11 (精神が削れるお風呂シーン 究極の男女平等主義)
寮の1階のタベルナで食事をした後、隣の部屋の談話室でのんびりとしている。
談話室には、ソファーとテレビなどがあり、使う理由は様々だが、大まかに分けると多人数でおしゃべりをするか、誰かと待ち合わせをしているかの二択だ。
今はあまり人がいないが、レナが談話室に入ってくる。
レナはナオに気づくと 向かい側のソファーに腰掛け、ARウィンドウを出して なにやら操作している。
「誰かと待ち合わせか?」
暇だった事もあってレナに聞いて見る。
「クオリアとトヨカズ…それにナオもかな?」
「オレもか?」
「皆で一緒に大浴場に行こうって事になってね」
「そう言えば風呂は まだ行ってないな…備え付けのシャワーで十分だったから」
この寮は600人程が住んでいるのだが、その為か設備が旅館並みに豪華になっている。
その1階には大浴場があり、寮に住んでいるヒトは無料で入れる。
「どうする?行く?」
「ああ行ってみるか」
まぁ一緒に行くと言っても、風呂は男女で別れているだろうから大して意味は無いんだろうけど…。
皆が集まり、備え付けのタオルがあるからとトヨカズ、レナは手ぶらで、クオリアは エレクトロン用のリンスを持参している。
恐らく何かしらのコーティング剤なんだろうな…と考えながら一同は 大浴場に向かう。
向かうと言っても 食堂の隣にある娯楽エリアの隣なので、さほど距離は無い。
娯楽エリアには ダーツ、ビリアード、カラオケルーム、卓球と一通りそろっている。
これにレトロゲーの筐体があれば、旅館の娯楽ルームの完成だろう。
580年経っても変わらない湯のマークの暖簾を一同は入っていく。
『一同は』である。
暖簾は1つしか無く、当然ながら脱衣場に行く道も1つ……。
つまり混浴だ。
さて、脱衣場は昔から変わっていなく、もはやインテリアと化している体重計やウォーターサーバーなど、ロッカーは ここでは珍しい鍵式で鍵には腕に通す為のゴムバンドがついている。
コイン投入口は無く、そのまま利用できる。
さて肝心なヒトの描写なのだが、若いを通り越して色々描写の難しい幼い子が多い。
腹にカンガルーの様な袋を持った獣人の獣耳っ娘が 備え付けのタオルを持って浴場に向かう。
女の子は、胸を隠しているものの下は丸出しで、ほかの女性も似たり寄ったりで、何故か下より上を優先させている。
バスタオルの微妙に見えるから見えないかのギリギリのラインが、男の性欲を刺激する。
年齢が上がれば 上がるほど 羞恥心が無くなるのか大人はあまり隠さない。
さすがに全裸で堂々としている女性は少ないが…。
男性は、10歳以下の子供を除き基本腰にタオルを巻いているが、裸の女性が こんなにいるのに かなり落ち着いた雰囲気だ。
例えるなら男女の『きょうだい』が一緒に風呂に入る時のような気軽さか?
そりゃ生まれた時から男女関係なく生活しているんだったら、大きなくくりでは『きょうだい』なのだろうが…。
「『気にするな』と言うのは難しいんだろうけど、すぐ慣れるさ、オレだって何回お勃てた事か」
そうトヨカズは言うと さっさと服を脱ぎだし、全裸にタオル一枚を肩にかけ 色々と ぶらんぶらん させながら、堂々と浴場に向かう。
これが アニメだったら 悲鳴の1つでも 上がるんだろうが、あんなに堂々と入っていたのに全然聞こえない。
オレは 少し落ち着いた様子で ロッカーに行き、脱ぎ始める。
隣では、羞恥心が全くない様子の全裸のクオリアが、シャンプーを持ってロッカーを閉める所だ。
130cm位の小柄な体型から幼女体型をイメージしていたが、腹はへっこんでいて僅かだが、くびれもある。
胸は小さいものの、確かに存在しており体型と合わせて…とても可愛いらしい。
クオリアが移動する際に気になってチラっと確認してみたが、乳首や性器の類は やはり見つからなかった…如何やら機械人は生殖機能がいらないみたいだ。
次にオレの後ろのロッカーを使っているのは レナだ。
俺と同じ150cmの身長に安産型の大きな尻に、美しい くびれた胴体…。
人工皮膚に張り替えたのか 綺麗すぎて逆に目立つ皮膚…。
背中から見える引き締まった身体に その脇から覗かせるバランスを崩さない程度に大きな横乳…。
肩まで かかる暗い赤髪の間から見える うなじと美しい身体のラインを持ち、芸術品の域に達している。
そうこうしている間に脱ぎ終えたのか バスタオルで軽く胸を隠すと、チラっと こちらを見て浴場に向かう。
そうこう考えている内に一番遅くなったオレも遅れて浴場に向かって行った。
浴場は60人が楽に入れる位の広さで、女性が圧倒的に多い。
男性が3割しかいないと言う事もあるのだろうが、面倒くさくてシャワーで済ませる人が多いのだろう。
壁には 窓替わりの壁紙型ディスプレイが貼ってあり、そこには綺麗な富士山が再現されている。
もちろんCG合成した偽物の風景なのだが、細部まで作りこまれていて本物と見分けがつかないレベルだ。
さて、これだけ周りに女性がいると洗い場の場所に気を使ってしまう。
オレは 無難にクオリアの隣の洗い場の椅子に座った。
「ナオは メカフェチなのか?」
「いや、なんで?」
「これだけ女性がいるのに 私の隣に来たからだ。」
「あーどちらかと言うと気まずいと言うか…。」
「ナオのいた地域では 混浴は 一般ではないのか?」
「何度か共同浴場には 行ったことはあるけど、男女で別れていたな…。」
「今の時代だと混浴が多いから 今のうちに慣れておくといい」
「そもそも何で混浴が増えたんだ?
