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09 (スパロボでは無く、リアルロボ)

 翌日10月21日(火)

「準備出来た…。」

 コックピットにナオ(オレ)とクオリアの2人が乗り込み、ハッチが閉じられる。

 オレが手早く機体を待機モードから、通常モードへ切り替え…装甲が量子光で 輝く…。

「うわっ…やっぱりキューブだけだとキツイな…。」

 ゆっくりとファントムを浮かせ、飛行して行くが 機体の処理能力に余裕が無い。

 量子レベルでのエネルギー交換が 情報となり、それが集まって原子となり、この世界のすべての物を構成して行く…空間ハッキングは この情報を書き換える物だ。

 そして、その情報を書き換えるエネルギーの事をQEと呼んでいる。

 今までは オレやクオリアのキューブで処理を一部肩代わりする事で、負担を軽減していたが 生身の人が乗る事を想定している以上…演習中にこの手は使えない。

 オレは 各動作や武器へのQE 配分を設定して行く…。

「やっぱり機動力は落ちるか…。」

 QEは、情報処理から生成される。

 そして、空間の書き換えが多くなれば なるほどQEを消費する。

 例えば、武器を使わない状態で現場に行く場合、武器にまわすQEが余るので、それを機動力にまわす事で、速度を上げる事が出来る…ここに来る時に音速で飛べたのは、配分を速度に全振りしていたからだ。

 ファントムは時間をかけて海に向かい海岸から10km離れる…ここがスタート位置だ。

『クリストファーよりナオさんへ…今、ナオ機を敵と認定しました。

 任意のタイミングで仕掛けて下さい。』

「了解…。

 クオリア…シールドや武装は?」

「ああ…準備は出来ている…いつでもいい…。」

「それじゃあ…行きますか…。」

 オレは ダイレクトリンクシステムを起動し、オレとファントムを接続し、ファントムを自身の義体のように動かし始める…QDLの既存モーションから来る機体の『ぎこちなさ』が無くなり、ファントムがスムーズに動かせるようになった。

「ダイレクトリンクシステム…OK…。

 ナオ機…出るよ」

 全面装甲にQEをまわし防御力を強化…後部は機体が自壊しない最低限のQEで動かし、残りは武装と機動にまわす…。

 ファントムが急加速し、オレとクオリアをシートに叩きつける。

 さすがに音速は出ない…Max(マックス)500km位が限界か?

 とは言え…現地に着けば速度上限は大幅に落とせるだろうし…武装にまわせるか?


 2分もかからず、10kmを進み…海面ギリギリで飛行しているナオ機に未来予測システムからの警告が走る…すぐさま回避…要塞にあるコイルガンから高レートで発せられる大量の弾を回避する…。

 無駄弾を避ける為か弾幕は張られていないが、精度が 正確で回避は難しい…。

 ナオ機の左手が量子光で光り、ライオットシールドを展開…。

 シールドを構えて 機体を守りつつ…シールドの陰からボックスライフルを腰で構え撃つ…。

 下では大量のドラムキングがこちらにボックスライフルを向け…フルオートで発射…。

 全面装甲にまわしていたQEを落とし…シールドにまわして強度を上げ、ドラムキングから放たれる大量の弾をシールドで受け止め、弾丸の運動エネルギーを相殺し無効化…変形していない弾丸がパラパラと地面に落ちて行く。

「よし…シールドは耐えている。」

 ナオ機が撃った弾はドラムキングに命中…撃破判定を受け、駐機姿勢に戻る…。

 弾丸の雨がナオ機を襲い…その度にシールドで防御するが、機動力が落ちる…。

 急降下、急上昇…右に左と要塞からのコイルガンを回避(かわ)しつつ…そのわずかな合間にドラムキングにターミナルバレットを浴びせる。

 相手を狙う時間は0.5秒以下…狙う時間が無い為、火器管制システムの狙いが大雑把(おおざっぱ)になり弾数で補う戦術に変えるが、弾の製造が追い付いていない。

 ナオ機は 左手でシールドを構えたまま、右手を後ろにまわして、ボックスライフルの上部に挿し込まれているマガジンを落とす…DLの実体化範囲外に行き、実体化が解除され、量子光となってマガジンが消える…。

 右腰のハードポイントが回転してマガジンの向きが代わり、ボックスライフルを挿し込んでリロード完了…。

 即座に構え、射撃を再開…。

「左腰が使えない…」

 左腰ハードポイントにあるマガジンは、左手がシールドを構えている為、使えない。

 黒鋼(クロガネ)に乗っている時のオレは これを避ける為にシールドを装備せずに機動で回避していたのだが…この弾の雨はまともな回避が出来ない…。

 そもそも、この状態の時点で普通なら撤退する。

 防御力は各段に上がっているから、押し切られる事は無いだろうが、ドラム側は ちゃんと狙う時間があるからだろう…要塞側はフルオート射撃をしていると言うのに、流石 機械…未来予測も込みでこちらに当ててくる。

 複数のドラムキングがこちらを狙う事で、位置を正確に割り出して それをフォースネットで要塞に伝え、あの正確な射撃を実現している…。

 なら、ドラムキングを地道に潰すしかないが…。

 要塞からのコイルガンが止む…多分リロード中だ…チャンスか?

