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25 (言葉で殺す人)

「全く…何なのよ…。」

 レナ()達は長い廊下をひたすら走る…。

 爆発音を聞き付け、大量のパラベラム部隊が集まってきた。

「自分の持ち場を離れている分…突破をすれば()けるかと。」

 天尊が言う。

「とは言っても…戦闘は避けられないのよね…。」

 パラベラム部隊…。

 確かに武力で要求を通そうとするのは 色々と問題だろうけど…システム自体が腐っている場合、通常の手続きで解決が出来ないのも事実…。

 そして、過去の映画を参考にして言うなら 弱者が意見を通す為に 暴動や暗殺などの武力で解決し変わった話は 呆れる程多く…効果的とも思える。

 トニー王国の所属の砦都市は 暴動は 都市民の権利であり、私やアントニーが殺されても殺人罪が適応されない。

 私やアントニーが都市民からの暗殺に(おび)えるからこそ、民意を無視出来ず、暴動を起こすことでシステム側の欠点を明確にし、改善する事も出来る。

 もっと明確な悪人なら殺しやすいのに…。

 今の武器は ロウが回収してくれたコンバットナイフだけ…。

 正面には12人…武器は ナイフとハンドガンにアサルトライフル…。

 接近すれば 出来ないレベルでは無いかな…。

「敵から武器を調達しないとな…。

 オレとレナで()る…後は退避だ。」

 トヨカズが言う。

「ええ」

「分かた」

 ロウが言う。

 ハルミとジムに乗る天尊に、肥満でまともに走れないピースクラフトを軽々とおんぶし、皆と変わらない速度で走るロウは、曲がり角を曲がりって退避…。

 私とトヨカズは 正面の12人を相手する。


「止まれ!!」

 男がハンドガンを構え、警告する。

 この状況で『止まれ』と言われ 止まる奴はいない…即引き金を引かなかったのがコイツらのミスだ。

 レナ()は ハンドガンの射線を避けつつ、銃を持つ男の手を(つか)み、思いっきり上に曲げる。

 パン…。

 男はトリガーが引き、銃弾が(あご)から頭を貫き…男から力が抜ける…。

 次、取り押さえようとする男の喉元(のどもと)をポケットから抜いたコンバットナイフで切り裂き、男が倒れる。

「ひっひっひっ」

 呼吸をしようにも、首から空気が抜け、まともに呼吸が出来ない…。

 次、肋骨(ろっこつ)に干渉しないようにナイフを水平にして 思いっきり突き刺す…男は心臓を突かれ死んだ。

(防刃、防弾のプレートも入っていないの…コイツらバカ?)

 私は 次の得物に取り掛かった。


 レナが(あご)を撃ち抜いた男が床に転がる。

 トヨカズ(オレ)は 男の指から銃を外し、ロクに狙わず、即座に発砲。

 次への時間を稼ぐ為にズレても どっかに当たる腹部に2発撃ち込むが…やけに通りが良い。

(もしかして防弾対策してない?

 仮にも武力制圧しようとしている連中がか?)

 オレは 撃ち込んだ男が倒れる前に盾にするように身体で支え、ハンドガンで こちらを狙っていた男の射線に味方を入れる。

(ほら…まだ生きてるぞ~)

 味方が死んでいたら撃てるかもしれない…それでも、味方を撃つってのは凄いストレスだよな…。

 そのストレスを回避しようと思えば、脳内リソースが奪われ、まともに考えられずフリーズする。

 今考えているのはコイツとの思い出か?

 パァンパン

 死体を盾にしつつ腹に銃を突き付けて2発撃つ…。

 弾は腹を貫通し、敵の胸に当たる。

 死体の中の何かに当たり、弾道がズレた…。

 さて、次は盾にした死体の首からAKのベルトを外し、セーフティを解除…フルオートにセット。

 オレがAKを構えた瞬間…それを察知してレナが退避し、射線上には敵しかいない。

 オレが発砲…6mmプラスチック弾が、毎秒15発の速度で銃口から吐き出される。

 パラパラパラパラパラパラ…。

「は?」

 オレが 予想外の展開に思わずつぶやく…ヤベェ…思考停止になる。

 そうなると思った瞬間…AKを敵に向かって投げつけた…これで時間を稼げる。

 電動ガン…アサルトライフルを使わないで ハンドガンで対応したのはそれか…。

 (どんだけ予算が無かったんだ?)