かなりマイナーだったはずだけど…。」
「ここはトニー王国のアーコロジーだと言うのもあるんだが、人に獣人、サイボーグに エレクトロンと種族だけで、これだけあって 更に男女にトランスジェンダーと性別の定義も様々だ。
しかも義体化すれば 性別も種族も顔も自由に変えられる訳だから分ける意味も無い。
個別に扱っても スペースがいくらあってもあっても足りないし、個別に扱うと無駄な軋轢を生むからな」
「軋轢?」
「例えば男女で分ける地域は、性別同士のコミュニティを多く作ってしまう為、男女一緒のコミュニティは統計上極端に少なくなり 男女間のトラブルも増加する。
だから自分とは違う種族と当たり前に生活する事で、相手を理解する機会を作る…。
ケンカと言うのは相手との不理解からくる事が多いからだ。」
シャンプーで大量の髪を丁寧に洗い、その上から 持ってきたコーティング剤をリンスのように塗っていく、後で聞いたところ廃熱促進用の塗料だそうだ。
オレは クオリアに比べ髪も少ない事もあり、素早く済ませるとトヨカズがいる湯船に入った。
トヨカズは 3人の裸の女の子と陽気に話がなら別の風呂に移動し、代わってレナとクオリアが入って来る。
レナはバスタオルを取って堂々と入り、クオリアは 湯船に髪が浸からないように大量の髪を折り畳み、ヘアピンで止めてゆっくりと湯船に入る。
「全然リラックスしてないけど、やっぱ慣れない?」
隠さず、色々と丸出しでリラックスしているレナが言う。
「そりゃねー慣れる事なんて出来るのかね?」
広い湯船なのに足を伸ばさず 折り畳むオレは、挙動不審の様に あちこち頭を動かすが、どこを見ようが女性の裸体が視界に入り 落ち着かない。
獣人の男女が通り過ぎる…。
ファンタジー系に良く出てくるベースが人で、耳や尻尾が獣のケモ度レベル1の見た目だが、別の特徴として男女ともに乳首が無く…腹部にカンガルーの様な袋が付いている…難産対策だろうか?多分乳首は袋の中だろう。
「うわっあ そこの2人挿ってない?」
12、13歳位の獣人の男が、10歳位の女の子を膝の上に乗せて頭を洗って上げている傍目には仲のいい兄妹と言う感じの光景なのだが、時より腰が小刻みに動き女の子側もほのかに顔が赤い。
つまり……。
「あ~これも、まぁよくあるね」
少し言葉が詰まったが 何の事でも無いかのように、レナが答える。
「これ大丈夫なの?不純異性交遊とか児童ポルノとか?」
「ウチでは『双方合意の無い性行為をしてはいけない』の一文だけ…。
だから許可さえ取れれば、性別、性癖、年齢 問わず誰でもアリ…。
しかも マイクロマシンで妊娠機能をOFFにされているからね」
あーそんな事を堂々と…レナは妙にサバサバしてるな。
「え?子供を産めなくしているって事?」
「そういう事、許可が出てONに出来れば産めるけど、ここの都市に住んでいる女の子は、皆これを入れてるはずだから」
「…?なんでまた?」
隣で聞いていたクオリアが説明を引き継ぐ。
「人を快適に過ごさせるには 大量の物資が必要なんだ。
食料、飲料水、生活用水、家電の電気、生活の消耗品、家などの土地。
人が無制限に増え続ければ物資を食いつくしてしまう…。
だから人口を適切に コントロールして物資の消費を調整するんだ。」
あ~殺して人口を減らす事が出来ない以上…結局産ませない考えに行きつくのか?
「私達にも結構メリットは多いんだよ『月モノ』とか無くなるし、老化も大幅に軽減されるからね~」
足を延ばし ゆったりとした格好のレナが気軽に答える。
アニメや漫画で女湯に突撃するシーンは 結構あるものの実際混浴になると全然安らげない。
結局の所、女性だらけの大浴場はリラックスすることなく、神経をすり減らすことになった。