24 (民間人の虐殺)
ドロフィン1 オペレーションルーム
「トヨカズ!!、トヨカズ!!応答して、トヨカズ…。」
レナが言う。
先ほど トヨカズの機体のステータスが 突然消え、機体の信号をロストした…。
その後、数分後にロウ機の信号もロスト…。
もしかして撃墜されたのだろうか?
これで、砦都市の部隊も全滅…幸い皆、私が余裕を持って脱出させた事で、負傷はあれど 皆無事だ。
だが、そのせいで トヨカズ達の負担を増やしてしまった。
まさか私のせいで…。
「レナさん落ち着いて…多分、機体と放棄して脱出しただけです。
今は生還を祈りましょう…。」
エルダーが言う。
「私は神に祈りません、神様は サディストでトヨカズが死ぬ方が面白いでしょうから…。」
「まぁそうでしょうね…。
時間からしてナオさんが そろそろ ポイントAに着くでしょう…。
何かあればクオリア経由で情報が来るはずです。」
何も来ない…時間が長く感じ苛立つ…。
私の後ろでは1人のオペレーターが部隊の全滅が確定し 泣き出していた…。
周りでも似たり寄ったりで、自分の担当している部隊の安否を気にしている。
落ち着け…トヨカズとロウを信用しろ…。
あの2人が脱出も出来ずに殺される訳無い。
希望的観測と思いつつも、2人の生還を願う。
「マズい事になりましたね…。」
『エルダー何か…まさかロウに?』
「いえ、ロウさんは もう そろそろ脱出します。
トヨカズさんも…もう上がって来ているはずです。」
良かった…。
「では、何がマズいのですか?」
「ワームが ファントムのデータを抜こうとしている見たいで…。
今、エレクトロンのネットワークで対応を検討中です。」
ナオは フェニックス小隊のように情報漏洩を防ぐためにワームを道連れに自爆する気だろうか…いや、して欲しくない。
「仕方ないですね…それでお願いします。」
「結論が出たのですね…。」
「ええ…クオリアが ナオさんをリモート操作をします。
最大出力モードで 残りのワームを可能な限り排除して帰還するようです。」
「ナオへの負担は?」
「それなりには、ジガがいれば直せるでしょうが…。」
またナオが義体を壊すのか…。
私達は いつもナオに負担をかけてばかり…。
「ともかくこれで、こちら側が圧倒的に優勢です。
犠牲者の数はともかく 確実に勝てます。」
「そう…。
最低限 無駄死にでは無かったと言えそうですね…。」
「ええ…艦長…10分後、ナオさんが高温状態で艦に着艦します。
ダメージコントロール班に頼んで、海水での冷却をお願いします。」
エルダーが隣の部屋のブリッジにいる艦長に言う。
『こちらエアトラS2、クオリア機…カズナ…。
トヨ兄ぃとロウをみつけた…ふたりとも、ぶじ、じゅうしょうしゃと、いしょに、シーランドにむかう。』
救助部隊のカズナから朗報が聞こえてくる。
『こちらレナ…お疲れ様…。』
私は涙を浮かべながら そう言った。
トヨカズが海面から顔を出す…。
周辺には炭素繊維で出来たゴムボートが大量に展開されていて、オレはボートに掴まり 乗りこむ…。
「はあはあ…。」
仰向けになりになり、深く息をつく…。
上空には 後部ハッチが取り外された12機程のエアトラS2が後部ハッチからワイヤーを降ろし、脱出したヒトを回収している。
向こうのゴムボートには、重傷者が寝かされていて ゴムボートの両端にある持ち手4ヵ所にワイヤーを通し、ゴムボートごと引き上げている。
軽傷者は 最寄りの空母に…重傷者は赤十字艦か…。
『こちらカズナ…トヨ兄ぃ…ぶじ?』
カズナの声だ…そうか、海中じゃ無いから電波が通じるのか…。
『こちらトヨカズ…回収を頼めるか?』
『だいじょうぶ…。』
ワイヤーがこちらのゴムボートまで正確に来る…この安定性はコパイだから出来る芸当だ。
トヨカズはワイヤーの先端の輪に足をかけて乗り、ワイヤーが巻き取られて、エアトラS2の後部ハッチまで引き上げられる。
ワイヤーはクレーンに取り付けられていて、ワイヤーが巻き取られエアトラS2の後部までオレを運び…降りる。
30の席の半数位が座る機内でオレは一番奥の機長席を見る…。
そこには、救命胴衣を来たパイロットスーツ姿のカズナが座っている。
トヨカズは空いている副操縦席に座った。
「さくせんは、どうなってるの?」
カズナが次の兵の回収を指示しつつ言う。
「大部分は片づけた…でも突破されてたな…。
ロウは まだ下か…大丈夫だと良いが…。」
「ちゃんとあがってきてる…つぎ、ひきあげるよ…。」
カズナがARウィンドウを見つつ言う。
4本のワイヤーが同時に巻き取られ、4人を回収…次はロウだ…。
ロウはゴムボートには乗らず、右手を上げ、海上でワイヤーを掴み、上に引き上げる…足はかけておらず、手の握力で身体を保持している。
