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27 (時給より安い命)

『レナ!!』

 トヨカズ機が衝動的(しょうどうてき)に走り出した。

 エアドームが戦闘機型ワームにより貫通し、空気が抜けて行く。

「おいおい…スマン、弾寄こせ」

 ナオ機がドラムキングが装填中のマガジンをぶん取り、ボックスライフルに差し込み、後に続く。

 2機は気密ゲートの警備を強行突破し、中に入る。


「クオリア…ワームが何処(どこ)にいるか分かるか?」

 舗装(ほそう)された路面を全速力で滑走するトヨカズ(オレ)が言う。

『都市システムから街頭カメラで場所を特定…位置情報をUP(アップ)する。』

 クオリアから位置データが来て、オレは 迷いなく中央区に向かう。


「クオリア…ワームが天井を抜いて突っ込んで来たってのに 住民はいつも通りなんだが…。」

 トヨカズ機の後を追う ナオ(オレ)が 住民を見ながら言う。

 普通ならパニックになるはずだろう…住民は少し驚きつつも 何事も無いかの様に生活している。

『今は勤務時間だ…仕事をしているのだろう…。』

「避難とかは しないのか?」

『避難した所で 時給が稼げなくなって、どの道 助からない…。

 彼らには 働く以外の選択肢が無いんだ。

 前回のように避難アプリも強制ダウンロードさせたが(ほとん)ど効果が無い…。』

「末期だな…テロリストの言い分が正しく感じるよ…。」

『私もだ…。

 ワーム自体は 動いていない…特攻(カミカゼアタック)で死んだ可能性が高い。』

「なら別れた方が 効率が良いか…トヨカズは 5番ドームの中央区に行ってる。

 ナオ機は 7番ドームに落ちたワームの調査に向かう…。」

『了解した…前線のワームの駆除を完了…現在 はぐれ個体を探している。

 確認終了次第、私達も向かう。』

「頼む…救出には DLが必要だからな…。」


 戦闘機型ワームが突っ込んだのは物資を保管している物流倉庫だった。

 倉庫はブロック式になっていて崩壊(ほうかい)しても一部で済むようになっている。

「完璧に埋まっているな」

 3階建ての倉庫の右4分の1が綺麗に崩落し、各階が見えている…。

 大量の商品が棚に並び、コンベアで流れる折りコンに労働者が商品を作業アームの様な正確さで入れていく…。

 密度当たりの人数から全体を計測した所おおよそ200人。

 すぐ目の前の建物が倒壊して、大量に死者が出ているにもかかわらず、逃げず、助けず、変わらず業務を続けている。

 コイツらの価値観では 他人の命は時給より安い…。

 ヒューマノイドだろうが、ドラムだろうが、ここの人より もっと人間味があり、これを形容するなら、工業用機械…。

 棚から指定された商品を取り、折りコンに積める ただの作用用アームだ。

 だがここでは その作業用アームの維持コストですら、ここの労働者の給料より高い。

 機体のマイクが 瓦礫(がれき)から断末魔の叫びを拾うが…パイロットのメンタルに気を使った機体側が音を削除する。

 瓦礫(がれき)からは 千切れた腕が見えるが、敵味方で無い第3勢力の黄色で塗りつぶされている。

 瓦礫(がれき)の中から『助けて(Help)』の吹き出しが出ている。

 周りの人が犠牲になっても知らんぷりで、自分が犠牲になった場合 助けをこう…まぁそれが人か…。

 ナオ機は シャベルを抜き 救出しようとするが、瓦礫(がれき)が 危ういバランスの上で成り立っている事に気づく。

 下手に救出すると 瓦礫(がれき)の隙間にいる生存者も殺しかねない…。

「こちらナオ機、7番ドームのワームの落下地点に到着…犠牲者多数…救助の要請…ってか、何で警察や消防が来てねぇんだ?」

 攻撃されてから10分以上経っている…。

 サイレンが この時代でも使われているか 分からないが 聞こえて来ないし、ここに来る時も それっぽい車両は見なかった。

『保険の問題だ…一軒当たり、年間7500UM…この建物の大きさだと10万UM位か…で、都市の災害部隊が救出に来てくれるのだが、どうやら未納だったらしい。

 この調整された環境で火災や倒壊なんてまず無いからな…。』

「あ゛?有事に備えるのが保険だろうに…。」

 ナオ(オレ)苛立(いらだ)ちながら言う。

『経費削減だ…大きな施設は面積当たりから請求されるから 金額がバカにならない。

 従業員が死んだ所で 求人倍率が10倍だから 代わりの労働者は山ほど取れる…。

 むしろ競争相手を始末してくれて、就職枠を確保してくれるワームに感謝している事だろう。』

 クオリアは淡々と言う。

「すべてを金で管理すると こうなる訳か…。」

『ヒドイ話だが これが ここの文化だ…。

 私達は介入できないし、相手の文化を尊重しないと行けない。

 これは 国際条約だ。』

「『郷に入れば郷に従え』か…了解…ドラムをこっちに呼んでくれるか?

 目の前でヒトが死にかけているのに見過ごすことは出来ないだろう」

 ドラムは ヒトが危険にさらされている状態の場合、救出しなければならない。

 現場まで誘導すれば 勝手に救出してくれるだろう。

『私達と合流したらドラムに向かってもらう。』

「分かった…次、8番ドームに行く。」

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