 オレはドラムキングを潰す作戦を 即座に中断し、要塞に全速力で向かう…先に要塞叩いて戦力を敵の戦力を大幅に下げた方が効率が良い…。

 ん?何か不自然(おか)しい…この隙をドラムが許容(きょよう)するか?

 警告…レーザー!!

 発射 兆候を掴(つか)んだナオ機が警告とほぼ同時に回避…人のように脊髄(せきずい)反射は出来ないが キューブからのデータ通信速度は 脊髄(せきずい)反射の速度を超える。

 次…警告…キューブの中のオレが 流す信号が 瞬時にファントムに伝わり、紙一重で回避する…正直、生身のパイロットの反射速度なら 今頃コックピットを焼かれている。

 コイルガンのリロードで掛かるインターバルを12本の高出力レーザーで補う…。

 如何(いか)に未来予測システムがあろうが、亜光速の熱光線を回避するのは至難の業だ。

 ここまで速度が速いと 人型の被弾面積の大きさが回避のメリットを越え始める…。

 ナオ機は 要塞側から見て 点に見える様に機体を横に倒し、被弾面積を減らし 頭、肩、フライトユニットにQEを振り分け…盾も消し…武器は前方を構えたままで、残りは機動にまわす…。

 レーザーは 正確にナオ機の頭を捕らえ、ナオ機がバレルロールで回避…。

 12本のレーザーがナオ機を外側から囲むように照射…警告…回避不能…。

 回避中のオレは 即座に判断して、向きを変え、シールドを展開…。

 レーザーを回避していくが、回避先が どんどん狭まって行く…内側に回避したのは間違いだった…。

 まるでレーザーの網にかかった見たいだな…これも全部 計算ずくなのだろう…。

 警告…荷電粒子砲…くっ…。

 荷電粒子砲は威力があるが、砲をこちらに向ける都合上、砲の旋回速度以上で動いていれば当てられない…そう…レーザーで回避場所を固定されなければ…。

 ナオ機が文字通り足止めしようとした脚を狙ったレーザーを回避…右腕を上げ、脇からレーザーを通し回避…首を傾け回避…。

 ナオ機と荷電粒子砲の射線が一致…タイミング良く…と言うより計算通り エネルギーチャージが丁度(ちょうど)終わり照射…。

 強力な荷電粒子が放たれ…ナオ機は即座にシールドをコックピットを中心に構え、全力展開で防ぐ…。

「ぐぐぐ…」

 耐えた…ライオットシールドに守れていない右腕と右足を思い切ってQEカットして消失させ、シールドに全振り…コックピット守る…QE不足の自壊を防ぐため、左足も消失…耐え抜いた。

 機体のQE不足で推力低下…片手、両足を無くして更に推力低下…重力に逆らえず落ちる…。

 背中から地面に落ち、背中が落下の衝撃を無力化させQEを消費…。

 まだだ…コックピットブロック自体の運動エネルギーを操作…滑り込むように壁にへばりつき、レーザーと荷電粒子砲の射線から逃げる…。

 リカバリー…機体の再展開…いや…コックピット全力防御…すべてのQEをコックピットブロックに注ぐ…。

 遠隔起爆でファントムが隠れていた塹壕の壁が爆発し、機体が飛ばされる…。

 熱エネルギーを再優先…運動エネルギーは、ギリギリまで落とし無効化…コックピットブロックだけでのナオ機が 転がり、地雷原に突っ込む…射線が通り、荷電粒子砲1門…高出力レーザー砲12門がコックピットブロックを狙っている…地面には意図的に起爆しなかったのだろう…遠隔起爆式の地雷がある…。

「ナオ…負けだ…自壊した。」

 戦闘開始から今まで黙っていた後ろのシートに座るクオリアが言う。

 コックピットブロックの装甲が消失して行き、コックピット兼脱出用の2人乗りバギーが現れる。

 脱出モードにチェンジした。


「クソ…。」

 ダイレクトリンクシステムが強制解除されたナオが言う。

「演習終了、演習終了」

 クオリア(私)がクリストファーにコールする。

「あーやっぱ単機じゃ無理か…。」

 DLの最大の特徴は、安く乗りやすく大量に作れるDLによる高度な連携による攻撃だ。

 人型の性質上…瞬発力が高く 回避力なら、戦車に勝るものの攻撃力では断然戦車の方が高い。

 それに最大100kmの速度が出せても、高機動車には及ばない。

 その点ナオは 高度な連携が使えない中での、最良の選択を仕切ったと思う。

「でも結局、最後まで私のシールドを使わせなかった…『パイロットを生きて返す』コンセプトは十分にDLから継承されているだろう…。」

 そもそもDL単機で荷電粒子砲の直撃をコックピットが耐えれると言うだけでも凄い事だ。

 今後、量産型用にダウングレードする際にも、余剰QEが増える事でコックピットの安全性が大幅に増すはずだ。

「そうだな…でも、連携無しでも性能で押し切れるって判断したオレのミスだ。

 機体を過信してなければ、まだやりようはあったのに…。」

「そこは次の課題だな…。

 地道にデバックし続ければ、必ず良い機体になる。」

「ああそうだな…。

 スレイブロイドファクトリーに戻ろう。」

 私とナオを乗せたバギーは、作動しない地雷原の中を進み、スレイブロイドファクトリーに向かった。

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