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24 (戦いは数だよ)

「なあ…何でコイツらと組まないと行けねーのさ」

 ナオとラザロが機体の事で話している隣で、ヨハネがイオアンに言う。

「全くだ…。

 機体もスピーダーじゃなく、遅いベックにパワード…一緒に戦うには無理がある。」

 あえて こちらに聞こえる様に嫌味を言っている2人に向かってレナ(私)が2人の元に行く。

「なら…私達と模擬戦をして見ますか?

 流石にフェニックスには勝てませんが、スピーダーを使うなら良い勝負が出来ると思いますよ…。」

「ハッ生身が オレらに かなう訳ねーだろう…。」

「それは、オレ達に対する侮辱(ぶじょく)か何かか?」

 ヨハネとイオアンが言う。

 散々こちらを侮辱(ぶじょく)して置いて 逆はダメなのね…中途半端に頭を強化しているからだろうか?

 エレクトロンのように穏和な性格では無く、私達とは違い 優良人種(エディット)としてのプライドが高く、こちらを劣等だとし 見下してくる。

 まぁそれが彼らの都市の文化か…。

「なら実証して見ましょうか?

 DL戦では個々の性能より 数と戦略が重要です。

 あなた方2機とトヨカズ、カズナ、ロウ、私の4機でお相手しましょう…。」

「ヘッ…基本も知らないのか?

 スピーダー1に対してベックが3機は必要なんだぞ…。」

「ええ…知ってます…。

 流石(さすが)に ナオやジガ、クオリアを入れたら圧勝してしまいますし…。

 如何(どう)でしょう?」

「受けて立つ…。

 なあ…イオ兄…。」

「ああ…この程度で 私達が負けるとは思えない。」

「なら決まりね…皆準備して…。」

 私がトヨカズ、カズナ、ロウの3人に言う。

「カズナも?」

 準備に入る私の横にいるカズナが聞く。

「そう…カズナならトヨカズを守れるでしょう

 私とロウで組むから…。」

「わかった…トヨ兄ぃは まかせて」

「うん…任(まか)せた。」

 4人は ハンガー前の固定されたベンチに座り、無線ダイブした。


 場所は 砂漠の中の市街地…建物の中には人はおらず、戦闘であちこちが建物が破損している。

 ここは 旧時代にアリーナと呼ばれていた戦争をする為だけに作られた砂漠にある街だ。

 第二次世界大戦、ベトナム戦争と冷戦を行い、敵がいなくなったアメリカは『アメリカ同時多発テロ事件』を皮切(かわき)りに、対テロ戦争に移行…。

 ただ敵が少なくなり、軍事産業の規模は縮小するばかりで、間接的にアメリカの防衛能力が落ち、変わりに中国が頭角(とうかく)を現(あらわ)して来た。

 さて、中国と言う敵が出来た事でアメリカが、中国を攻撃するかと思いきや…アメリカは、中国、トニー王国が企画したクリーンな戦争を始めた。

 それは 紛争で人がいなくなった途上国の廃墟を利用した複数国でのDL戦争だ。

 DLなら 腹部を撃ち抜けば機能が停止し パイロットの損失は無く、安全な戦闘が出来る。

 そして機体が壊れれば、各パーツのメーカーの利益になり、戦争を競技化した事で、スポンサーが付き、途上国はダミー建造物の設置の仕事や、DL戦を生で見たい観光客によって街が潤(うるお)い、経済が回り始める。

 この好循環は、常に敵がいないと成り立たない軍事メーカーの強力な支えになり、中国はアメリカの攻撃を上手く阻止した。

 そして、各国が勝つためにDLの開発が激化し、トニー王国と友好国だけが使っていたDLが、瞬く間に世界中に流通し始めた…そうライブラリには残っている。

 ここはそう言う土地だ。

 街の南側にあるDL用のハンガーには ヨハネとイオアンのスピーダー部隊が…対する北側のハンガーには、レナ(私)、トヨカズ、カズナ、ロウのキョウカイ小隊がDLに乗り込み起動し始めた。

 機体は 私、カズナ、ロウがベック…トヨカズがパワードで、定石(じょうせき)なら後2機は必要なんだけど、私(・)以(・)外(・)の(・)メ(・)ン(・)バ(・)ー(・)は(・)性能が高い…十分に勝てるでしょう。

「レナからキョウカイ小隊へ…トヨカズは狙撃で、カズナがトヨカズの援護、私はロウの援護…。」

『『了解』』

 装備をハードポイントに装着し終わった所で、カウントが1分を切り、倉庫のシャッターがガタガタと上がり始める。

 5…4…3…2…1…0!!

