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25 (ノン テンプレ デート)

 翌日…砦祭3日目の最終日。

 2人の人生初のデートの日…。

 ナオ(オレ)は 寮の玄関前にある談話室に向かい、クオリアと集合する。

「待った」

「いや待ってない…って…セリフが逆じゃないか…。」

 しかも『待った?』の疑問形では無く『待った』だからな…。

「どれ位待った?」

「21分…今22分。」

 クオリアは 昨日とは別の可愛い服を着ている。

 もしかして、クール系で統一しているけど…可愛い系も結構 好きのか?

「そう…。

 じゃあ早速行こうか…。」

 寮(りょう)を出ると予め呼んでいたのか、タイミング良くバスタクがやって来て止まる。

「それじゃあ 中央区まで行こう。」

「あっ…うん。」

 普通は徒歩で過程を楽しむものじゃないのか?

 まぁクオリアに言っても仕様が無いか…。


 バスタクが中央区の服屋の前に到着する。

 クオリア(私)とナオが バスタクから降り、バスタクは 別の人を乗せる為 次の目的地に向けて進んで行った…。

「いらっしゃいませ」

 人の女性店員が出迎(でむか)える。

「ああ…どうも…。」

 ナオは 女性店員に照れくさく会釈する。

 店にはあちこちに女性の服…特に下着があり、ナオを気まずくさせている。

「ああ…オレは女性の服に詳しくないのでプロにお任せしたい…この子なのですが…。」

「むう」

 マニュアルには 男性側が照れつつも選んで貰えるはずなのだが…当てが外れた。

 私は 女性店員と一緒にテーブル席に座り、服の雑談を交えながら、店員が私が どう言う好みなのかを把握していく…ふむ…優秀な店員だ。

 

 あちゃあ やっちまった。

 普通ならナオ(オレ)が服を選んでやるはずなのに…気まずさからプロに任せてしまった。

 せめてクオリアの選んだ服に良い感想を言わなければ…。


「なるほど…なるほど…」

「出来るだろうか?」

 クオリア(私)が店員に聞く。

「生地は既にありますから、それほど難しくはありませんよ。」

「では、それで頼む」

「それでは更衣室に…採寸して作りますね…。」

 どうやら、服の素材は 私の予想より進んでいたらしい。

 結果的に ナオが直接選んだ物より良い服が手に入りそうだ。

 ナオはこれに気づいていて、あえて頼んだのか?


 ここでは3Dプリンターで服を作っているが、通常の糸の状態から高速で編んでいくタイプでは無く、生地から素材を切り取って縫い合わせるタイプの物だ。

 ドラムが職人顔負けの手さばきで生地を縫い合わせていく。

 ナオ(オレ)が ARウィンドウで進捗状況を見ていると、クオリアが戻って来た。

「2着頼んだ…30分程 掛かるらしい。」

「そうか…。」

 クオリアは レジに向かい手をかざし、支払いを済ませる。

「あっ…。」

 ここは男(オレ)が払う場面だったか?

 いや…まぁ…自分で金を支払うなら 好感は持てるが…。

「それで、いくら かかったんだ?」

「10,100トニー…特殊素材を使っているから高くついた。」

「特殊素材?」

「熱伝導率が高い炭素繊維と廃熱用の糸を組み合わせた物らしい。

 つまりヒートシンクの服だな…。」

 クオリアがオレに分かりやすいように言う。

「それでも安いな…。」

 普通なら1着10万とか するんじゃないか?

