07 (年齢より必要性)
「おう、今回は間隔が短いな…ナオ、練習か?」
射撃場に来たナオ達に客が来なくてARでディスプレイゲームをしていたマトイが中断してカウンターから話しかける。
「いや…銃を作って貰いたくて…」
「は?…アンタいつも オヤジん所で作って貰ってるやろ…。
てか、銃何丁持つねん…ジャケット裏に大量に仕込んで撃ち終わったら使い捨てるつもりなんか?」
「あーいや…作って貰うのは この子?」
「この子?」
カウンターの下に隠れていてマトイから見えなくなっていた、ロウとカズナが後ろに下がる。
「ああ…この子か?」
「こっちが ロウ…。」
「よろしく」
「はい よろしゅー」
ロウとマトイが握手する。
「でこっちがカズナ」
「わたしのじゅうを、よろしくおねがいします。」
カズナがペコリと頭を下げる。
「へぇこの子か?」
「いつも通りトヨカズに設計して貰おうとしたんだけど…ガンスミスは 子供用の銃は作らないって言い出して…。」
「そりゃあ~あのオヤジぃは、そう言う潔癖症があるからなぁ…。
いやウチもか…レナの初キルが5歳って聞いてから、歳を理由に銃を使わせんのも危険だと思てな…。
えーとカズナ…今何歳や」
「3さい」
「それにしちゃあ大きいな…見た目5歳くらいか…。
よしゃ…ウチが面倒見たる…任せておきぃ…。」
マトイは グーと笑顔でカズナに向かい、サムズアップする。
「さて…まずはライセンスを見せてな…。」
「はい…どうぞ」
カズナが ARウィンドウを開いてライセンスを出し、マトイに見せる。
「さて…ライセンスは…。」
ハンドガンだけ…まぁ当たり前やな…。
が、サブマシンガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、AIサポート付き自動車、エアトラS2操縦資格も受けていて合格点を出している…。
ただ年齢の問題でライセンス発行が見送られている。
「流石と言うか…トヨカズと遊んでいた事もあって一通りは扱えるんやな…。」
「きになったことは なんでもやってるから…。」
カズナが言う。
「へえ…それもトヨカズが?」
「そう…たいけんしないと きょうみ もてないって…。
それで きょうみ ないことも、どっかで ひつようになることも あるみたい。
だから アレコレ たいけんしてるの」
極端に言えば『見て失敗して考えて覚えろ』だ。
トヨカズの人生の経験が すべてでは無いので、アレコレ見て聞いて触ってその情報から自分を見つけ出す…。
ウチもネットの使い方をオヤジに3歳の時に覚えさせられて、それ以降は銃の事は自分で学習しろと放置や。
親の価値観を子供に植え付けて、可能性を狭める やり方より幾分か良い。
とは言えトヨカズが体験させる内容が偏っているのは 問題なんやが…それは 担当している保育士がやればいいか…。
「さて…まずは 基本のグロックや…。
操作は分かるか?」
「だいじょうぶ…」
カズナが銃を受け取り、レンジに入ってマガジンを入れ、グロックを下に向けて、肩の力を使って思いっきりスライドを引いて薬室に初弾を装填…セーフティを外し、構える…。
「姿勢は ちゃんとしてるな…。
ほな…1マガジン撃ってみ。」
パンパン…カン。
「ッ…あれ、あたらない。」
パンパン…カン。
1マガジンを撃ちきり セーフティを掛け、マガジンを外し、スライドを思いっきり引っ張り 中に残弾が残っていないかを確認し、戻す。
空薬莢は、横にある虫取り網がキャッチし、網の下に落ちている。
「17発中…4発か…まあ当たらんやろ…。」
ウチが予想していた通りの結果になった見たいや。
「なんで、VRではちゃんと ぜんぶあたったのに…。」
カズナが不思議がる…。
「カズナの小さい肩が銃の反動に耐えられへんのや…肩ぁ痛無いかぁ?」
カズナが肩を回す。
「いたい…。」
「やろ…低反動の9mmでも肩に来るとなると、普通の銃ぶっ放したら、肩外れるでぇ…。」