『全機行くよ…。』

 私が短く言い、機体を加速させ、スピーダー部隊に向かって行った。


 市街地の大通り…ロウ機とカズナ機が前に出て、その後ろにレナ機…更に後方にトヨカズ機の順に進む。

 ロウ、カズナ機が単発撃ちで 前方のスピーダー2機に発砲…相手は1機ずつに分かれないで ちゃんと連係を取っている見たいだ。

 スピーダーが 回避…こちらが 銃を向けた時点で回避している…。

 多分 未来予測システムの警告の前に回避している…。

 今回は 機体の性能は普通のはずなので、未来予測システムの予測を予測しているのかもしれない。

 だが、ロウ機とカズナ機が、両端から撃って行き、面制圧で回避スペースを奪う…。

 いくら機動性が良かろうが、回避スペースが無ければ避けれない。

 両側には建物があり、回避不能…ならスピーダーは 内側に入るしかない…。

 スピーダー2機が道路の真ん中で肩がぶつかり、レナ機とロウ機が、カズナ機の後ろで足を止めて狙いをつけて撃つ…。

 レナ機の発砲…左右を塞(ふさ)いだ中、スピーダーは大きく後ろにジャンプし、銃弾が機体の股(また)をすり抜け、空中でボックスライフルをこちらに向けて 構え動作をしながら、構えた姿勢のまま背中から着地し、土煙を立てて発砲…ロウ機とカズナ機に撃ち返す…。

 ロウとカズナは撃ち返される事を事前に警戒し、横跳びでビルの陰に滑り込み回避…射線が開いた所で、遥(はる)か後方からトヨカズが倒れたまま銃を構えるスピーダーを狙撃…スピーダーが射撃を即座に中止し、回避に移る…が、倒れたままで避けられない。

 スピーダーは 横に転がる形で銃弾を回避しようとするが、銃弾が右腰のハードポイントと右脇腹の装甲を貫き、腰のハードポイントが破壊…接続されていたボックスライフルのマガジンが 破壊され、銃弾が巻き散らされる。

 続いて即座に2射目…今度は股間部に正確に2発命中…銃弾が貫通したが、腹部には届いていなく、まだ動く…だけど、これで股関節部分にダメージを与え、脚が外れやすくなる。

 次、3射目…もう1機のスピーダーがトヨカズ機のパワードを狙った事で未来予測システムが警告…トヨカズ機が、ビルを盾に回避…スピーダーから発砲し、ビルに当たる。

 トヨカズ機がビルの陰(かげ)に隠れ、スピーダーがボックスライフルを構え、トヨカズの方向にやってくる。

 スピーダーが向かう中、後ろに周りこんだカズナ機が発砲…スピーダーの背中のバックパックに被弾…軽微の損傷。

 スピーダーがとっさに腰を捻(ひね)り後ろに振り向きカズナ機にボックスライフルを向けるが、既にカズナ機はいなく、スピーダーの側面のビルの陰からレナ機(私)が発砲…右肩の装甲から後頭部に掛けて貫通…私は撃ち続け、左腰ハードポイント、左肩装甲、左腕部に次々とダメージを与えてく。

 スピーダーがレナ機に銃を向け撃つが、今度は隠れていたトヨカズ機がスピーダーの右足を撃ち抜き、脚が一瞬崩れて、照準がズレ、レナ機の横のビルに当たる。

 危なかった…。

 そして、一拍(いっぱく)置いてロウ機も別角度から足に良く狙わず雑に撃ち込み、敵を引き付け、その間に欲張って退避(たいひ)のタイミングを逃したレナ機(私)がビルを盾にスピーダーから急いで離れる…。

 最初にやられ倒れていたスピーダーが立ち上がろうとするが、カズナを感知し 銃を横に向けて、近づいてくるカズナ機に発砲…カズナ機が走ったまま回避し、銃の持っている右腕を足を踏みつけ、狙えなくした所で、スピーダーの腹部に狙いを定め、ボックスライフルの最大出力で撃ち込む…弱点の腹部を破壊され、スピーダーが崩れるように停止した。