「これはDLにも使われている技術だからな。

 まさか服に転用されているとは思わなかった。」

 なるほど…この都市にDL由来の素材がやけに多いと思ってたが、DL製造の技術を失わない為か…。

 DLの素材で民間転用出来れば、DLが製造出来なくなる事は無いからな…。


「着替えてくる…。」

 クオリア(私)がナオに言い、簡易更衣室に向かう。

 その後ろから女性店員が 今出来たばかりの服を持ち、簡易更衣室に持って行く。

「ふむ…良いな。」

「人だと体温を吸い取って肌寒くなってしまうので不評なのですが…。

 お客様には合ってる見たいですね…。」

「ふむ…気に入った。」


 カーテンが開き、クオリアが出てくる…。

「ほう…」

 ナオ(オレ)がクオリアの姿を見て思わず言う。

 クオリアの姿は 黒を基調としたの生地のワンピースで、スカートにフリルが付いている。

 クール系のクオリアのイメージに身体から来る幼さによる可愛さが両立した作品だ。

「うまくマッチしている…流石プロ…。」

「気に入って貰えたようで何よりだ…この服でライブに出ようと思う。」

 あーライブ用の衣装で困ったのか…。

 演出で空間ハッキングも使うだろうから、それで廃熱(はいねつ)に こだわっていたのか…。


「もう一つの服、見せないで良いのですか?」

 女性店員が クオリア(私)の聴覚でないと聞き取れない位の小声で言う。

 もう一つの服は 私のイメージに合わない…可愛い系の勝負服だ。

 それこそ、私が作った魔法少女の衣装以上に…。

「まだ、私のイメージを壊されたくない。」

「でもその内バレますよ…あなた達は相棒(パートナー)なのですから…。」

「…了解した。」


「次はここか…。」

 服屋を去り、次に向かったのはゲーセンだった。

 ナオ(オレ)とクオリアは ゲーセンのスライドドアを開け、中に入る。

「うわすげー…」

 中には 21世紀前半のゲーム台が再現されていて、人は 少ないが来ている。

「良く需要があるな…。」

 ゲーセンは スペースや設置コストの問題で 家庭でプレイ出来ない高クオリティのゲームを設置して遊んでもらう事で儲けている…。

 だが VRやARが出た今、本来金がかかる機械もバーチャルなら安価に手に入る時代になってしまった。

 つまり ここにいるのは 相当な愛好家になる。

「需要は殆(ほとん)ど無い…ここも文化維持が目的だからな…。

 ただアントニーは ここも協力した。」

「都市長が?」

 ゲームの発掘に協力したのか?

