
各艦の戦闘後の修羅場も落ち着き、義体破損した負傷者達をスレイブロイドファクトリーに運んだオレ達を乗せたエアトラS2が着陸し、プロペラが停止した所で 皆がやってくる…。
「お帰り…生還おめでとう…。」
少し涙目のレナがオレに言う。
「はい…おめでとう…。
次からは もっと壊れないようにするよ…。」
量子転換素子の皮膚もあるし、まだ生き残れるだろう…。
でも、まだクオリアの足元にも及ばない。
プライドの為に死ぬつもりは無いけど、最後まで自分の力で生き残って 帰りたかった…。
「お疲れ…。」
トヨカズが言う。
「お疲れ~」「おつかれ」
「無事とは分かっていたが良かった。」
ロウとカズナの後にクオリアが言う。
「?ハルミは?デパート艦で修羅場の真っ最中か?」
「いんや…救えるヤツは全員救ったよ…。」
周りを見回してハルミを探すオレにトヨカズが言う。
「じゃあ何で?」
オレ…何か嫌われる事でもしたか?
「若干病んじゃってね…。
私達の部屋にいるよ…。」
少し言葉に詰まったトヨカズに代わりレナが答える。
「何があったんだ?」
「赤十字艦に負傷した戦闘機型や新種の幼体のワームまで避難して来たんだ…。」
トヨカズが答える。
「あっまさか…。」
「うん、オレ達は 敵の負傷兵や 非戦闘員の避難して来た子供達を 普通に敵として撃ち殺した…。
見た目がワームだから普通に殺せたが、よくよく考えて見ると、これが人なら相当に人道を外した行為だよな…。」
トヨカズの頬が若干引きつりながら、苦笑いをする。
「でも、ロウ達、殺される訳には行かなかった。」
「だよな…オレ達はヒトだからな…。」
「だが、直近の危機は去ったが、ワームまた 来るだろう…。
その時までに 外交手段を作って置かないと、今度こそ終わるかも知れない。」
「あー結局、ピースクラフトの戦略が正しいんだよな…理想論だけど…。」
「そう、宇宙全体に広がるワームを皆殺しには出来ないのだから、外交で妥協点を模索する必要がある。
今後はワームとのコミュニケーションの構築の研究に力が入るだろうな…。」
クオリアが オレにそう言う。
午前10時…。
戦死者の水葬が行われる…。
水葬を希望していたのは 主に海に浮かぶメガフロート都市の出身とシーランド王国の兵士だ。
自然分解される遺体袋に兵士は入れられ、斜めに下がるローラーを滑り、兵士達は海に帰る…。
彼らは海に生かされていると言う。
兵士の身体は海に沈んで魚の食料などになり分解され、また次の命に生まれ変わる…それもまた 転生か…。
そして、それが循環し 地球の海に住むメガフロート都市の人々の大切な食料になるのだ…。
ファントムが 戦死者達に敬礼する。
乗っているのは ナオとクオリアで、葬式には艦の守りを手薄にしてまで、かなりの兵士と遺族が来ているので、艦の警備を任されている。
兵士達を海に返し、先に海に散って行った兵達の名前が呼ばれて行く…。
『アイオーン都市、第1大隊所属、第13中隊付き『フェニックス小隊』』
あーそうか死んだのか…ネストを道連れにして核爆発で…。
『ラザロ…マルタ…マリア…ヨハネ…イオアン…ヤコブ…以上6名…。』
短い期間だったし、関わりも少なかったが ファントムとフェニックスについて話しつくしたラザロと、エクスプロイトウイルスの偽装をしてくれた、マルタとマリアの3人は とてもいい奴だった…。
見慣れた光景…戦死者なんて珍しくも無いし、名前を読んで貰えるだけマシ…。
きっとDLを生み出し、QDLも生み出して間接的に大量に人を殺しているオレにはロクな死に方は出来ないだろう…。
いや…もしかしたら 既にあの世にはオレがいるのかも知れないが…。
さて、死者を悲しむのはお仕舞いだ…オレ達はこれからも 生きなくちゃならない。
「さ~て、良く生き残りました…生還おめでとう…乾杯!」
トヨカズが音頭を取る。
「「乾杯~」」
カリン…。
「おいおい…献杯じゃないのか?」
ナオが言う。
「いや生還を祝うんだから乾杯だろ~。」
トヨカズがワインの入ったジョッキをこちらに向ける。
「まぁ良いっか…はい乾杯。」
ARで出した雑で粗悪なワインをワイングラスに入れて乾杯をする。
「ぷっふぁあ~生きているって良いね…。」
「うん」「いいね」
ロウとカズナの2人はリンゴの酒、シードルを飲んでいる。
あー未成年の飲酒…これ本物…まぁ良いか…。
その夜は、死者の事を忘れる程 酒を飲み、不謹慎な程、笑いながら笑顔でベッドに着いた。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙~」
「痛い痛い、ロウを殺す気か!」
「あーあたま いたい…。」
「天然物の酒なんだから、気を付けないと…。」
レナが笑いながら言う。
天然物の酒の初めての二日酔い…。
トヨカズが酒瓶を抱き枕にしている時点でこうなると予想はしていたが…。
「なあハルミ…二日酔いってどう治すんだ?」
ベットの一番上に無気力で座っているハルミを見て、オレは 少し大げさに明るく言う。
「………あー二日酔いか…。
アルコールの分解で…糖分が使われるから、糖分の高いジュースで 糖分と水分を補給…。
……後はクルクミンの薬…まぁこの艦のメディクなら処方してくれるだろう…医務室に行ったらどうだ?」
一応答えてくれた。
「よし…行ってみるか…皆 行くぞ~。」
「あ~叫ぶな…頭に響く…てか何でそんなにテンション高えんだよ。」
ゆっくりとだが、3人は起き上がり、医務室に向かって行った。




