↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/278

13 (パンデミック債)

「良し…予想より早く終わったな…お疲れ 皆~」

 ナオ(オレ)が言う。

 すべてのプログラムを入れ終わり、見えるバグは すべて潰した。

「ははは…久しぶりに良(い)い仕事をしました。」

 バタッ…。

 最後まで生き残っていたツヴァインが床に倒れて眠る。

 研究室には ぶっ倒れて死体のように寝ている作業員や研究員の徹夜組が転がっている。

 彼らの周辺に大量に散らばっているのは、彼らがカートン単位で買った栄養(ドーピング)剤…。

 オレは 夜明けから 8時間を1時間まで加速して休息を取っていたので問題無いし、クオリアはマルチタスクを使えば、寝ながらでも活動出来る。

「さて…後は動かして最終調整だけだが、今日中に もう一(ひと)仕事ある。」

 オレの方を向き、クオリアが言う。

「え?まだ何かあったか」

 オレは 考えてみるが思いつく予定は無かったはずだ。

「これから、VRで天尊と会談する。」

「何故(なぜ)ここで天尊?」

 天尊は ピースクラフト都市での事件を自分の都合の良いように利用し、今は 宇宙にいるのでは無かったか?

「エクスプロイトウイルスに天尊が関わっている。」

「は?天尊があのウイルスを作ったのか?」

「いや…天尊は また上手く立ち回っているだけだ。

 こちらと利害を一致させて、今回の騒動を終息させたい。

 ナオも来て欲しいのだが…大丈夫だろうか?」

「全く状況が掴(つか)めないんだが…付いて行く分には構わないよ…。」

「では、部屋に行ってダイブしよう…。」


 部屋でダイブし、クオリアのパブリックスペースにアクセスする…。

 どうやら ここで待ち合わせているようだ。

 背景が綺麗だが 物の無い殺風景な部屋にクオリアが 今購入したばかりのフカフカのソファーに テーブルを配置する。

「天尊のコーヒーの銘柄(めいがら)が分からないな…。」

 クオリアがARウィンドウを開き、自分の視界ログを映し出す…。

 エクスマキナ都市で食事をした時に 天尊は電気式の簡易ヒーターを使って粉の状態のコーヒーを入れてコーヒーを自分で作っていた。

 多分コーヒーには こだわりがあるのだろう…が銘柄(めいがら)のラベルが付いていない…。

「別に要らないと思うぞ…必要になったら自前で出すだろうし。」

「まぁ…そうだろうな…。」

 更にクオリアは ホワイトボードを出し、設置…。

 ホワイトボードの上に持ち上げられている ペラペラの壁紙ディスプレイを降ろし、ソファーから見える様に配置する。

「取り合えず これでいいか?」

「殺風景だけど良んじゃないか?」

 しばらくして、クオリアの目の前にウィンドウが現れ、クオリアがタッチする…多分入室許可だ。

 壁にドアが現れて開き、パイロットスーツにヘルメットを被った男が部屋に入る。

 顔はヘルメットの金色のバイザーで覆(おお)われていて見えない。

 ナオは咄嗟(とっさ)にリボルバーを抜き、構える。

「いやー済まない…この顔だと皆を畏縮(いしゅく)させてしまってね。

 顔が分からないようにヘルメットを被っているんです…。」

 バイザーを上げて オレ達に顔を見せた所でヘルメットを取り、素顔を見せる。

「アバターの顔とIDを確認した。

 通信から接続場所を逆探知、外部カメラから天尊の身体と護衛しているジムを確認…。

 以上の事から高確率で本人だ。

 ナオ…銃を降ろして良い…。

 と言うよりここで撃っても天尊は殺せない。」

「まあそうか…。」

 ここで撃ち殺しても、危険レベルの痛覚信号で強制ログアウトさせられるだけで、目眩(めまい)吐き気が1時間程続くが、それを無視すれば すぐに再接続も出来る。

 オレはリボルバーをホルスタ-に入れた。

「さて…『夕食のお誘い』だった はずですけど…料理は?」

 天尊がソファーに座り、気にも留(と)めず言う…。

「あいにく…天尊の好みが分からなかったのでな…こちらが持つので好きに頼んでいい。」

「とは言っても…好みの物は自前で持っているんですけどね…。」

 天尊はそう言いつつARウィンドウを開き、アイテムボックスから料理を出していく。

 ハンバーガー、ピザ、ポテト、コーラーと、成人病まった無しの食事が並ぶ…。

「うわあ…太陽系の王子様がジャンクフード?」

「まぁこう言う時 位はね…。

 ARだから どんなに食べても太らないですし…。」

 外交取引をやっていると体型にも気を使うだろうし…家の近くに専用のジャンクフード屋が出来るのも問題だろう…ジャンクフード好きの大統領とは大違いだ。

 オレとクオリアも それぞれ料理を出す…。

 オレは 天尊の料理からジャンクフード縛りで ピザを出す。

 ピザはトマトソースのせいで法的には 野菜扱いされているが ジャンクフードで良いだろう。