 1秒の思考停止から復帰したオレは すぐさまハンドガンに持ち替え発砲…。

 1900年から700年間製造され続け、今でも現役の9x19mmパラベラム弾が敵に当たる。

 1人に付き、2発…狙うのは腹部…。

 カチャ、弾切れの音を聞いたオレは、やはり銃を投げつける。

 姿勢を低くし射線を下に向け、死体の銃の回収…死体は 地面に倒れているので もう盾に出来ない。


 トヨカズが持つ銃が 弾切れの音を出した瞬間…男がハンドガンをトヨカズに向け、トヨカズは姿勢を低くする。

 男が斜め下を向いた事でレナ()が男の視界から消えた。

 一瞬だが、次に男が顔を上げた瞬間…正面には 私がいる。

 指は ハンドガンのトリガーに掛かっていて、下手をすればトヨカズに当たりかねない…。

 私は 男のハンドガンのスライドを後ろに押し込む。

 男がとっさに引き金を引くが…スライドを引いたままじゃ銃は 撃てない。

 私は 男の股間を膝で蹴り上げ、男が反射的に手の力が緩んだ所で銃を奪い発砲した。

 最後の1人を始末し、私は荒く息をする。


「グラフィックのレベル低すぎだろう…。」

 トヨカズ(オレ)は地面に転がる初めて見る本物の死体を見て思う。

 普段VRゲームで見ている死体の方がよっぽどリアルで、今転がっている死体は まるで人形のようだ…。

 それでも、さっきまで確かに生きていて、予想以上に人は(もろ)かった。

 オレは いつも通り 殺した死体からハンドガンを抜き取り、マガジンを回収して行く…。

「ひっ…」

 ロウに おぶさっているピースクラフトは血だらけの死体を見て思わず目を背けた。

 ロウは 見慣れているのか 普段と変わらず血だまりを歩く…。

 ピースクラフトを見たレナは ロウにゆっくり近寄り、ピースクラフトの頭を無理やり動かし、死体に合わせる…。

 それでも目を閉じるピースクラフトに今度は目蓋(まぶた)を血のついた指でこじ開け、死体を直視させる。

 ピースクラフトは 大量の汗をかき、現実を見せられる…。

「これは アナタが間接的に殺した人よ。

 アナタは知らずに その言葉で何人もの人を殺して来た。

 理想も大事だけど…その言葉で犠牲になる人の事を考えなさい。

 彼らは数字でも、ゲームのキャラクターでも無く、人なの…。

 彼らの死から目を背ける事は 私が許さない。」

 同じ言葉で人を殺してしまう仕事をしている私の言葉は重く、ピースクラフトは黙った。

「アナタがやるのは 今回の事件を『痛い教訓』として 次に活かすこと…。

 同じ誤ちをしないようにね…。

 行きましょう…早く行かないとまた死体が増える…。」

「ああ」

 トヨカズ達は 血だまりを踏みしめながら、廊下を走った。


 格納庫のコンソールに ピースクラフトの顔を認識させ、シャッターが開く。

 地下に秘蔵されていたのは真空包装されたベック、スピーダー、パワードだった。

 数はそれぞれ6機ずつ…。

「状態は 非常に良い見たいだ。

 これ、どんだけ仕舞われていたんだ?」

 ハルミ()が スピーダーの真空包装を剥がしながら言う。

「わ、分からない…セキュリティ登録した時だけで全然来てないから」

 ピースクラフトが怯えながら言う。

 まだ さっきの事を引きずっているのか?

「まっ乗り込んでみれば分かるか…。」

 コックピットブロックを開け、中に入る…シートも真空包装されていて それも剥がす。

 幸い…シートの上に真空包装されたキーがあった。

『またせた、そろそろ到着する。』

 

 DLを受け取りにクオリア()は 音速で中央区のゲートまで行き、今にも失禁しそうなガードマンの目の前にピンポイントで降りる。

 ガードマンはAKライフルを構えるが空間ハッキングで強化した手刀で叩き割り、強行突破…。

 ガードマンは 自分では敵わないと思ったのか追撃はされなかった。

 通報した所で、通報されないし、起訴しようにも証拠は一切ない。

 『緊急時のルール破りを認めてくれた』都市システムの方が、人より人を想っている。

 私は ハルミが送ってくれた合流ポイントに行く。


「待たせた…」

「全然待ってねーよ…つーか20kmはあるはずだぞ…。」

「なら30秒程でつくだろう…。

 厳密には ゲートの気密扉で時間が掛かって2分30秒掛ったが…。」

「あーデタラメなクオリアに常識を期待する方が間違いか…。

 じゃあ早速、機体のチェックを頼む。」

 ハルミ()は 呆れたように言う。

「ああ……10年程放置されていた見たいだが、その割に状態は良い…十分だろう」

 クオリアが機体に乗り込み、起動させ状態をチェックしていく。

 ロウの機体のベックは 文字が読めないロウに変わり、レナが乗り込んでステータスを確認している。

「大丈夫そう…本当に私が行かなくて 大丈夫なの?」

 レナが言う。

「今回は 出せる機体数が少ない…。

 レナの能力は集団戦で役に立つのであって、孤立が前提の戦場に出す訳には行かない。」

「分かっているわよ…。

 ならこっちは『ヘンリー・ジャクソン』を追いますか…。」

「ヘンリー・ジャクソン?」

 クオリアが聞く…あー知らないのか?

「今回の()()()ですよ…。

 ジム…位置は分かるかい?」

 天尊がジムに聞く。

「いいえ…でも検討は付いています…多分サーバールーム。

 あそこを(おさ)えれば都市のシステムを自由に出来ますから…。」

「なら私達は そっちに行きましょう。」

 天尊がジムの中にある収納ボックスから ナイフを防いだ後があるグロック()を取り出す。

「ジムこれで僕達を守れる?」

 天尊はジムに 銃を渡す。

「十分に可能です。」

 ベックが1機、スピーダーが2機が起き上がり、クオリアは コックピットブロックを開けたまま トヨカズを中に入れる。

「さぁ合流しよう。」

 DL部隊が外に向かって進む…途中のゲートも難なく通り抜け、外に向かった。


 外には エアトラS2の中に最低限の固定具だけを付けた『即時展開可能状態』でベックとパワードが乗っている。

「トヨカズ…残り時間が無いぞ…早く乗れ。」

 後部ハッチから出てきたのは小柄な少女だ。

「あ?…あんた誰?」

 ワンピース姿の小柄な少女に向かってトヨカズが言う。

「ナオだ!」

「ははは、似合ってるじゃねぇか」

 トヨカズ(オレ)が 腹を抱えて本気(マジ)で笑った。

「いいから乗れ!」

「はいよ…。」

 後部ハッチからオレが乗ったと同時に機体が浮き…上昇しながらハッチが閉じる。

 オレは パワードに乗り込み、機体チェックを始めた。

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