「これだ…。」

 クオリアは ドラムが立っている受付の横にある両替機のセンサーに手を触れる…。

 支払いが終わり、じゃらじゃらとコインが出て来て 1枚取り、オレに見せる。

「コイン?」

 それは何の変哲もないも無い、コインだった。

 表には100の数字、裏にはトニー王国の国旗の歯数が12の歯車のマークが刻まれた普通の硬貨だ。

「100トニーコインじゃないのか?」

「なら、ナオは これが使われている所を見た事があるか?」

「いや…だって、今はマイクロマシン決済だし、リアルでの金なんて…あっ」

「気づいたか…。」

「もしかして、リアルマネーって流通して無いのか?」

「そう…必要無いのに わざわざ小さいが造幣局(ぞうへいきょく)を作ってる…しかも100トニーだけ」

「造幣局(ぞうへいきょく)が作った通貨って事は 他でも現金払いは出来るのか?」

「ドラムか人がいる店頭販売ならな…。

 ただ100トニーコインしか無いから、おつりが返せないんだが…。」

「意味ないじゃん…。」

「それがそうでも無いんだ…コインは製造コストだけで負債(ふさい)が出ないからな…。」

「?どう言う事?」

「まぁそれは 後にして ともかく一通り見て周ろう…。」

 オレとクオリアが 階段を上り2階に行く。

 室内は 天井が広くなっていて、装甲が堅そうな長方形のコックピットがあり、それが12台ある…。

 そして ハッチがスライドし、人が1人乗り込んだ。

「DLシミュレーター?」

「と言うより、まんまDLのコックピットだ。

 DLのシミュレーター機能を使ったゲームだ。」

 加速Gまでは演出出来ないだろうが、ビギナーに興味を持たせるには十分だろう。

「続いて…これが戦闘機シミュレーター…。」

 シミュレーターは 天井への接触ギリギリまである球体で後ろに穴が開いていて乗り込める。

 そして、ゲームが始まると球体が高速で回転を始めた。

「加速Gも感じられるシミュレーターか…。」

「ここは1プレイ100トニーでクリアすると200トニー貰える。」

「これで稼ぐ事も出来るのか…。」

「1ヵ月で最低500回勝てれば だけどな…。」

 クオリアに言われてオレは瞬時に計算する。

 えーと1回で100トニーの利益が出る訳だから…5万トニーを稼ぐためには500回…。

 負ける可能性もあるから、連勝前提でか…こりゃ無理だ。

「普通にバイトした方が稼ぎが良いか…。」

「そう…それに上の方がもっと稼げる。」

「稼げる?」


 3階…カジノルーム。

「カジノですか…。」

 そこは ドラムが店員をしているカジノだった。

 ルーレット…スロット…ポーカー…ブラックジャック…ページワンと一通りそろっている。

 人の数もそれなりに多い。

「1チップ100トニーで 上限が1万トニーまで だから、そこまで派手な事は出来ないが…。」

「VRでも良いのに…。」

「VRだと確率の操作、山札のカードのすり替えが容易になるだろう。

 だから信用の為、カジノだけは 今でもアナログなんだ。」

「へぇ」

 最低100トニーで、ルーレットの基本の2分の1の黒賭けの倍プッシュ戦法だと、100…200…400…800…1600…3200…6400…12800になる。

 1万2千800は、上限の1万トニーを超えるから出来ないので、7回連続で赤になる確率は0.78125%…黒の確率99.21875…。

 十分にプラスになるだろう…ただ勝っても100トニーずつしか上がらないので、3~4人で来て1周400トニーから初めて利益を出す方が安全でお得か…。

 十分に一人頭、1時間で1000トニーを超える事は出来る。

「この都市…職業にギャンブラーっているのか?」

 ナオ(オレ)は ふと聞いてみる。

「いや…学生が小遣いを稼ぐのに よく使わているが、そこまでする人はいない。

 何より作業ゲーになってしまうから面白くも無い…。」

「まぁそうか…。

 あれ?でも店の儲けは?」

 この方法が使われた場合…店側は倍プッシュの破綻で利益を得る訳だから、儲けは限り無く少く無い。

「そもそも、ここは一種の…セーフティネットだ。

 何かしらの理由で金が無くなった人に金を与える為の救済処置だ。

 だから、攻略法通りにやれば 確実に利益が出る仕組みになってる。」

「色々考えられているんだな…。」

「さて…一通り周ったが ナオはどれにする?」

「まぁ…1階のレトロゲーだろうね…。」


 バンバンバンバンバンバン、リロード…ガシャ…ガシャガシャガシャガシャガシャ…。

 2人で200トニーを投入し、リボルバーのガンゲーに挑戦…難易度は『人外』…多分、ヒト向けの為に実装されたモードだ。

 2人は本気になり ワンコインで全クリし、20分程楽しんだ。


 ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…。

 次はダンスゲー…クオリアは、支えに掴(つか)まらず正確に踏み続け、ナオ(オレ)は 支えがありだが、正確に踏んで行く…。

「すげーな」

 もう音楽より ステップ音の方が大きくなっていて、周りからレトロゲーマーが集まり始めた。

「のはあ…。」

 支えが無くバランスを崩したクオリアが倒れ、観客が避けて転がる。

 が、完璧な受け身を見せて周りから拍手が響いた。

 オレは ステップを踏み続けるのに必死で、横を見れない…。

 クオリアが途中退場するも、オレとクオリアは すべてExcellentだった。


「やっぱり自分の身体を動かす体感ゲームは、リアルの方が良いな…。」

 疲れた様子でベンチに座り、ARウィンドウを開き、アイテムボックスからジュースを召喚する。

「ナオは 戦闘機には乗った事はあるか?」

「いや…トニー王国はドローン戦闘機はあったが、人が乗れる戦闘機はなかったな…。」

 ドローン戦闘機の大きさは2m…ミサイルも一発しか積めないが、工業力による大量生産と自己学習機能で、エースパイロットが乗る戦闘機と同等のドローンを数百機、空母に乗せる事が出来た。

「初めてか…。

 なら乗ってみるか…。」

「とは言っても今は 全部無人機だろう…。」

 空での高G戦闘は人には厳し過ぎた。

 人の身では20Gには耐えられないし、操縦も機械の方が圧倒的に得意だ。

 なので 今では 機関砲だけを持たせたトリガーだけ遠隔操作でヒトが引く、無人?小型戦闘機が主流になっている。

「昔の機体もかなりの数ある…プロペラ機もな…。

 2人で今の戦闘機を撃墜して見たくないか?」

「出来るかな…。」

 心地良いの疲労の後に戦闘機のゲームに乗った。

 相手は ブラックバードⅢ…遠隔無人機…。

 対するこちらは スターバードⅢ有人遠隔仕様…。

 相手の機体は チャフやフレアは搭載されていなく、ミサイルも積んでいない。

 だが、こちらが放つミサイルの雨を ほぼ垂直で曲がる高G旋回で回避(かわ)し、ミサイルの後ろに回って機関砲で百発百中で迎撃…機体制御のAIが発達した事で、ミサイルが完全に無力化され、今は機関砲で1基だけで空いたスペースに弾薬を増やしたり燃料を増やしたりと言った改造を施(ほど)している。