『1き、げきは…。』

 カズナが報告…もう1機のスピーダーが狙らわれない ように すぐさま退避する。


 遅い遅い遅い…。

 イオアン(オレ)は反応出来ているのに 機体が間に合わない。

 敵に銃を向けようとすれば、別の敵機が側面や背後から撃ち込まれ、回避すれば 接近され追撃(ついげき)される。

 そして苦労して銃を敵に向けても、その時にはもう退避していていない。

 ベックの敵機がこちらに撃ち込み続け、反応が遅れ、こちらが撃てると思った時には、敵の仲間がこっちの足を狙って撃って来る…。

 基本に忠実な十字射撃だが、ここまでの連携を取れるのか…。

 鬱陶(うっとう)しい…脚部にイエローダメージ…まだ行けるか…ウグッ…パワードが腰ハードポイントに取り付けてあるマガジンを正確に狙らって撃ち込んでくる…マガジンが全損…。

 もう1機はスピーダーの腕のボックスライフルを狙ってくる…こちらは射撃精度が甘いが、何発も撃ち込み右手首に当てる。

 手首に当たった事で、イオアン機から ボックスライフルが手から離れ、地面を滑り転がる…慌てて左手を伸ばすが、今度は頭が無防備になり、狙撃され…メインカメラ、レーダー、通信が死んだ…。

 視界が真っ暗になり、コックピットブロックの風景に戻る。

 すぐさま コックピット装甲についているサブモニーターに切り替えるが、左腕を撃ち抜かれ武器が持てなくされた。

 モニター復帰…すぐさま状況を確認しようとするが…目の前には両腕のハードポイントにショベルを装備したベックがおり、殴るようにシャベルでイオアン機の腹部を貫(つらぬ)いた。

 コックピットが完璧にブラックアウト…もう脱出用の非常用電源しか使えない。

 はあ…完敗か…。

 数の差があるとは言え、ここまで一方的にやられるとは…オレ達の慢心だな…。

 オレはそう思い負けを認めた。


「クソー…何なんだよオイ

 機数が同数なら ぜってー勝ってたってのに」

 ダイブから戻った苛立ちながらヨハネが言う。

「素直に負けを認めろ…。

 そもそも、スピーダー1機に付きベック3機で対処するのがセオリーだ。

 おまえもそう言っただろう…。

 それなのに 戦力不足を補い、向こうはノーダメージ…。

 単体がいくら強くても、数による高度な連携があれば ここまでやれると彼女らは証明したんだ。」

 イオアン(オレ)がヨハネに言う。

「クソー」

「ヨハネ立て…行くぞ」

 オレは ヨハネを無理やり立させ、レナ達の元に行く。


 ダイブを終了し 現実世界に戻ったレナ(私)は 愚痴(グチ)を言っているヨハネを見つける。

 イオアンは ヨハネを無理やり立たせ、こっちに向かってきた…。

 負けた報復(ほうふく)?

 トヨカズが イオアンと私の間に入り、私の後ろには カズナと威嚇(いかく)しているロウがいる。

「発言を撤回(てっかい)する…あ(・)な(・)た(・)達(・)は優秀なパイロットだ。

 いくら単体で優秀だろうが、数と高度な連携の前には無力だと思い知った…。」

 私達は 予想外の言葉に驚く。

 ヨハネは相変わらず 結果に不満のようだが、結果で証明すれば、渋々(しぶしぶ)認める程度には、理屈が通じる相手見たいだ。

「こちらこそ…腹部をずっと狙って撃っていたのですが、全然当たらなくて驚きました。」

「あーあれ、欲張っていたんじゃ無くて、当たらなくて撃ってたのか…。」

 トヨカズが笑いながら言う。

「そ…火器(ファイアー)管制(コントロール)システム頼りで撃ってたけど、それを予測して致命傷を避けて動いてた。

 あれは、私には出来ないわね…。」

 私の操縦技術は並だ。

 トヨカズみたいな、移動しながら火器管制システムの情報に自分の経験から来る勘で修正して精密な狙撃をする能力も、ロウの様な格闘センスも無い。

 ただ指揮官適正が合ったのか…こう言った絡(から)め手は得意だ。

 やっぱり私は 殺しをする才能より、殺しをさせる才能の方があるらしい。

 あれから3年も経ってるってのに…全然抜けないな…。

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