ここに来た時のレナも10歳にしては 肩が丈夫そうに見えたが…昔から銃をぶっ放して肩を鍛えていたのだろうな…。
この前 来た時も目立ったダメージが無かった。
「ならむり?」
「いんや…ストックを付けて撃てば 大分当たるようになるやろう…。
多少肩が痛あなると思うけどなぁ」
「となるとストック付きのマシンピストルか?」
ナオが聞く。
「そうや…でも、ストック付きは 都市によってはサブマシンガン扱いになる事もある…で、これや…。」
マトイが倉庫から銃を出してくる…大型のハンドガンサイズの銃だ。
「あーPP-2000…マガジンストックね」
「そうや…これなら、マシンピストル扱いで持ち込める…。
パイロットスーツとストックが有れば 射撃精度もそれなりになるやろ…。」
「あたる?」
「弾数に頼るやり方になるけどな…。
肩のダメージも気になるけどぉ肩を庇って死なれても困るしぃなぁ…さて、とにかく撃ってみぃ…。
細かな調整は後でするからな…。」
喋りながらPP-2000の動作確認をしていたマトイがカズナにPP-2000を渡す。
「わかった。」
カズナがPP-2000を受け取り、レーンの個室に入ってセーフティを解除し、PP-2000を下に向けて コッキングレバーを勢い良く引き、チャンバー内の弾の確認…よし…ちゃんと扱えているなぁ。
50発マガジンを丁寧に差し込み、また下を向けて再度コッキングレバーを引く…。
あ~コッキングレバーのスプリングが重いからか~こりゃ軽いスプリングに交換かなぁ。
カズナがPP-2000の後ろのサブマガジンホルダーにロングマガジンを取り付け、マガジンをストックの代わりにして綺麗な姿勢で構える…。
扱いが慣れているな…VRで使った事があるんか?
ダットサイトで狙いを付け…発砲…命中…。
次々と的に当てて行く…ただフルオート射撃だと肩が多少痛いのか…ほぼ当たらない…ただバースト射撃の場合、的に8割は当たっている…部位を選ばずに当てるだけなら精度はレナ以上や。
「うん…ダメージとしては十分やな…。
反動はどうや?」
「だいじょうぶ…。」
「まぁ肩は大事にせぇよ…それと その銃を使うのは あくまで逃げる為や…。
銃があるからって過信して敵に突っ込むなや…。」
パンパン
「うん…あたる…。」
「撃ち終わったらこっち来てみぃ…カズナの手に合わせてグリップに交換に トリガー位置の変更…。
それとぉスプリングも軽くせんとな…それじゃあ、両手のデータぁ取らせてぇな…。
出来上がるのは 明後日位になるかなぁ…そこで最終調整や…。」
「うん」
「さて…もう一人のロウと言ったか…何にするぅ?」
マトイが獣人のロウに言う。
小さいのに筋肉がしっかりしていて、肩も丈夫…多分マグナム弾の反動にも耐えられるだろう。
「ロウ…銃要らない…。」
「要らないって…どう身を守るんや?」
ロウは 銃を持たず50mレンジに行く…。
個室に入り、ロウは腰にぶら下がっている繋がった二つ紐の先に宝石を布で包んで取り付けた物を取り出し、縦に回す。
「ボーラ!?」
ロウが高速で投げたボーラは50m先の人の的の首に命中…それを確認してすぐロウは的に急速接近し、思いっきり腹部分を殴った。
「うわ…内蔵破裂で即死…。」
人の的から検知した威力と場所から本当の人に当てた場合の結果が表示される。
まぁ狩猟民族からしたら、こう言った物の方が扱いやすいか…。
「ロウには銃じゃなくてメリケンやな…。」
「ははは…。」
ウチの言葉に ナオは苦笑いした。
「さてと…PP-2000の請求書は レナの所に送っとくで…また経費で落とすんやろ」
「ああ頼む…。」
「ほな…カズナ…次来るときは パイロットスーツを着て来なぁ…パイロットスーツの反動の吸収効果も見るから…。」
「わかった…ありがとう。」
カズナがそう言い、ナオ達は 1層の警察署に繋がる階段を上って行った。