引き上げられたロウは勢いをつけて機内に飛び乗る。
「おかえり、ロウ…。」
カズナが言う。
「ただいま…。
ナオに助けられた。」
ロウがヘルメットを取る…あっデコに汗吸収用のヘアバンドをしている…。
そうか…ジガがVRで訓練した時に言ってたな…完璧に忘れていた。
「ナオに?」
「うん、今、ファントムが壊れて、ナオが食い止めている。」
「ナオが生身で戦ってるのか?」
「そう、凄かった。」
「如何にか なったのかな…。」
トヨカズがつぶやく…。
「ロウ…すわって…シートベルトしめる。」
「分かた」
「みんなシートベルトしめてる?」
『大丈夫です…皆さん閉めています。』
コパイが言う。
「それじゃあ…シーランドに、いって」
『分かりました。』
ワイヤーが完全に巻き取られ、クレーンをしまって、エアトラS2が高度を上げて プロペラ機モードに変わり…速度を上げる。
「ハッチが ないから きをつけて…。」
カズナが、乗員に警告し…時速500kmの巡航速度に到達…赤十字艦シーランドに方向を合わせる。
見えた…アレ…。
『緊急回避!!』
エアトラS2のコパイが緊急回避を行い乗員を揺さぶる…。
「あっぶねーな…。」
トヨカズが言う…シートベルトをしていなかったら投げ出されていた…。
「コパイほうこく!!」
カズナが揺さぶられながら、状況を確認する。
『シーランドが、戦闘機型と交戦中…レーザーの射線を確保する為、緊急回避しました。』
「ちゃ…くりくは?」
『現状では無理です…管制AIは空中での待機を指示…。
最悪、逃げれる方が良いとの判断です。』
「とは言っても、こっちの倍の速度が出るんだぞ…。」
カズナの隣のオレが叫ぶ…。
こっちの巡航速度は500km向こうは1000kmだ。
高度を上げて ブースターを使い、宇宙に上がる?
だけど、機内の気密が確保されていないから パイロットスーツが破れている負傷者が確実に死ぬ。
『問題ありません…Gウォークが防衛に入っています…。
私は、雲の下で旋回飛行をします。』
「って…アレは何だ?」
シーランドの側面に張り付いて上ってくる大量の個体…。
ワームにしては凄く小さい…ヒト位のサイズだ。
『推測情報ですが、ワームの幼体かと…。
ボックスライフルでは船に穴を開けてしまう為、撃てない状態です…現在、歩兵火器で対応中…。』
よじ登ってくる幼体ワームをステアーAUGアサルトライフルを持った兵が甲板で応戦する…。
シーランドは空母型じゃないので上に建物が乗っていて甲板は小さく、交戦スペースとしては心持たない。
5.56mmでも殺せるが、幼体には威力不足…7.62mmが有効か…でも反動が大きい。
更に威力の低い9パラを使うサブマシンガンやマシンピストルでは、1匹倒すのに10発程掛かっている。
と言う事は、幼体ワームの装甲は パイロットスーツの少し上のレベル2.5位の防弾性能か…。
「コパイ…機内の重傷者が多い…ヘリポートに強行着陸して重傷者を運ぶ…。
オレらは重傷者を護衛しつつ、幼体ワームを潰す。」
まだヘリポートに幼体はたどり着いていない…甲板で負傷兵達が必死に食い止めている。
『危険ですよ…』
「でもやらなきゃ…重傷者が 手遅れになる…。
それに、ヘリポートが使えなくなるのも問題だ…確保しないと…。」
『分かりました…管制AIに報告…許可が下りました。』
管制AIが柔軟で助かった…。
オレはシートベルトを外し、棚からアサルトライフルのM4とロングバレルの入ったケースを取り出し、組み立てを始める。
M4をベースに分子単位で正確に作った超精密バレルを使用…。
更にそこからロングバレルを取り付ける。
サイトは、ダットサイトを装備…念のためにスコープをバックパックにしまう。
「ロウも行く…。」
「と言ってもオマエ、無免だろう…。」
「ロウ…わたしの じゅうを つかって…。」
カズナが PP-2000を取り出し…マガジンも渡す。
「こわしても いいから、いきて、かえってきてね」
「分かてる」
ロウは カズナからPP-2000を受け取るとコッキングレバーを引くが、レバーが引けない。
オレがロウからPP-2000を奪いセーフティを解除して、またロウに渡す。
今度はコッキングが出来る…PP-2000はセーフティを掛けてあるとコッキングが出来ない。
初弾が入っていない事を確認して マガジンを入れて、コッキングレバーを引いて初弾を装填…すぐにセーフティを掛ける。
先端部分に反動抑制の為のゴムが取り付けてある擬装ストックを銃後部にあるマガジンホルダーに差し込み、射線にヒトが入らないように後部の外側に向かって構え、ダットサイトを覗き込む…姿勢はしっかりしているし、指はトリガーに掛けてない。
うん、ちゃんと出来ている。