 ちなみに オレのLサイズピザの半分は クオリアに持ってかれた。


「さて…ただの食事会と言う訳では無いのでしょうね…。」

 一通りを食べ終わった天尊から話を切り出す。

「では 本題に入る…。

 天尊から アダム代表にパンデミック宣言の許可を出して欲しい。」

 クオリア(私)が天尊に言う。

「出すも何も、アダム代表が決める事でしょう…。

 こちらから 強要したらEHOの公平性が失われますよ。」

 確かにそうだ。

「だが、実際…出資金の一番は ダントツで天尊カンパニーだ。

 アダム代表は あなたのパンデミック債(さい)が消える事を恐れて、パンデミック宣言を出せないでいる。」

「あー済まないが…パンデミック債?」

 話に付いていけていないナオが私に聞く。

「パンデミック債は 購入すると購入金額+年率20%でプラスされ、これを払い戻す事で利益を得る長期投資です。

 ただ…払い戻しの期間が厳密に決まっていて、EHOの代表が パンデミックを認めた場合、購入したプール額が 途上国を中心とした疫病(えきびょう)の対応資金が賄(まかな)えない都市に回され、購入者は丸損する仕組みになります。」

 天尊がナオに向けて説明を始める。

「てことは、パンデミック債を持ってる奴は 払い戻しまで パンデミック宣言を出させたく無いって事か…。」

「そう…でも、1番EHOに出資している天尊カンパニーの天尊が パンデミック債に かなりの額を投資をしている…。

 つまり、パンデミック宣言で天尊の資産を吹き飛ばしたら、天尊の怒りを買ってEHOの出資を打ち切られ、EHOが運営出来なると考えているんだ。」

 今度は 私が補足説明をする。

「で、その本人は吹き飛ばすつもりがあるのか?」

 ナオが天尊に聞く。

「いいえ…まぁそれがルールですしね…。

 元々、EHOの出資も パンデミック債も法人税で最終利益の半分が持ってかれるから、最終利益を少なくする為の税金対策だった訳ですし…金は吹っ飛んでも、EHOの設備(モノ)は 残りますからね…。」

「一体どんだけ稼いでいるんだよ。」

「なにせ太陽系全体ですからね…。

 しかも各都市で税金が取られる訳ですから、大量に稼いでしまうと都市の税制に悪影響が出るんで、それを含めて調整を掛けないと行けなんですよ…。

 そこで こう言った企業に投資をする事で 払う税金を調節するという訳です…。」

 天尊がホワイトボードのモニタを使い説明する。

「ただし…これは あくまで私の場合…他の投資家は破産が避けられないでしょうし…そうなれば『太陽系大恐慌』が起きます。

 大恐慌が起きれば 企業の倒産と大量の失業者が生まれます。

 そうなれば、犯罪者、自殺者が増え、結果10月15日まで放置していた方が死者が少ないとジムは予測しています。」

「クオリア…。」

 ナオが私に確認を取って来る。

「確かに…死者は増える…だが、キミが救済すれば 如何(どう)だろう?」

「それは 本気ですか?」

 天尊が私の予想外の言葉に聞き返す。

「ああ…どうせ独裁者に渡すなら、有能な独裁者の方が良いだろう…。

 今後、生き残る事も考えると特に…。

 天尊は 将来の顧客を殺す事はしないと信用出来るから…。」

 天尊が考え込む…。

「ふむ…そうなると、後処理が面倒ですね。

 分かりました…アダム代表からは こちらから話を付けます…。

 それとメディクに エクスプロイトウイルスのアップデートするんでしたか…そちらも話は通して置きます。

 代表を味方に出来れば 反対派も落ち着くでしょう。」

「ああ…済まないが頼む。」

「最終的に我々が利益を入れれば それで良いのです。

 今回は 十分に利益が見込めます。

 それでは、私はこれで…。」

 天尊がドアを開け、帰って行った。


「なあ…天尊は何をやる気だ?」

 ナオ(オレ)は クオリアに聞く…。

 必死に話を追っていたが 特に最後ら辺はサッパリだ。

「やる事は簡単だ…。

 恐慌で潰れた企業を、社員が自殺する前にすべて天尊が安く買い叩いて、天尊カンパニーの系列の一部にするんだ…。」

「うわ…それって中国が日本にやった手じゃん…。」

「でも、疫病(えきびょう)の混乱と経済混乱を民主主義で解決する事は出来ない。

 内輪揉(うちわも)めを起こしている間にワームに滅ぼされるからだ。

 なら、一番信用が出来る独裁者に頼むのが最適だろう…。」

「まぁ世界恐慌時に生まれる独裁者なら 選べる方が良いか…。」

 面倒な独裁者が現れるよりは 顧客を殺さない天尊の方がまだマシって所か…。

「さて…あっちは天尊に任せるとして 後1日かけて 動作テストと最終修正だ。」

「ああ…世界が滅びちゃ…疫病(えきびょう)も経済も関係無いからな…。」

 そう言ってオレとクオリアはログアウトした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。