 結果は2機とも撃墜…オレはともかくクオリアすら歯が立たなかった。

「くっそー負けた。」

 オレが言う。

「ふむ…空間ハッキングに頼り切っていたからな…。

 義体だとコレが限界か…。」

 やっぱりクオリアは搦め手(からめて)が無いとキツイか…。


 2時間程遊び…午後1:00時…2人はゲーセンを出た。

 浮いた話は一切無かったが、楽しかった。

 さて、次は何処(どこ)に行くか…。

 オレは そう思いつつ小走りで クオリアの後を追う。


「さて次は何処(どこ)に行く?」

 クオリア(私)がナオに言う。

「こういう時の定番は…映画だよな…。」

「映画か…。」

 私が少し考える。

 映画は、見る事で話題が作れ、更に受け答えで相手の性格を把握する事が出来、次のデートに繋げられる為、デートの定番になるほど効果的な戦術だ。

 重要なのは 相手に共感してもらう映画を選択する事…。

「この都市で映画なら あそこしか無いか…。」

 ナオは そう言い、私と共にニューアキバに向かった。


 スライドドアを開けてナオ(オレ)とクオリアは『20世紀シネマ館』に入る…。

 店内は 人や幽霊風の少し透けているネット接続の人がいて、ここに来て初めて賑(にぎ)わっている…。

「あれ?ナオさん…縮みました?」

 人混みの中で声がし、振り返ってみると この映画館の店長の『スプリング』がいた。

「ああそうか…義体を変えてから会って無かったか…。」

 こっちに戻って来て、週末の土曜シネマ会に参加したが あれはVRだったし会わなかったからな…。 

「えーとそちらは…クオリアさんでしたか?

 レースを見ましたよ…殆(ほとん)どカメラが追えませんでしたが…。」

「それは、済まない。」

「いえいえ…それで今日は個室で映画の鑑賞ですか?

 大型上映会のイベントに参加ですか?」

「あー祭りだから シアター会をやっているのか…。」

 大型シアタールームは、設備、片付け、清掃を含めて3万で貸切る事が出来る。

 なので、大型シアタールームを客が貸し切り、30人集めて割り勘するイベントが毎週起き、それは土日が多い。

「残りの人数 空いてます?」

「大丈夫ですよ…。

 むしろ、かなり映画がマイナーなので お客が少なかった所です。」

「これだけ、いて?」

 中にいる人は30人を超えているだろう…。

「そちらのお客の大半は、前の映画での感想で盛り上がっている人見たいですね…。

 今はお2人含めても15人です。

 料金は1000トニー…どうします?」

「分かりました…支払いは『スプリング』で?」

「ええ、僕が回収しています。」

 スプリングが キャッシャーの端末を出し、オレとクオリアが手をかざし、支払いを済ませる。

「お~い…店員さん…ポテトLを頼みたいんだけど…。」

「は~い…まいど。」

 お客に呼ばれ、スプリングは厨房(ちゅうぼう)に向かって言った。

「所で、何が上映されるんだ?」

 クオリアがオレを見て言う。

「さあ?せっかくだから、事前知識が無いのも良いだろう。」

 まぁこれでクオリアに会わなくても、オレの責任じゃ無く出来る。

 正直、クオリアが気に入る映画なんて分かるはず無いからな…。

 駄作だったら、2人で映画を叩いて、それを話題にしてしまえばいい。

 オレは 上への階段の横に取り付けてあるディスプレイを見る。

「さて…映画のタイトルは『ゴールドスミス・ノート』?

 金細工師(きんざいくし)のノート?」

 金細工師(きんざいくし)だから芸術の話なのだろうが、タイトルから内容が把握出来ない…。

「金細工師(きんざいくし)の約束手形と言う意味だな…銀行の始まりの話では無いだろうか?」

 オレの横でディスプレイを見るクオリアが言う。

「クオリアは この映画を見た事があるのか?」

「いや…私が知っているのは史実(しじつ)の方だ。

 金の成り立ちを調べると この物語に当たる。」

「へえ…経済系か?そりゃ楽しみだ。」

 まぁラブロマンスを見るより、この方がオレらに合っているか…。

 時間になり、所々空いた席にオレとクオリアが座り、映画が始まった。

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