「よし…ロウ、オレは オマエの教官役だ…。
戦闘中は 絶対にオレの指示に従え…。」
例え無免でも 教官が隣にいる場合は撃てる…。
じゃないと実射訓練や実射試験自体が違法になっちまうしな…。
緊急時の名目としては これで十分だろう。
「分かた」
ロウがそう言い、敬礼で答える。
「準備出来た…下げてくれ」
『了解…着陸します。』
エアトラS2が快適さより素早さを優先させて 荒っぽく着陸…。
すぐさまマシな負傷者が、重傷者を担ぎ、階段を下って行く。
「急げ!急げ!」
トヨカズが言う。
幼体ワームが 艦の側面を上り、甲板の防衛ラインを突破…。
まだ無傷で こっちに来た兵士や負傷兵がアサルトライフルやサブマシンガン、マシンピストルで応戦…そろそろ弾が足りなくなるだろう…。
弾は ここの1階下の物流倉庫にある。
こちらの弾は、ロウのPP-2000の9パラが50発×6マガジンの300発…。
オレのM4の5.56mmが50発×6の300発…ステアーTMPが1マガジン50発。
更にバックパックの中には、1発1000トニーも掛かる高価で 出来るなら使いたくない切り札の5.56と9mmのタングステン徹甲弾が1マガジン 50発ずつが入っている…。
こっちに上がってくるのは100匹程度なので、弾数は十分に足りている。
ただし これ以上の増援が来る場合、補給が無いと難しい…。
エアトラS2が急上昇し退避する。
「セーフティ解除を許可…。
よーし ワームが ヘリポートに上り終わった所を狙え…大丈夫…普通に当たる距離だ。」
オレとロウがセーフティを解除して構える…目標まで25m程度…。
幼体のワームが上って来た…今!!
「撃て!!」
オレが ロウに発砲許可を出し、セミオートで発砲…頭に命中…続いてもう1発…よし、2発で仕留めた。
5.56mmが対人用とは言え、ロングバレルで加速時間を長くすれば威力も上がる…。
1匹当たり2発か…バレル無しに比べ、1発浮いたか?
腰を下げて身体と重心を安定させ、足を止めた立射状態で正確に撃ち込んでいく…。
やっぱり固い…。
連射撃ちでも10発位弾を使う…やっぱり子供といっても、正面はそれなりに固いんだ。
なら…ロウは突っ込んできた幼体ワームを回避し思いっきり側面を蹴る…。
150㎏程ある幼体ワームが中に舞い…横に転がりロウに腹部を見せる。
ロウが連射撃ちで撃ち込み、すぐにトリガーを離す…6発で仕留められた。
やっぱり腹は弱い…横も後ろも…ロウは次々と幼体を狩って行く…。
トヨカズと違いロウは まだちゃんと撃てない…。
でも、幼体が近づいてくれるなら、関係ない。
ロウは 足技を中心に体術を組み合わせ銃弾を至近で撃ち込む…。
幼体とは言え ワーム相手に体術かよ…。
ロウの身体と重量では絶対に不可能な体術をロウは ワーム相手にやって見せる。
前にジガに聞いた思い込みの力か…。
それが出来ると思い込む事で、それが 物理現象となり あの桁外れの馬鹿力を可能にする。
トヨカズも構え、幼体ワームを撃つ…。
さっきから撃っている弾はすべて幼体ワームの頭に命中している…。
VRでのスナイパーとしてのオレの自信が…確実に当たると言う確信が、弾を幼体ワームの頭に誘導する。
アタレ、アタレ、アタレ…。
集中しろ…自分を疑うな…M4を向ければ絶対に当たる。
「リロード!」
ロウがオレの背中に付き、側面の幼体ワームに最後の弾を叩きこむ…。
「カバー!」
オレがロウにそう答え、リロード中のロウの安全を確保する…。
24…25…26…大丈夫…ちゃんと撃った弾数を数えられている…パニックになってない。
本当にパニックになった場合、人は数字を数えたり、一桁の足し算ですら出来なくなってしまう。
そして、結果的に死を自分の元へ引き寄せてしまう。
40…。
「次、リロード!」
「終わた、カバーする。」
オレがワームにセミオートで5発撃ち込んで行き、ロウがカバーに入った所で残り5発を撃ちこみ、リロード…。
マガジンを2本目に交換…後4本…普通に終わるだろう…。
甲板に銃弾の補給が届いたみたいで 流入量が下がり、対処がしやすくなり、ヘリポート周辺の幼体ワームを殲滅…。
程無くして、下の幼体ワームも全滅した。
ヘリポートが幼体ワームの死骸の山で使用出来なくなった…使うには撤去が必要だろう…。
幸い…怪我人は出たが 幼体ワームの戦闘での重傷者はゼロ…。
ハルミの乗るGウォークが死骸の撤去を始めた…。
撤去した所でオレは、死骸の山が動いている事に気づく…。
オレは構え、出て来たワームを撃ち殺す…。
これで如何にか終わった…そう…おわっ・・・た。
「トヨカズ?」
ロウの声が聞こえる…アレ?オレ死んだか?
急に身体が動かなくなり、地面に倒れ意識を失った。




